4人の家族会議後編
うまい酒は意識がハッキリしているときに。あとは……ベロンベロンになるまでは何でもいいと全員は思っていた。最初は兄弟で酒の美味しさを知ったかぶって語るだけである。重要なのは……愚痴。
「ウリエル……君はいつもいつも抱えすぎた。ボロスに投げろ仕事を」
「ラファエル。ボロスは事務処理は苦手だ。一瞬の集中は強いが……細かい部分がやはり苦手なんだ。主席でもそのミスを減らして……出来たことだが……」
「ふふふ……そんなことよりも~ボロス姉さんとの仲は?」
「あっ俺も気になる。ウリエル兄ちゃん仲いいし……ね?」
酒が入ると全員が全員……口が軽くなった。皆は見られている環境故にここまでぶっちゃけた話が出来ないのだ。
「仲ですか? いつも通りですよ?」
「ウリエル。違う。女としての仲だ……ウリエルはモテる。しかし、誰にも靡かないのは……」
「あれは親友だ。ラファエル」
「女と男の親友ほど信用ならない。ウリエル」
「では、自分が証明しよう。ボロスは親友だと……」
「でも、ウリエルお兄様以外に仲のいい男性は居ませんよね? ボロス姉さまは」
「ガブリエル。彼女にはそれをしっかりと伝えてある。君もそろそろいい歳の令嬢だ。応援するから……頑張れとな。だが……怒るので最近は言ってない」
(ガブリエル。ボロスはやはり?)
(ボロスと会ったとき。苦悩してたわ。親友としてか……それともと。まぁ惚れる事件はまだ聞いていないけど)
(あれだよ、ウリエル兄ちゃんめっちゃ器も大きくかっこ良かったから惚れてるんだよ)
「何をコソコソと。彼女とは何もない」
「母さんにはあるのにね」
「ミカエル!?」
ウリエルが狼狽える。それを見て皆が思うのは一つ。
(((マザコン)))
「弟諸君……酷いことを思い浮かべているようだが。母上は好きだが。女としてではなく母上としてで……」
「ウリエル。一生懸命否定すると焦って聞こえる……グゲエエエエ」
「喉を押し潰そうか? ラファエル」
「ごめんって。いや……だってな。小さい時に父親死んだら僕が護るんだなんて言い出してたし……」
「容姿とかベタぼめしてたのウリエルお兄様よね?」
「……ウリエル父ちゃんとか……ちょっと……違うなぁ」
「だから。ないッと言っているし。昔の若き時だ」
「ウリエル。君も20前、母上ももうすぐ30近くと言えどもまだ20代であり。非常に若く成熟した立派な女性だ。好色の蒼き狼の異名をもつ私からすると。血の繋がっていない。未亡人なら……抱ける。だからこそ父上は焦ってるね。気を引こうと。それも父上は楽しんでいるけども……」
「ラファエルお兄様!?」
「ラファエル兄ちゃんぶっちゃけるね!?」
「ラファエル……未亡人は何人だ?」
「ウリエル。君は朝起きた回数を覚えているのかね?」
「わかった。ラファエル。母上に気を付ける旨を伝えておこう」
「……ウリエル。死亡宣告はやめてくれ」
「母上は死神かな?」
「その発言も失礼よ……お兄様」
「「「「ははは」」」」
誰も見ていないため。何でも言い笑う。
「にしても……父上の二つ名は面白いな。ミカエルもそう思わないか?」
「【生まれを違えた皇帝】ボロスだよね。皇帝でなければもっと戦場に出て騎士や英雄として名を残せたのにと言う惜しまれ方だから十分だと思う」
「ウリエルの思う。一番父上が居るべき役職は?」
「難しいですね。剣より筆、一歩引いた文官が一番でしょう。ただそつなく。戦争ではあの蛮勇は消え。凡将のように堅実に確実にするので……手堅い人でありますね。攻めるより守のほうが得意でしょう……そう考えると本当に帝国では……埋もれてます」
「ウリエルお兄様、母上はそれを全否定でしたけどね」
「ガブ姉さん。何か聞いてる?」
