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長兄ウリエル、女装を頼まれる。


「ツウウウ……流石はガブリエル……室内の突発的戦闘では誰よりも恐ろしい」


 ウリエルが休日で痛めた頭を押さえながら騎士の幹部室で回ってきた情報を整理している時だった。


コンコンコン


 扉を叩く音に反応しウリエルはその叩きかたで親友だと気が付いた。


「ああ、入れ」


「失礼する。ウリエル……ガブリエル様にやられたらしいな」


 中に入ってきたのは親友でもありライバルでもあり同期でもあり、上司でもある。1番隊長ボロス。艶やかな、あまいろの髪の乙女であり、初めての農民出の女騎士である。粒ぞろい一期生の首席にして、次期騎士団長でもある。二つ名持ちでもある。


「ああ、母上……いや騎士団長もな。痛めてるだろう」


「ふふふ……面白い。何があったか聞きたいわ」


「面白い物でもないよ。殺されてしまう。君が」


「ガブリエル様と一度は稽古をしたいものです」


「話をしておくよ。でっ……それだけでは無いのでしょう?」


 親友の深刻そうな顔にウリエルは悩みを聞く体勢に移る。ウリエルはいつもいつも頼られ……そんな空気を察する事が出来るのだ。


「ええ、親友にしか頼めない事なんだ」


 見た目は若く美しい彼女は男口調で拳を握りうな垂れる。


「深刻な事件ですか?」


「ああ、お前しか……お前しかいないんだ。だから……動きやすいように2番隊長や首席は譲らなかったんだ。お前は上に行くといつだって誰にだって頼られる。だから……あまり頼らないようと思ったのに……だが……うむ」


「いいでしょう。そこまで悩んでなら聞きましょう」


 椅子から立ち上がり彼女に近付く。ウリエルは深刻そうな顔をして、内心は嬉しく感じる。


 頼られる事は長兄として素晴らしい事なのだ。頼られすぎ、体を壊したこともあったが……それでも自己犠牲は素晴らしい騎士と考える。母上に頼られるほど素晴らしい騎士に。


「ありがとう……ウリエル」


「……」


「女装してくれ」


「………………?」


 ウリエルは目頭を押さえた。さすがに話が見えない。ウリエルの頭の回転でも全く見えない。


「……もう一度」


「女装してくれ」


「…………」


 ウリエルは悩みを答えを導き出す。


「明後日に控えた帝国騎士団の舞踏会。ボロスは参加するのでしたよね? 母上は次期騎士団として君に代理として参加を命じた。母上は他の国へ様子を見に行くと言ってましたので……それと何か? 僕は不参加ですが」


「流石はウリエル。そう……それ……女装して参加してくれ……」


「………………普通に参加ではダメですか?」


「の、農民で令嬢教育なんて受けて来てない……」


「他のメイドや、色んな方がいるでしょう?」


「令嬢教育する暇なんかない!!」


「酒を飲む暇はあると?」


「ごめん!! もっと先のことかと思ってたの!! だから……どうしよう!!」


「他を当たってください」


ガシッ!!


 一番隊長がしゃがんですがるように足を掴む。あまりの必死さにウリエルは簡単に折れる。


「はぁ……それと女装の意味は……」


「全部話す!! 女装は令嬢は友達を連れると聞いてる!! 一人は寂しいんだ!! あと、ウリエルのままだと令嬢が来てウリエル取られてしまって一人なってしまう!! それに……情けない事に令嬢の手本となれる人を知らないし……こんな情けない悩みを一番隊長が言うわけにも行かず。困ったの」


「ガブリエルに……」


「後で幾らか払わないといけない。情報は極力渡したくない」


「あ……ああ……しかしですね」


「あと。ガブリエル様とそういうところでは苦手だ。手合わせしたいが……喋るとどうも。女の格の違いで情けなくなって。男で育ったと言うのに……惨めになる」


「難しいですね。確かに情けないですし……こんな姿では示しがつきません。それに女騎士の令嬢は母上のような感じが一番となら……難しいですね。普通の令嬢ではダメですから」


