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薔薇の女騎士ボロス


 薔薇騎士の正装は紅い。血の色と言われる。しかし、それを嫌い。他の正装でもいいと言うのが薔薇騎士のゆるさ、自由度の高さだった。だからこそ……薔薇騎士の服は奇抜なのもある。黒い騎士や傭兵のように統一感がない。


 例えば……ボロスのように刺々しい鎧でもいい。


「……おはよう……ボロス」


「おはよう。ウリエル。二日酔いでも出てきてくれるのは嬉しいよ」


「土曜日は必ず君の手伝いをしないと気が落ち着かないんだ」


「ごめん………でも安心してくれ今は平和だから大丈夫」


「有事があるかもしれない。昨日……なんでもないです」


 ボロスは冷や汗をかく。ガブリエルがいる会議にそう言う話が上がったのだろうと考えた。一番、帝国の中枢部と言われるほどに詳しい者がいる会議。絶対になにか……ある。探りを入れるかとボロスはウリエルを睨んだ。


「有事……ねぇ」


「……黙秘だ」


「まぁ私たちはいつだって戦争の準備をするのが仕事だ。予算増額を皇帝にあげてみよう。もし……上がったら正解だ」


 ボロスはそれで、話を切り。立ち上がる。


「どうした?」


「今日は仕事はない。珍しくな」(めっちゃ頑張って残業した)


「……では。一緒に朝食行きますか?」


「ああ。学園に行こう。あそこカフェは1日いれるからな」(やった!! ウリエルは絶対に誘ってくれると信じてた!!)


「………仕事熱心ですね。まぁ今年は不作かもしれません」


 ただのカフェに行くだけで仕事と勘違いされる。しかし、それでいい。それならウリエルは喜んでいく。


「兄弟がいないからだろう? 主席ラファエル、ガブリエル、ミカエル」(本当に家族大好きね……いいな~私もここまで護られたい)


「はい。一番兄弟が強い。だからこそ……強い兄を演じるやりがいがある。こんな素晴らしい弟の兄なんて光栄すぎて……おっと……落ち着きましょう」


「家族愛が深いな」(少しは分けてほしい)


「親友愛もあります。ウリエル・バルバロッサの親友は世界で一人しか居ませんから」


「……はは。照れるな」(嬉しいが!! 固すぎる!! その先がいい!! その先を……)


 ボロスは心で嘆き悩む。親友枠に。


「でっ……今年の学園は……何人指名予定ですか?」


「50人程度かな?」


「めぼしいのは?」


「ウリエルの方が……ここではなんだ。学園で話そう。ウリエルはどういったのが欲しいかをな」


「ええ」


 二人は母校の一般解放されたカフェへ向かう。一般解放されている理由は……学園内の若い子と面接するためだが。二人は好きでそこを使っている。ボロスの意見は通った結果であるのはミェースチにしか知らない。







 夜中、ボロスは寝室で寝巻きに着替えてワインを置いて待つ。するとすっと、窓が開き緑髪の美少女が現れた。情報屋ガブリエルである。


 色んな井戸端会議や冒険者が小銭稼ぎに聞いてくれと彼女に情報を売る。それをガブリエルは買って混ぜて情報を売るのだ。混ざった情報は有用であり。高いが精度がよい。


 情報知りたかったらガブリエルに聞け、ガブリエルのメモを奪えと諺になっているほどである。


 何故、そんなに情報があるかについてボロスは兄弟間の以上な程の仲の良さと情報共有力と皇帝や皇后との仲などや自由に動く結果。欲しい情報が手に入っているのではないかと考察していた。


 横の繋がりが重要なのを知っているからこそボロスは理解する。そして……薔薇騎士にガブリエルをモデルにした部隊もあり。成果をあげていた。特に破壊工作は優秀である。


「……こんばんわ。お姉さま」


「こんばんわ。ガブリエル。ワインいる?」


「二日酔いがやっと覚めたので……いりません」


「そう……ありがとう。ガブリエル」


「いえいえ……恋話のためですからね」


 ガブリエルは笑顔でワクワクした顔をボロスに向ける。ボロスは少し照れたように鼻を掻いた。ガブリエルから買った情報は全部ウリエルの事だった。


 学園の時からの付き合いで全てを知るには……ウリエルは深い。だからこそ……その妹であるガブリエルから情報を買ったのだ。ウリエルの情報は高値らしく、売るにも信頼されなければならないほどに出回らない情報。それを何年も買い占めた。専属契約だ。


