第14話 冒険者エリンの災難 その2
停電によって俺のSAN値がごりっと減った気がする
「アレンさんですか!あのよかったら僕たちとパーティを組んでくれませんか!」
「ちょ!?何言ってるの!?エリン!」
どうもレン・アルフレッドです。訳あって偽名を使っているんだが、今いきなり目の前のエリンとか言う少年に仲間になってくれと頭を下げられている。何でだ?
「あのなぁ、先約があるって言ったろ。聞いてねぇのか?」
「あっ…そうでしたね……すみません」
「いきなりしおらしくなるなよ」
感情の起伏が激しいのか知らんが絶妙にやりにくいな、そしてどうにも少女達は俺がパーティに入らなくてよかった…みたいな雰囲気を醸し出している。
絶妙に落ち込んでいるエリンを励ます為、少女達があーだこーだと言っているが余り効き目なし。さてと、別に俺が蒔いた種でもないがどうしようかこれ。
「・・エリン・・依頼・・受けるんでしょ・・」
「…うん、そうだったね。ごめん皆こんなに落ち込んじゃって、さあ冒険をしにいこうか!」
「よし、ナイスリオン」
なんてこったい、無口少女のリオンちゃんの放ったその言葉によってエリンはすっかり元気いっぱい。やっぱり感情の起伏激しいわあいつ、さてと奴さんの方針も決まったみたいだし俺はガイが来るのを待つか…
「それではアレンさん、これから僕達は冒険に出かけます。お手数おかけしました」
「うん、本当にな。まあ気長に頑張れや」
席を立ち、再びお礼を言った。エリン達はギルドのカウンターに向かった。ギルドカウンターでしばらく受付と話し込んでいるが、どうした依頼を受けるんじゃなかったのか?
「はいこれであなた達も冒険者です、しっかりと頑張ってくださいね」
「わかりました!頑張ります!」
ズゴッ!
って冒険者ですらなかったんかーい!はぁ……まあ確かに冒険者だったら冒険しますなんて言わないか。さてと椅子から転げ落ちてないでなんかやるか、ふむ約束の時間まで結構あるし町に出向いて道具でも調達するか。
と俺が席を立ちギルドを出ようとした時、こんな声が聞こえた。
「あの…ダンジョンの探索は初心者の方にはオススメできないので薬草取りなどで下積みをしてからのほうがよろしいかと…」
「いえ!おかまいなく。僕達はダンジョンに行きます!」
「いや、かまうかまわないでは無く危険ですと…」
……大丈夫か?あいつら
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イガルテ洞窟、テミパーラからそう遠くない山の麓に位置するダンジョンである。ここは比較的弱い魔物が生息してはいる場所だが油断ならない魔物も少なからず存在する。新人が行くにはあまりオススメできない場所であった。
「やっぱり僕達でも大丈夫だったね、この調子ならお宝も手に入るかも」
「そううまくはいかないと思うけど、この程度の魔物なら私の斧でやれるわね」
「・・蹴るの・・疲れた・・」
「まあまあ、ダンジョンはこれからですよ」
エリン達はもともとポテンシャルが高かったのだろう、このダンジョンに生息している弱い魔物を割りと楽に倒してしまっている。
このダンジョンは構造上一本道が多く迷うことが少ない、しかし一度迷ってしまうとそこから戻るのも大変と言う中々厄介な場所である。更に迷った先は大抵強い魔物が生息しているおまけ付き。
「エリン、ちゃんとマッピングしているよね?」
「う、うん一応。下手くそだけどね」
「・・分かれ道・・」
「流石リオン、相変わらず目が良いわね」
リオンの言うとおりここから二つの分かれ道となっている。左の道は暗闇が濃くなっている道、そして右の道は奥が少し明るく感じる道となっている。
「他の冒険者がいるかもしれないし、僕は明るくなってるほうに行ったほうがいいと思ってるんだけど。皆はどう思う」
「私はエリンの意見に賛成、それといくらランタンがあるとはいえこれ以上暗いのは流石にまずいと思う」
「ふむ...私も右でいいと思うが何が起こるかわからない、警戒はしたほうがいい」
「セラと・・同意見・・」
意見がまとまったエリン一行は明るい右の道を選ぶことにした。道を進んでいくうちに明るさがどんどん増していく、そして何かの咀嚼音が聞こえてきた。エリンは冒険者達が休憩しているのだと思い歩みを進めていく、しかし...
