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旧:向上蓮の珍道中〜行け!踏み台のその先へ!〜  作者: 蟹子遊篤
第一章 レン・アルフレッド
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第7話 そろそろ現実見ようぜ!by賢者の弟子

 エイラスの近くにある山。雪が降り積もり辺りが完全に銀色の世界になっている。こんな場所でのんびりと周りを見渡している鹿と、それを少し遠くにある木の影から狙う男がいた。

 男の顔はフードを被っているので見えていないが狙いを外さない狩人の目をしている。男は弓を携え狙いを付ける。そして………

 ヒュン!

 青年が鹿に向けて矢を放つ。その迷いの無い1発は全く落ちる気配無く鹿に向かう。

 ドスッ!

 矢は正確に鹿の頭を射抜いた。鹿は倒れ少し痙攣をした後、絶命した。


「ふぅ…やっぱり弓は良いな安心して攻撃できるし。しっかしこの大きさの鹿だと、ギルドで捌いてもらう時の値段が心配だな…」


 フードを取った男はまだ青年だった。さらに、言われなければ男性と気づかないほどの絶世の美人である。

 青年は黒く長い髪を1つに束ね、一般庶民が着るような皮を鞣した服と白いフード付きマント、そして黒いズボンを着ていた。


「ていうかこの服で山に登るのはやっぱり不味かったな、めっちゃ寒い…さっさと下山するか」


 青年は狩った鹿を引きずりながらエイラスの冒険者ギルドへと戻っていく。

 この時、青年レン・アルフレッドは14歳冒険者ギルドで受けた依頼を遂行中。どうやら多少現実を知り大人になっている様子であった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 エイラスにある唯一の冒険者ギルド、ギルドハウスの外からでもその喧騒が聞こえるほどここは賑わっている。

 そこに鹿を抱えた青年が入ってきた、その馬鹿みたいな青年は真っ直ぐギルドのカウンターへと向かって行った。


「レンさん、今回も薬草の入手お疲れ様でした。どうやら余計な物も持ってきたご様子ですね」


 ギルドカウンターでレンを迎えたのは明らかに青筋を立てた、美人がいた。レンはその美人の神経を更に逆撫でした。


「はい鹿を狩ってきましたすみません」


「何時も言ってますよねぇ、動物を狩るのは良いですけど、ちゃんと捌きましょうって!」


「肉を切る感触マジ無理です……」


「えぇ知ってますとも!だからレンジャーの私を頼っている事も!曲がりなりにも冒険者なんだからそれくらい慣れとけよ!」


「はい…すみません…」


「昔のトラウマだかなんだか知りませんが、そんなに軟弱なら冒険者やるなよなぁ」


 と完全にヤのつく人みたいにレンにキレている受付嬢。するとカウンターの奥から柔和な笑みとこれまた青筋という、受付嬢よりもミスマッチな組み合わせの美人が現れた。


「フレイ〜ちょっとこっちで業務について話しましょう〜レンさんには悪いけど、少し借りますねこの子」


「お構いなく、どうぞどうぞ」


「テメェ!美人助ける位の男見せろやぁ!ゴラァ!」


「冒険者に舐めた口聞くなって言っただろ〜さっさと行くぞこら」


 彼女は受付嬢の襟を掴み、引きずりながら奥に消えていった。

 その後、受付嬢の声が聞こえなくなったのは言うまでも無い。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 またか…どうもレン・アルフレッドです。俺が暴言吐かれるのは仕方の無い事だから全然良いんだけどなぁ…実際冒険者を始めてから採取とかしかやってないし。


「おかしいわねぇ…貴女がうちの職員になってからギルドの評判が下がっていってるのだけれど…………」


 うわぁ…ギルドマスターの静かな罵倒が聞こえてくる、俺は絶対にされたく無いな…うん。


「よぉボウズ!今日も災難だな!」


 カウンター近くのテーブルから、野太い男と言うよりかは漢の声が聞こえてきた。俺をボウズと呼び、この豪快な声の主はあの人しかいない。俺は振り返り返事をした。


「どうもジャンさん、薬草採取の出発前ですから二日ぶりの再会ですね」


「おうよ!帰るのが遅いんで死んだかと思ってたぜ!」


「あっはっはっ流石に薬草の依頼如きで死にたくはないですね」


 まぁ机に頭ぶつけて死ぬよかマシだけどな。このスキンヘッドで全身に傷を持つおっさんはジャン、始めて見た時はギルドで絡みたくない人ナンバーワンだったんだけどな。今だとギルドで1番仲がいい人になっている。