「では……そろそろ教えて。ボロス姉さんのきっかけを」


 ボロスの秘めたる想い、そのきっかけを売り。買ったのだ。


「わかりました。好きだったわけではないのですけどね……」


「好きな人は皆、先ずは好きでないといいわけを言いますね。その気はなかった……大嫌いだった。だけど……あるきっかけが世界を変えてしまう」


「………そうなの?」


「はい。でっ……ワクワクするので早くお願いします」


「きっかけはそうね……最終の決闘試験の時だった」


「結構、最近ですね」


「ええ……親友と信じてたんです。いいえ、それを思っていたのは彼だけで……ライバルだったんですけどね」


「そこまでは聞きました。ウリエル兄さんの敵意は好敵手と言う好意に感じる鈍感な人ですから。兄の一番嫌われていると感じるのは無関心です」


「ええ、むき出しの敵意でも笑顔ですからね……」


「優しすぎる悪意ですけどね」


「ウリエルの八方美人な所だな。本人も美人だが」


 二人でクスクスと笑う。その優しすぎるせいでどれだけの令嬢を泣かせて来たのかと言うことと女装が似合う部分で笑うのだった。


「ふふふ………では……恋心に気付いたのは……」


 ボロスは懐かしそうに思い出を売る。






 その日、成績優秀者で戦う決闘訓練があった。大ケガもするほど過酷な訓練であり。ボロスは相手がウリエルになることを予見し。本当にそうなった。


 筆記成績はウリエルの方が良かった。剣や槍さえもボロスと同等であり。本来は……しっかり戦えば主席だろうと言うことだった。


 確定、1期生は優秀な子ばかりだったが……それでも皆は皇后の息子であるからウリエルが主席と言う風潮になっていた。初めての主席はやはり王族からと言うのが何処でも噂される。しかし、そんな中でウリエルだけはボロスや他の同期生の主席はあると言い続けていた。だから……皆が信じて努力をした。


 そんな中でもやはり……ウリエルは強かった。決闘ではウリエルかボロスかの2強。もちろん私も親友と言われているため全力で挑み。結果………


 圧勝した。驚く程に……ウリエルが防戦一方で敗北し。結果、最後の決闘での成績は最下位とされる。


 皆が調子が悪かったや、手加減したとも言われ。私自身も片手だけでしか戦わなかったウリエルに苛立ちを覚えた。


 その手加減したと言う事でもウリエルの評価は下がった。結果……私が主席となることが決定する。


 思いがけない。親友でありライバルの失敗に1期生は皆……疑問に思い。代表としてボロスが問い詰める事になった。もちろん全ての試験が終わり……個室にわざわざ呼んでから。


「個室に呼んで話があるってなに? ボロス」


「……ウリエルうぅぅ」


「おめでとう。主席卒業、親友として誇らしい……」


「ウリエル!! 貴様あああああああ!!」


 ドンッ!!


 女とは思えない。咆哮をあげて壁に叩きつける。きれいな睫毛に澄んだ瞳と笑みが怒りの火に油を注ぐ。


「何故、手加減した!! 主席を譲るためか!!」


「はっ?」


「片手を使わず。それも利き手ではない手を!! しかも手加減したとして不名誉で減点だ。なんでそんなに飄々としてる!! 答えろ!! 皆がお前を見てどれだけ期待し……どれだけ……こんなのは勝ちじゃない!!」


「お、おう……」


 ウリエルは利き手をぶら下げながら。マァマァと言う。落ち着いた姿とその利き手が全く動かしてないことに違和感を覚え……触ると。


「……ぐ……」


 少しウリエルの眉が動いた。


「ウリエル……もしかして……見せろ!!」


 ウリエルの利き手を見ると。大きく腫れているいる。軽く包帯が巻かれているが怪我しているのは一目瞭然だったのだ。


「これ……どうしたんだよ?」


「ラファエルが近くに試験があると言って居たので自信をつけるために戦った。もちろん……利き手を犠牲に逆手で殴り勝った結果が今の状態です。骨は折れてますがなんとか繋いでもらいました。腕のいい治癒士でも時間がなく完全とはいかなかったですね。まぁ……ラファエルには腕を犠牲にしないと勝てなかったと言って自信つけれたので満足です」


「……ど、どうしてこんな状態で試験に!? 言えば伸ばしたり。他に方法が……ハンデとか……なんでそんな状態で戦ったんだよ!! ウリエル!! それは侮辱だ。私に対する侮辱だ!!」


「………………戦場で腕が折れてるから待ってくれと敵に君は言うのですか?」


「!?」


 ウリエルが睨む。ボロスはその重い言葉に一歩下がってしまった。あの優しいウリエルの表情は厳しく。怒りに満ちている事が分かり……ボロスがビビってしまったのだ。普段怒らない人が怒るという事になれていない。


「騎士になろうとするものが。どうしてここで怪我を言い訳に戦わないのですか? 教えてください。ボロス」


「……」


「侮辱だと言われて頭にきました。僕は本気で戦場で戦っただけ……それにあなたは勝った。悔しさを蒸し返さないでください。片手でも勝つためにやったんですボロス!! 許せませんよ!! 侮辱と言う言葉は!!」