「聞いてますよ~母上曰く。皇帝を選んだのは天であり。王国ではなく帝国に生ませたのは天に愛された帝国のためでもあると……」
「「「さすママ」」」
「……敵わないと思ったわね」
皆が頷く。そして同時に……
「あれの復讐相手が可哀想」
同情する。
「………はぁ。にしても母上も父上もウリエル、ガブリエルも恋をして羨ましい」
「ラファエル。どうした?」
「いや。お相手がいるのが羨ましくてね」
「ラファエル。この前……令嬢が選び放題と言ってたではないですか?」
「いえいえ……そんなことはないです。今は偽名のウルルンという令嬢に会いたいのですけど。見つからないのです」
((目の前にいるけどね))
ガブリエルとミカエルは冷や汗をかく
「そうか……王国にいるのかもな」(……すまない)
ラファエルの話に皆が目線を逸らせる。慌ててガブリエルが話題を変える。
「そうそう!! ミカエル!! 今日は私が元気だから……ミカエル襲っちゃうぞ~」
「ガブ姉さん。そうやっていつも先に潰れる」
「ガブリエル。本当に弟が好きだね」
「愛してるから~ウリエルの母上に対する気持ちと一緒」
「アホなことを言わない。ミカエルも……甘やかし過ぎてはいけません」
「知ってる。だけど……ガブ姉さん。可愛いから仕方がないね」
「えっ……あっ………」
ガブリエルは攻めに弱い。ガブリエル以外の王子の共通認識だ。
「……ありがとう……んん………」
そして、単独最強。母上も倒せる元王子として育てられた子は……
「ミカエル……その……手、ふれてもいい?」
乙女だった。
「どうぞ。いつも……遠慮なしにくっつくのに」
「酒が入るともうだめなの」
「襲われるよりもいいよね……」
「ぐすん……ぐすん……」
ガブリエルが唐突に泣き出す。ウリエルとラファエルは驚いた。
「ど、どうしました? ガブリエル」
「ガブリエル?」
「……いつか。いつか。こんな皆と離れ離れになるんですね。私も……いつか……ミカエルと離れちゃうんですよね……ミカエルが……ミカエルが……お嫁にいっちゃうの……う……うう」
(((そこ嫁なのか?)))
3人が鼻をかく。まぁ気持ちはわからない事はないが。気まずい。
(ミカエル)
(ミカエル)
(へーい)
「ガブ姉さん。大丈夫……まーだ俺に婚約者はいない。それに……ガブ姉さん聞いて」
「うっ……うっ………なーに?」
「まだ、姉離れ出来そうにない」
「ミカエル!! お姉さんもまだ……まだ……無理なの」
ガブリエルが抱きつく。ミカエリはハンカチで涙を拭う。
(((泣き虫)))
一番、性格がかわったのはガブリエルだなと思う面々だった。
*
「……zzz」
「zzz」
「すぅ……すぅ……」
「ふっ。今日も最後まで残ってしまったよ」
ミカエルはワインを飲み干し、部屋を出たあとに使用人に頼みウリエルとラファエルを寝室に連れていく。使用人はなれた手つきで運び出す。
「ミカエル様。ガブリエル様はどうしましょうか?」
「今日も俺が背負って行きます。申し訳ないですね」
「わかりました。では、失礼します」
使用人がウリエルとラファエルを物のように運んでいく中でミカエルはガブリエルを背負う。昔に背負われてばっかりだったミカエルは今は毎週背負って姉を運んでいく。
(嫁入り前の大事な体です。使用人でも……あまり他の男性にベタベタさわらせる訳にはいきませんからね……)
ミカエルはそう思いながら、姉を寝室のベットに置くのだった。
「おやすみ。姉さん」
そう小さく囁き。ミカエルは部屋を出る。ガブリエルは……ゆっくり体をおこし、弟のたくましい背の名残を思いだしていた。
「……………いつもありがとう………おやすみ。ミカエル」
そして……聞こえない小さな声でガブリエルは幸せそうに囁くのだった。




