表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

壁を繋げてみれば

作者: Biz

 ある研究所にて、助手と思わしき男が博士を呼び止めた。


「博士。このSNSにてブロック機能があることはご存じですよね」

「私はもうすぐ七十歳になるが、気持ちはまだまだ若いつもりだよ。気に入らない者、迷惑な者を遮断するものだろう」


 博士は得意げに、立派にたくわえた白髭を捻り尖らせる。


「その通りです。昨日ふと、このブロック機能を“壁”と捉えてみたらどうかと思ったんです」

「壁、かね?」

「はい。ブロック機能とは、いわゆる外敵を防ぐための塁壁、目隠しのための塀、滑落を防ぐための擁壁と考えてみたのです」


 なるほど、頷いたものの、博士は助手の意図が掴めなかった。

 いったいそれが何だと言うのか。

 そう言いたげな目を見た助手は、両手を広げてみせた。


「人が作り出す壁。これを繋げてみれば、いったいどのような世界が作られるのでしょう」

「なに……?」

「インターネットは無限の大海原に例えられますが、その海にどのような世界を作ったのか、調べられるかと思ったのです」


 面白い、と博士は感嘆し、白髭を撫でた。


「是非やってみたまえ、ここの設備をすべて使っても構わない」

「ありがとうございます! これから取りかかってみます!」


 この研究所は人知れない山奥にあるが、設備だけは最新型だった。

 舌が噛みそうな名前がついているものの、研究員たちは一貫して“調査機”と呼ぶ。

 この調査機は、ひとたび入力すれば、衛生や地下ケーブル、果ては各家庭のパソコンなど――ありとあらゆる手段を通じて、世界各国からの情報をもたらすものだ。

 ここはある国の諜報局なのである。表向きは、民間の調査会社を名乗っている。


 助手はこの日から、調査機の前で情報を集め始めた。

 仲間たちも協力してくれている。特に大きな事件も出来事がないため、全員暇なのだった。


 約三ヶ月の時を経て、ようやく一つのモデルが完成した。

 ……のだが、助手は難しい顔でそれを眺めている。


「やあ。完成したと聞いたが」


 そこに話を聞いた博士が、白髭を揺らしながら歩いてきた。

 助手は「それなのですが……」と歯切れの悪い言葉と紡ぐのみ。博士は片眉をあげた。


「思うような結果が出なかったのかね?」


 ええ、と助手がモデルに目を向けた。

 そこには、どこかの街を模したようなジオラマがあった。


「迷惑な存在を隔離・遮断し、己にとって都合のいい空間を作る――この現実とまるっきり同じ世界が出来ていました」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