「フレイの嬢ちゃんのキレ方からして、お前さんまた動物を捌いて下さいとか依頼したんだろう」


「よく分かりましたね…」


「そりゃ分かるぜ、何せ喧嘩の原因の8割はそれだからな!」


 ジャンさんはいつものようにガッハッハと豪快に笑い俺に言うが、8割っ流石に多くないか?


「全然納得してねぇって面だなぁ、まぁ依頼でいねぇ時もあったが。お前らの喧嘩を1番見てんのは俺だぞ、間違えるわけねぇじゃねぇか」


 そうかなぁ…と俺が思っていると、奥から聞こえてくるギルドマスターの静かな罵倒が聞こえなくなった。


「ん?どうやらギルドマスターが説教から帰ってきたようだな。ボウズ魔物討伐の時はいつでも呼べよ!この銀の冒険者の俺様が手伝ってやるからよ!」


 俺の背中をバンバンと叩きガッハッハと高笑いをし、ジャンさんは帰っていった。相変わらず見た目怖いけど面倒見のいい人だよなぁ。どうやら言っていた通り説教は終わったらしい、戻って来た。


「すみません〜うちの妹がまたご迷惑を〜」


「誠に申し訳ございませんでした……」


 うわぁ…今回もだいぶ絞られたなあれは、意気消沈どころか明日自殺する人みたいな雰囲気になってるぞ。


「いつものように動物を捌かせてもらいます〜鹿なので前回よりも料金が発生しますが大丈夫ですか〜?」


「はい、問題ありません」


 問題があるのはフレイさんだと思うのは俺だけでは無いはず…だけど、多分明日には説教された事忘れて元通りになってるから凄いよなあの人。


「料金は2000G(ゴルド)になります」


 やはり大物だけあって少し高いな、いつもはイノシシとかタヌキだからこの半分位で請け負ってくれるが仕方ない。やったことは無いが値引き交渉ってやつをしてみるか。


「2000Gはいいんですけど、鹿の肉を全部貰っても食べ切れないので此処で売ってお金になりませんかね?」


「う〜んそうですねぇ、なら代金は1500Gで良いですよ〜これ以上の譲歩はありませんのでこれで良いですか〜」


「はいそれでお願いします」


 よし!結構お金が浮いたぞ、今の季節は冬だからな俺の収入源である薬草採取が大変なんだよ…

 さて、今日の用事は終わったから帰ることにしようか。


「今日はありがとうございました、また採取依頼の斡旋をお願いします」


「わかりました〜またお越し下さいね〜」


「またお越し下さい…」


 そしてギルドを後にした俺だが町の様子が少しおかしいことに気づいた。何かみんながそわそわしていると言うか、何かを期待して待っていると言うか。

 すると1人の男性が広場の中央で喋り始めた。


「明日は選定の儀だぞ!それも勇者様であるテリー君の選定の儀だ!みんな宴の準備をしておけよ!」


 あれは確か村長の息子さんだな、成る程な確かにテリーの選定の儀ならこの異変も納得だ。あいつに期待をしない奴はこの町にいないからなぁ…勿論俺も。


「勇者かぁ…懐かしいようなそうでも無いような、冒険者を始めてから半年が経つが。とても俺が勇者になれるとは思えないぞ、もしかしたら本当に騙されたのかもな…何てそんな訳無いか。だって相手は神様だもんな…うん」


 また変な事考えちまってるな、この新しい人生でハーレムとチートを掴むと言う夢を忘れたか!俺はこれからなんだこれから!よし元気が出た!明日から頑張ろう。


 勇者に覚醒するまでのんびり狩りをしようというクソ程緩い考えは、明日の選定の儀によって一瞬にして潰える。


次回に続きます

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