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ウルルン令嬢、やらかす(中身長兄)


 騎士団員たちの舞踏会。帝国は王国と違い……戦争国家と言うことで騎士など軍人が権力を持っている。しかし、戦争を思い描く文官も必要でありそれもまた騎士であり。魔法使いも魔法使いのイメージが汚れたローブと魔法衣を嫌い。騎士の軽い金属鎧を着て騎士である。


 騎士と言っても多様に富み。重要されるのは家柄か騎士団かである。


 上級下級で隔たりがまだある中で表向き仲良くしようと設けられたのが今日であった。あとは……騎士番隊長にもなると上の繋がりだけではなく横の繋がりも必要となり。文官や政治知識も必要となってくるのだった。結婚も多いに政治として意味を含みだす。


 好きな人との結婚など……夢でしかないのだ。だが……皆はそれがどうも好きらしい。ウリエルはつくづく人は面白いと思うのだ。禁じられれば禁じられるほどいいと思うのは性であろう。


「ボロスお嬢様。物を取るときはメイドに言われますとお上品に見えます」


「えっ……料理は勝手に取っちゃだめなの!?」


「いいえ。取ってもいいです。女騎士らしさではよく食べる人でいいです。令嬢の場合ね。一応知識として……」


「ウリエルは……なんで男で生まれたの?」


「………帰ったら辞表出します」


「やめて!? ごめんなさい……ごめん」


「はぁ……」


 ウリエルはボロスの付き人のように後ろで目線を張り巡らす。ボロスに対して挨拶する他の方角騎士団番隊長や団長などと軽く話はをしているのを後ろから黙って見ていた。声については魔法具で変えて、目の色もレンズで変えている。その状態でニコニコとした面を張り付けながら緊張していた。


 だからこそ……変な事が起きる。


「後ろの令嬢は……騎士ですか? 大きくしっかりと鍛えられておりますね」


「え、ええ……そうでしょう。私は一人では心細くお呼びしたのです。貴族でありながらしっかりと友として信用がおける人ですわ」


「そうですか……お名前を伺っても」


「………」(ウリエル何て言えない。ウリエル……)


(はぁ……名前ですね。そうですね)


「ウルルンです」


「ぶっ……」


「はははは……可愛らしい名前ですね」


(ボロス。笑ったな……)


(ごめん!! だって……可愛い名前……くくく)


 アイコンタクトでこそこそ会話をする。中のいい二人に他の騎士も気になり出す。他にも騎士の接待用の令嬢や使用人、婚約予定者等も居るなかで薔薇騎士の1番隊長と言う理由も相まって目立ってしまうのだ。


 ボロスは女騎士のように堂々とした令嬢風情に令嬢の方が近付き。何故かウリエルには騎士が声をかける。


 ボロスも流石は主席卒業生ですぐに舞踏会の空気に馴染み、持ち前の対応力で乗りきる。ウリエルの思った以上にしっかりしていた。


 だからこそ……ウリエルとボロスは離れてしまう。その隙をつかれたのだ。


 あろうことか……一番知っている者にそこを突かれた。


「……お話し中すいません。お初お目にかかります。魔法騎士ラファエルです。少し……気になってしまい……いえ。綺麗な方で話がしたいと声をついついかけてしまいました」


「あら……お褒めあずかり……ありがとうございます。しかしこんな大きい女性なんか……気味が悪くはございませんか?」


「おっと……どうやら。僕の事をご存知でない様子ですね。ラファエル・バルバロッサ。皇帝の次男であり。有名な一期生のあのウリエルの弟でございます。そんな自分は気味が悪くは思えません。綺麗なのです。自信を持ってください。なんでしたら……ずっと褒めてあげましょう」


「……ありがとうございます。お心だけで嬉しゅうございます」


「それに……鍛えられている女性は好ましいです。今日は初めての舞踏会でしょう。今まで見たことがありませんでした」


「そ、そうです。ボロスが泣きつくものですから」(う、ぐ……ぐ………)