「そう……そう……お願い……親友の一生の頼み」


「一生の頼み何回目ですか? まぁ……しょうがないですね。休みをいただきます。明後日会いましょう」


「ありがとう……申請は受理した。明後日頼む……」


「……任せてください」


 ウリエルは堂々と部屋を出るのだった。






 ウリエルは堂々と正座し、ミカエルに相談するのだった。


「ミカエル……以上だ。どうすればいい?」


「ウリエル兄ちゃんに……滅茶苦茶珍しく俺に頼って来たからビックリしたけど……確かにハードルが高いね」


「令嬢の素振りは母上を見ているから出来そうだが……如何せん。男で……どうすればいいやら……」


「……ガブリエル姉さん呼んでも?」


「あまり頼りたくないが……仕方がない」


「姉さん。だそうだ」


ヒョイ……スタッ


 天井からガブリエルが降りてくる。スカートを翻し着地をしドヤっとする。


「姉さんパンツ見えたよ」


「ひゃあああ!? な、なに色!!」


「……白?」


「ミカエル!! 見えてないじゃない!!」


「ガブリエル。はしたないから注意をこめてだろう」


「……ごめんなさい。でも話は聞かせて貰ったわ。ミカエル手伝って!!」


「わかった。衣装は俺のから見繕う」


「髪はカツラね。ロング?」


「ウリエル兄ちゃんなら……金髪ワイドロングヘアーでいいね。僕の好みで」


「いいね。ミカエル……センターエッジにして……もみあげも用意しようね」


 ミカエルとガブリエルがテキパキと用意をする。驚くウリエルは質問を投げる。


「手慣れていますが? ガブリエルはわかります。ミカエル……何故?」


「女装したことがある。ガブリエル姉さんと女装で潜入したり、抜け出したり。偽装や印象変えなど。色々学んだ。俺は……まぁ、必要とあらばと覚えたんだよ」


「………」


 この年になって初めてミカエルのスポンジのように何事も吸収する恐ろしさを感じるのだった。





「出来た」


「ガブリエル姉さん流石……」


「…………出来ましたか」


 なすがままにされて2時間。やっと解放される。


コロコロコロ


「…………はい!?」


 全身鏡をミカエルが持ってウリエルの前に出し、姿を確認させた。そこには身長の高く、鍛えられた体を持った女騎士のような金髪美女がいた。紅はナチョラルリップでアクセントとなり。白い肌のせいでナチョラルなのにしっかりと紅色が目立った。キリッとした綺麗な二重と睫毛にウリエルは戦慄する。


「僕は……女顔だったのか……ショックだ」


「ふふふ!! ウリエル兄さま~似合ってるけどそれはただの顔がいいだけです。ミカエルもそうです」


「兄さん綺麗だけど。胸は詰め物だから激しく動かない、ずれるよ。あと服は大きめにして体型隠しをしてるだけだからさわらせたら一瞬でバレる。特に腰とか筋肉とか。やっぱ男なんだけど……ボロス姉さんがいるから誤魔化せる」


「………そうか。わかった」


「では、ウリエル兄さま。当日また行います。ミカエルの部屋に来てください。今度は短くすみます」


「ありがとう。二人とも。持ちべきものは弟だな」


 ウリエルはニコッと感謝をのべる。


「ウリエル兄ちゃん。いつも世話になってるから……逆に嬉しいな」


「そうね……いつもいつも世話になってるから。ちょっとは恩が返せたかな?」


「……ああ」


 ウリエルは弟たちの感謝に胸が暖かくなり、やる気がでるのだった。







 1番隊長の幹部室。そこにボロスはあわだたしく赤いドレスに身を包んで待っていた。すると、戸の叩く音と一緒に……白いドレスで女装したウリエルが入ってくる。


「ん? 誰だ? 令嬢? もしや……ウリエルのファンかな? それは隣の部屋で今日はおやすみ………」


「ボロス……僕ですよ」


「ファ!?」


 ウリエルはニコッとして、令嬢になりきってお上品に笑う。笑うと言ってもただ首を傾げ愛嬌も振り撒く。


「………お前」


「少し。気持ち悪いでしょうが我慢してください」


「いいえ……少し」


 ボロスがウリエルの白いメイドグローブに包まれた大きい手を掴む。ボロスは跪き、それに騎士のキスをする。


「……ウリエル……女だったのか? 綺麗だ」


「……ボロス。男です。男ですからね? アホな事をしてはいけません」


「………すまない。女だったらよかった」


「酷い事を……やめましょうか?」


「ごめん!! あと……情けなくなる」


「何がですか?」


「男より………可愛くない事にショックが」


「………ボロス。大丈夫……」


 ウリエルはボロスを抱き寄せて、腰に手を回す。


「近くで見れば。今の君はすごく可愛らしい。自信を持って挑もう……今日の初めてを」


「……ウリエル。その姿でかっこつけないで」


「ん? どうしてだい?」


「目覚めそう……」


 ウリエルは慌てて離れた。頭を掻きながらもなるほど、こうすれば令嬢は喜ぶ事をウリエルはひとつ学んだのだった。





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