第6話 10年経ってもバカは変わらず
月日が経つのは割と早かった、俺がこの世界エンプティに来てからもう12年が経った。
そんな俺は12歳となる少し前、魔物に襲われた美少女を颯爽と助け勇者として覚醒していた…………筈でした。いや別に美少女を助けたり強敵と戦わなくても勇者として覚醒していれば良いんだけど!?まったく変わっていない。
「おーいレン!遊びに行こうよ!」
家の外から聞こえてくるこの明るく元気な声…はぁ…あいつ、いやあいつらかな?どちらにしても不愉快極まりないし憂鬱だ。
「テリー君が呼んでるわよ遊びに行きなさい、どうせ家にいても何もしないんだから」
「はいはい分かりました、行ってまいりますよお母様」
くそっ母さんに言われちゃ居留守も出来ん。仕方ない、奴らと遊びに行ってやるか。
その奴らとは皆さんご存知の勇者テリー、そして数年前から現れ始めたハーレムメンバーがいつも一緒にいやがる。
不愉快です、大変不愉快デス。不愉快ダガーイタシカタナシー。
「すまんな遅くなって…よおテリー、やっぱりいつものメンバーなのね」
やっぱりハーレムメンバーがいた…テリーの右手に絡んでいる栗色のツインテ美少女の名はクリス・クロード、そしてクリスを睨みつけながらテリーの左手に絡んでいる赤髪のポニテ美少女の名はフラム・グローリア。
こいつらはいつもテリーの所有権で争ってこうしている。
「ええと…ごめんな。2人とも悪い子じゃないんだけど、いつもこんな感じになっちゃうんだよね…」
テリーは申し訳無さそうに俺に謝って来た。俺自身テリーの事は嫌いではないしこうなると予想もしていたから今回は許そうか、先輩勇者としてな。
「ねぇテリーやっぱりマヌケバカとかこの脳筋バカなんかよりもさーわたしと一緒に遊ぼーよー」
マヌケバカとは俺の事です。
うーん顔が良いから勇者である俺のハーレムメンバーにしてやろうと思ったんだが。
性格が最悪すぎてな…数年前嫁にしてやろうと誘ったら、俺のことを勘違いマヌケバカと抜かしやがった。まったく性格が悪くても、顔が良いから許されるヒロインはやはり無いな。
「あのクサレバカの事に関しては同意するが、私のテリーから離れろ!話しはそれからだ」
「君ら一応俺が年上だって分かってますかね」
クサレバカとは俺の事です。
このフラムもクリスと同じく俺のハーレムメンバーにしようと思ってたのだが、失敗して木刀で殴られるわクサレバカと言われるわでもう散々だった。こいつはクリスよりも性格が悪いな、うんすぐ人を木刀で殴るし(泣)。
「それで何して遊ぶんだ?まさかまたクラウスさんの稽古がキツくて俺を呼んだんじゃないだろうなテリー、流石にそれは無いぞ」
「ハハは、ソンナワケナイにキマッテルジャナイカー」
「おい声が上擦ってるぞこら」
はぁ…やっぱりか、どうやら予想通り俺と遊びに行くとか言って稽古を逃げて来たようだ。
テリーはこの街のキリン児だったかな?まあキリンだかシマウマだか知らんけど兎に角期待されてるっぽい。だから毎日厳しい稽古をしているそうな。ん?俺?俺は勇者として覚醒すれば一瞬で世界最強だから。
「あっ!?そうだ!明日レンって選定の儀でしょ!」
選定の儀っていうのは教会でクラスをもらう儀式だな、勇者になる俺にはあまり関係のない事だったから忘れていた。
「そう言えばそうだな」
「図書館でさクラスについて調べようよ!うん!そうしよう!」
「俺は別に問題ないが、其方のお二方は?」
俺の言葉に2人は少し考える素振りを見せた、正直なところテリーと一緒に遊ぶのは問題ないしかしこいつらが色々とちょっかいをかけるから俺はテリーと遊ぶのを渋るのである。
少しして、考えがまとまったのか若干嫌そうな顔をして話しかけてきた。
「わたしは別にテリーと一緒に居られれば良いから別に問題ないけどねー…そこのバカがいなければ本当はいいんだけど」
「私も同じ意見だ…バカさえいなければな」
ぶつくさ言ってるの聞こえてますよーハーフエルフ舐めんなー。全く俺の事が嫌いなのはよく分かったよ、しかし奴らは俺を外すことはできなーい。何故ならテリーは俺と遊びたいからだ!ザマァを見ろ。
「よし!意見も一致したから図書館に行こう!」
一致してないがな
勇者パーティ移動中…………
というわけで図書館に着いた、この図書館は街で唯一知識を知ることの出来る場所と言ってもいい。内装は中学校の図書室って感じ、カウンターがあってそこに司書がいる、壁一面って訳じゃないけど本棚が沢山だし中央付近には机が4つ程ある。
それではクラスについて調べていこうか。
「テリーこれなんかいいのではないか、一緒に読むぞ!「初めてでもわかる!少ない文字と絵でクラスを徹底理解!」って本なのだが」
うわぁ…何かよくある読んでも少ししか理解できない奴じゃないか。
「そんな幼稚な本テリーならもう理解してるに決まってるじゃんフラム、やっぱりテリーならこれでしょ!「クラスと紋章の関連性、力の多様性と希少性について」って本、わたし全然分かんないから一緒に読んでよ!」
はいー絶対専門用語ばっかりでその手の職に就いてる人しかわかんない奴ー。…はぁ極端過ぎるだろこいつら、しょうがない俺が持ってきた本を渡すか。
「ほいテリー、この本ならお前の知りたいところ分かると思うぞ。あいつらの読みたいならそれでいいけど」
「うん、ありがとう!やっぱりレンってなんだかんだ言っても優しいよね!」
「なんだかんだは余計ですけどね、さっさと読みな」
何かすごく助かったみたいな顔されたのだが…そしてあの2人からの視線が滅茶苦茶痛いぞー。
それから数時間、クラスについて以外の本も読み満足したらしい。あいつらも俺も夕飯だから今日はお開きになった。
明日は俺の選定の儀、勇者である俺にとって後付けのクラスなど何でもいいがやっぱり気になるな、魔法剣士とかだったらかっこいいなやっぱり!