 ウリエルは苦しんだ。そう、ラファエルはウリエルと同じく令嬢に声をかける練習をしてきている。そしていつも気になった令嬢に声をかけて婚約者探しをしていたのだ。ウリエルも色んな令嬢に声をかけて貰える立場での対応だが。ラファエルは自分からいく。自分から行き一夜も試す。


 だからこそ……青色の好色王子とも言われるが……彼はまだ運命に出会ってないと愚痴っていた。ウリエルも同じ悩みがある。


 そう……結局二人も心が踊る恋愛がしたいと願っているのだ心の底で。


「顔色がよくありませんが?」


「ごめんなさい。緊張で」


「………少し夜風に当たりましょう」


 ウリエルの手をすっと掴む。ラファエルにボロスが気付き笑顔でニヤニヤしだす。バレる恐怖とボロスに怒りがごちゃ混ぜになりながらそのままラファエルに連れ出される。


 手が早い、流石はラファエルと弟に感心してしまう。


 テラスにつくとそのままベンチがあり、他の令嬢も騎士と座って中にはキスをずっとしている仲もいた。空いているベンチに座り……ラファエルが隣に座る。


「お名前を聞いてませんでしたね」


「ウルルンです……」


「ウルルンさんですか……可愛い名前ですね。家は?」


「無いです」


「農民出でしたか。それで……鍛えられているし、貴族で噂にならない。ここまで綺麗なら一瞬でヒロイン。いいえ……多くの婚姻の話や……今日の主役にもなれたでしょう」


「そ、そこまで……ほめられても」


「褒めます。褒めて、照れている姿は誰よりも綺麗ですから」


「ふふ………」(ふああああああああああああああああああああああああああああああ!!)


 ウリエルは心で絶叫する。ラファエルの口説き文句を知ったウリエルはこれからラファエルの黒歴史として心に封印しなくてはと決める。確かに甘い甘い言い方で好意をしっかりと言うのは常套手段だが。


 それを実兄に実践するのはやっちゃいけないとウリエルは考える。もちろん顔を押さえて。


「……照れますね」


 ウリエルはなぜこうも恥ずかしいのかと考えた時。理由がわかった。家族だから……知っている仲だからこそ。恥ずかしいのだと。


(これは墓まで持っていきます。しかし、ラファエル……君がここまで完璧な王子なのは兄としも誇り高く。もう……兄さんとして教えることもない事に寂しさを覚えたよ)


 それでもウリエルは恥ずかしさに慣れ、弟を優しい目で成長したねと言う意味で笑みを溢した。泣き虫だったころを思い出しながら。


「ラファエルさん。ラファエルさんばかり褒めてくださるお礼に……私から。ラファエルさんを褒めてあげましょう」


 思い出した結果。ウリエルはお兄さんスイッチ(今は女装)が入る。


「えっ……あっ……はは。今日会った人を褒められますか?」


「ラファエルさんは褒めてました」


「外見ですよ。お世辞かもしれませんよ?」


 ラファエルが唐突な変化に狼狽える。ウリエルは騎士のように鋭い瞳でそれを見抜き隙を突く。戦争だと。


「外見は簡単ですからね……でも、本当に小さなことならいっぱいございます。例えば夜風に無理矢理連れていった優しさと度胸、気配りでしょうか。考えてみれば話を割り込み。無理矢理あの場から離した理由があるはずですね」


「………へぇ。ではどういった理由でしょうか……お聞きしましょう」


「先ず始めに……私が初めてだと考えたあなたは私を観察していました。そして、色んな方に声をかけられて困っているのを見ていたと思います。そこで困っていると判断をし……無理矢理話に割り込み。疲れているかを確認後。ここへ連れて来たのでしょう。身分を盾に……姫を護るようにしたのです。だれも王子に逆らいたくないでしょうという思いでですね……立派な騎士さまです」


「………そうですね」


「やった。あってましたね」(まだ弟を理解できている兄でよかった)


 ラファエルが鼻を掻く。照れ隠しだ……とウリエルはわかっていた。勝ち誇るウリエルにラファエルは言葉を囁く。


「どこか……兄さんに似ていますね」


 ピキン!!