グチャ...グチャ...グチャ...
「んなっ!?」
そこで行われていたのは捕食であった。焚き火の辺りに人であった者のパーツが散乱し、防具や武器は破壊され冒険者が魔物達に食われていたのだ。その余りにも凄惨な光景はまだ人死にも見たことが無い少年少女には耐えられるものではなかった。
「う..おぇぇぇ!!」
誰かが吐いた
「グチャ!...ギギギ?」
「マタ..アタラシイノ..キタカ」
「!?」
魔物の一体が人の言葉を片言ではあるものの喋る、それはこの牛頭の魔物がある程度ランクの高い存在であると物語っている。牛頭の魔物は人間を食べるのをやめ、部下のボガードたちに命令を下す。
「グギギ、ギギググ。グガギ!」
「ギギ!」
「まずい!逃げるぞ皆!リオン!先導してくれ!」
「わかった・・」
しかしそううまくはいかない、既に回り込まれボガードに囲まれてしまった。この絶望的な状況下においていまだ諦めていない者がいた。その名は、エリン...ではなくリンでした。彼女は一目散にボガードに突貫し攻撃を仕掛ける。
「グギャ!」
リンの攻撃はしっかりとボガードの首筋にヒットし、一撃で沈めることができた。それを皮切りにエリン一行とボガード達の戦闘が始まった。突撃役のリンを筆頭にリオンが飛び出しボガードに肉薄する。もともと後方で援護する役割であるセラとエリンは自衛に専念する。数では負けているが自力では勝っていたため、このまま順調に行けば逃げられる..そう思った矢先。
「ヤッパリオマエラツカエナイ..」
「なっ!?ごはっ!」
その言葉と共にリンがボガードと共に殴り飛ばされ壁にぶつかる、エリン達には何が起こったのかわからなかった。牛頭の魔物は面倒くさそうにリンの壁にいるリンの元に向かった、食うつもりのようだ。だがそうはいかないとリオンは牛頭の魔物の頭に蹴りを食らわせる。
「・・はぁ!」
「ン?オマエモ..ジャマナンダナ..アッチニイッテロ」
しかし、蹴りを食らっても怯みもしない魔物はリオンの足を掴み。焚き火の方に投げ飛ばした、その勢いはすさまじく小柄なリオンは受身も取れぬまま地面に叩きつけられた。
「がはっ!」
「「リオン!」」
エリンとセラはリオンに駆け寄ろうとした、だがその道はボガードたちが塞ぐ。それでもセラは走ったリオンの元に...回復すれば二人ともまだ間に合うかもしれない、そう思ったからだ。そんな健気な思いも露と消える、ボガードは無謀にも近づいてくるセラを頭を棍棒で殴った。セラもまた地面に倒れた。
「セラ!..リオン!..リン!..」
返事は誰からも返ってこない、聞こえてくるのは焚き火が燃える音と牛頭の魔物の足音そしてボガードの気味の悪い笑い声だけだった。少年は絶望した、皆をこんな所に連れてきてのは自分だと。自分が皆をこんなに傷つけ殺してしまったのだと。
「誰か..誰でもいいです..助けてください!!!!」
「わかった、その依頼受けてやるよ」
何者かがこの空間に飛び込んだ
次回に続きます
牛頭「誰だお前は!」
ボガード、エリン「!?」
アレン「地獄からの使者、アレン・シーカー!!」
次回はこんなんです