クラスを貰ったら親父が狩りを教えてくれるらしいし、俺の最強への道もやっと現実的になるな!
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今日は選定の儀当日、町の教会は盛大に賑わっている…訳ではない。分かりやすい例を挙げると学校の入学式の様なものだ。基本的に来るのはクラス選定を受ける子供の親や兄弟、後この町に唯一ある冒険者ギルドの職員位である。
その脇で選定の儀を眺めている不審者が2人いる。勿論賢者とクラウスだ。クラウスは興味津々と言った感じにこの儀式を見ている、どうやら初めて見る光景の様だ。
「そう言えば昔はランダムでクラスを渡されてたんでしたっけ?今と比べると雲泥の差ですね。今回の人数は100人位でしょうか正直同情します…好きに選べないんですから」
「そうですね…今は適正のあるクラスを自由に選んで取得する形ですから、余りよろしくはありませんが同情するのも仕方がないと言わざるを得ないでしょう」
そうこうしている内に選定の儀が始まります。その人物の一生を決めるのですから皆な緊張をするのは当たり前です、1人だけあっけらかんとしているアホが居ますがそれは放置しましょう。
「どうやら着実に進んでいるみたいですね!安心しました。ここで魔物が襲来してあのアホが勇者に覚醒とか、学園初等部でも思いつきそうなアホ展開では無さそうで良かったです」
「ふむ…最初の子は戦士、次の子は僧侶ですか。ステータスの方も中々ですね」
さて、賢者とクラウスは司祭近くでステータスの書いてある紙を盗み見している状態なのだが。普通自身のステータスは秘匿すべき内容、それを我が物顔で見て気にせず感想を言う賢者たちは結構ヤバイ人である。
賢者とクラウスは子供達1人1人のクラスとステータスを確認し感想を言い合っていると、ついにアホことレン・アルフレッドがクラスを授かる時が来たのである。
「レン・アルフレッドよ、今からお主にクラスを授けてもらう。あの像の前に座りブラフマー様に祈りを捧げるのじゃ!」
「よしわかった!」
レンは急ぎ足で像の前に行き跪く、そして両手を合わせ祈りを捧げ始めた。すると数秒後、像から光が差しレンを包んだ。
「レン・アルフレッドよ、クラスを得る事には成功した。直ぐにこちらに来るのじゃ」
「はいはーい」
そこからレンは選定の儀の手順通り、自分の血と魔力を使いクラスとステータスを知る事になるが。それを見たクラウスは壊れたかの様に笑い始めた。
「アッハッハッハッ!まさかの展開ですね!アッハッハッ!まさかあのアホのクラスが冒険者とは!うーん…アッハッハッ!まあ順当なんじゃないですかね…クフフッ」
それを見た賢者は何処かに向かって補足説明をします。
「わかっていた事ですがステータスも酷いですね…全て最低値とは…」
「アッハッハッ!本当だ!最高ですよ!最高!頑張って冒険者で勇者目指して下さいね!アッハッハッ!」
「クラウス…忠告をしておきます、私は君が思うほど優しくはありませんよ…」
「何ですかそれ?まあ、良いですあのアホのクラスが冒険者とは最高にお笑いですね。あれだけ勇者を自称しておいて戦闘とは無縁に近いクラスになるとは。感想としてはこれから頑張って下さいとしか無いですね」
一通り笑い落ち着いたクラウスは感想を述べますが。
額に青筋を立て割とマジに切れている賢者が目の前に立って居ました。
「さて、その態度は後で処すとして。次も数年後に行きましょうかクラウス、『ネオアクセル』」
「えっ!?」
クラウスは目の前が真っ暗になった
クラウスが絶望している間に世界が歪み、景色が変わり、時間が進んで行きます。
次回に続きます