 ウリエルに緊張が走った。


「お兄さんですか?」(危ない……バレる所だった)


「いえ、ズバリ君はこう考えていると言い当てるのが好きな人で……何か似ているなと思いました。弟の事をよく知っている事を嬉しそうに話をするのですが……それに近い恥ずかしさがあるんですよ。不思議ですね」


「……ふふ。そうなんですの」(くっ……言われると確かに嬉しくなっている……はぁ……)


「ウルルンさん、ちょっと何も言わずに話を聞き流してください。他言無用です。似ているあなただからの相談です。いえ……何ででしょうか話してみたくなりました」


「……ええ、どうぞ」


 ウリエルは悩んだ。弟が他言無用の物を語ろうとしていると。だが……バレないために黙る。


「昔の自分は兄が大嫌いだった。本当に大嫌いだった……理由は単純。母さんの独り占めとかだったんですが。それもワガママだったんです」


 ウリエルは疑問に思った。そんな記憶がないのだ。嫌われた記憶がない。


「母親は一緒に褒めるが兄だけにはとにかく厳しくて自分よりも稽古もつきっきりで……それをずっと見ていたんですが。それがずるいとも思いました。見てもらってたんですが……兄さんばかりと子供の時は思っていました」


「………それで?」


 ウリエルはそんなことを思っていたのかと染々する。


「兄に稽古がてら決闘を申し込んだんです。兄に勝てば母親は僕ばかり見てくれるとね。だけど……それに対して母親とお兄さんは喜んで喜んで……すごく、その勇気を褒めてくれたんです。あの時になって……ああ。僕は子供だなと悟りました。兄は決闘でも強かったですが……それから兄に稽古をつけてもらえるようになって……気付いたら兄を追いかけるようになりました」


「………嫌いだったのは?」


「嫌いとかお兄さんに言っても。お兄さんはいつも大好きだぞとしか返さないので……バカバカしくなりました。というか……好意が見えだして……いつもいつも母親からは怒られる時は一緒に、母親から庇われもしたし……同じ事を出来るかと言われれば……無理だと悟りましたね。そして……そんな兄が本当に好きになった。いつしか兄を独り占めするようにね」


「………………」


 ウリエルは静かに聞いていく。


「これが今までの自分と兄の話です。これから相談です。兄と剣でいまだに決闘し負け続けてます。最近はめっきり腕が上がらなくなりました。何度も挑戦しても勝てない事がわかっても挑みたい。しかし、同じ強さではと思うのです。付き合わせる兄に申し訳なくなる」


「………えっと……魔法はどうしてお使いになられないのですか?」(そういえば……いつから魔法を使わず勝とうとしたのだったのだろうか?)


「魔法を使わなくなったのは……魔法で一度勝った事があるからです」


「………」(あのときかな? 初めて魔法を使ったあの日。負けたから嬉しくて覚えてる)


「ズルしたんです」


「えっ?」


「魔法を使えることを隠して……戦ったんです」


「………」


「もちろん。勝った時に謝ろうとしました。魔法を使った事を……でも兄さん負けたのに嬉しそうに泣いて褒め称えるです。兄さんもその時は勝ち続けるのが心苦しかったと思っていたと……それでも……誰よりも成長と新しい才能に大いに喜んで……ズルしたことを謝れなかった。兄の喜ぶ所に水をさしたくなかった」


「………………」(それで……あのあと……喜んでなかったのか)


「だから……ケジメで今度は剣だけで勝ちたい。そう考えるんですが。全く刃がたたず……魔法を使えばいいとさえ言われて……苦しんでますね。ははは……まぁ。もう、絶対に敵わないでしょうね。ありがとうございます。少し気が楽になりました。相談じゃないですね……整理でしたね」