「……………」


 一言、親友へ怒りの言葉と握り締めた拳に……ボロスの動きが止まる。ボロスは殴られると感じ目を閉じた。頭の中がスッと熱が覚める。


「………」


 そして……


ペシンッ


「痛い……」


 オデコに小さな鋭い痛みが走る。慌ててひたいを押さえたボロス。デコピンされた事がわかったのはウリエルは笑みを見てからだった。結局……いつものウリエルだ。


「まぁ、君の言いたい事もわかるよ、ボロス。試験を知りながら弟と戦った僕の落ち度でもあるし。侮辱と罵った事はこれで許してあげるよ。次は卒業後……卒業後で君を越えるように頑張る。おめでとう……君が一番だ。誇ってくれ……戦場で体調管理を怠った僕への手向けだ」


 ウリエルはそのまま、肩を叩き部屋をでる。ボロスはゆっくりヘタリこみ。唇を噛んだ。


「……負けた……全敗……ウリエルに」


 ただただ……親友の器の大きさに驚くばかりと不思議と胸の高鳴る鼓動にボロスは戸惑うだけだった。






「……惚れるね……それ」


「ええ……それにね。ウリエルは騎士団長……もとい学園の創設者の皇后にね……相談してくれたんだよね。私を主席卒業させてあげて欲しいって……もう敵わないなと思ったよ……」


「あっ……それで農民出でも主席に」


「それもあるけど。ウリエルの考えるメリットも大きかった。王族ではないからこそ……夢を見せれた。そう……どんな出身でも騎士になれるとね。王族を越えるような。そこまで考えて譲りたかった訳らしいけど……私以外に不甲斐ないとか卒業後に怒られたわ。みーんな無茶言うなって笑ってたけど」


「……でっ皇后に忠誠と。ウリエルに焦がれるのね」


「………いえ。それがきっかけとか……ではないかもしれない。まぁその……最初は格好いい王子でちょっと高瀬の花で……話せば友達で……いつしか親友……きっかけはあれだったようでさ……ずっとずっと親友だからとか……隠してたのかもって……」


「ボロス姉さん長い。短く」


 ボロスが手を合わせてボソボソ言う。もちろんガブリエルは聞き逃さなかった。


「……最初に出会った時から一目惚れだったんじゃないかなって……」


「…………」


「…………」


「むきゅううううう」


「ああああああああああ。忘れなさい!! 今のは売りに出せない!! 聞き逃がして!!」


「ごめんね~でも……ウリエル兄さんを狙うライバル情報あげるから~ご馳走さまでした」


「くっ……いいでしょう。益を得るには損を切らないといけない場合もございますから……」


「ふふ。ボロス姉さん流石ね。では先ず男性から」


「だ、男性? 男性!?」


 ボロスが飛び上がる。そして……悩み。納得する。絵になると……ちょっといいなと思うのだ。


「ウルルン令嬢をラファエルお兄様がウリエルお兄様のような素晴らしい匂いがするといい……探し回っています」


「ラファエル……が………しかし。流石に……」


 それはないと思いたいとボロスは考える。しかし………


「ウリエルお兄様は弟に甘いです。骨の一本二本をあげるように」


 ボロスは全く否定出来なくなった。


「……と、途端に。ドキドキしてきた」


 だが……別の意味で目の保養になりそうだと思うボロス。青年のまぐわいは過激な物が好きな令嬢のたしなみでもある。


「そして……もう一人は……」


「皇后ですか?」


「…………」


「…………」


 いたたまれない空気が流れる。一番、誰でも思うことなのだ。ウリエルの母上への忠誠は海より深い。


「否定はしてますが。過去に父が失脚したら母上は僕が護るとか……いっそ父上を殺してとか物騒な事も口走った事もありましたね……」


「……ウリエル。皇后自慢スゴいですからね……」


「ボロス姉さんもでしょ?」


「……恩師ですから。あと……いつかお義母さまと呼ばれたいとか。希望が生まれる事を仰ってましたね……ウリエル落としたい理由でもあります。家族になりたい」


「……………」


 ガブリエルは母上の表の顔の裏を知らないからと思うが口には出さない。人には二つある。良いところしか見ない信者と悪いところも含めての信者がいる。前者は目の前にいる。とにかく悪いところは無視をするのだ。


「……………………」


 それを考えたときこの人が義姉さんになるのは嫌だなと思ってしまうのだから。母上の裏の顔の強烈さが際立つ。


「黙ってどうしたの?」


「ボロス姉さん。今日は帰ります。最後に母上は王国へ旅に出ます。ウリエルお兄様と一緒に暴走はやめてください」


「……約束しかねるわね。きっと……落ち着いて怒るわ。静かに皇后の無念を晴らす」


「…………」


 ガブリエルは深く溜め息を吐いたのだった。










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