 ラファエルはそういい。笑みを溢す。そんな小さな事をとウリエルは思うが……それはウリエルだからであり。ラファエルからしたら……未だに納得出来ない事なのだろう。だが……如何せん。ラファエルには剣の才能はないことで諦めめいた心残りがあり続ける。それはウリエルにとっても心残りになる。


「もう、諦めようと思ってます。それだけ……ずっとつっかえてるのですが。どうしようもないですね」


「……諦めるな」


「はい?」


「諦めない心こそが大事です。兄は……いつだって決闘してくださってるんでしょ?」


「……ええ」


「兄は諦めてないのではないですか? まだ」


「…………兄さんならあり得る。兄は勝ち負けよりも他に素晴らしさを見いだす人だから」


「でしたら……諦めると言うより回数を減らせばいいと思います。ラファエルさん……ラファエルの兄さんはパタッとやめられるときっと寂しいですよ?」


「……そうですね。構えなくなる自分も寂しいです」


「……ふふ。にしても素晴らしい優しいお兄さんなのね。それに……尊敬出来るとか?」


 ウリエルはちょこっと教えて貰おうと質問をした。ラファエルは満面の笑みを向ける。


「尊敬? 大尊敬です。あの帝国薔薇学園1期生であり、薔薇騎士の2番隊長です。兄さんの背を追いかけても追いかけて届かず。しかしそれがやる気がでて……あっ……すいません。いつもいつも抑えいるのですけど……話しやすい令嬢さまでつい……凄いですね。兄さん相手にしてるようにベラベラと……喋ってしまいます」


「いいえいいえ……そんなに思ってるなんて幸せなお兄様です」


「ええ。みーんな……頼りにしてますから」


 ウリエルは静かに頷く。頼られてる嬉しさに身を震わせた。


「あっ……申し訳ない。体を冷やしすぎましたか?」


「あっ……いえ。そろそろ戻ります。ありがとうございます」


「いいえ。こちらこそ……誰にも言えず。心残りを聞いていただきありがとうございます。ウルルン姫」


「はい……」


 ウリエルは静かに墓まで持っていこうと決める。その後は何事もなく、ボロスに付きっきりとなって舞踊会は無事に終わったのだった。







 数日後。ラファエルから直接二人だけで話があると言われ、バレてしまったのかとビクビクしながら彼に会いに行き。話を聞くと……バレていないことにホッとする。


「ウリエル。最近……何か噂はない?」


「なんの噂ですか?」


「兄さんと僕の関係に関する噂」


「兄弟ですね。仲のいい。それがなにか?」


「……ふむ。兄さん。実は他言無用で、ある令嬢に内情を見せ。泳がせたのですが……噂もないことを見ると口が固く。十分信用なる人を見つけました」


「う、うん……それで」(言えるわけない)


 ウリエルは冷や汗をかいた。目の前にいるぞと。


「名をウルルン姫といい……一夜しかおらず。遠い姫との噂もあり。ウルルンと言うのも偽名かもしれないとガブリエルが言っておりました。金髪の令嬢です。もし……ウリエルが何処かで見たら。ラファエルが探しているとお伝えください」


「…………」


 ウリエルは背筋が冷え冷えになる。これは……と。


「ラファエル。その令嬢がどうしたんだい?」


「ウリエル。やっと……見つけたんです。どうやら自分は兄に似た人を好むようです。金髪であり聡明であり。強く気高く美しい令嬢でした」


「……………………ラファエル。やめた方がいい。そういうわからない娘は何か秘密がある。秘密があるのは大変だし、向こうも迷惑かもしれない」


「知ってます。ミステリアスだからこそ……まるで雲のようにわからないからこそ気になるのです。好きとかではないですが……非常に面白そうな令嬢でした」


「……夜遊びはホドホドに」


「彼女で最後かも知れませんよ」


 ウリエルはラファエルの少し真面目に本気になっている事に喜ぶとともにその相手が……実はと言う事実に苦しめられるのだった。


(何故……こうなった……)







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