第12話 持たざる者
初手土下座安定m(_ _)m
すみません恐ろしく難産でした。
あの裁判から半年後・・・グランアーデン城の地下の地下、兵士たちが深層と呼んでいるその場所にバカはいた。
壁から伝う鎖に首と手足を繋がれたそのバカは半年前とは別人だった。髪は紐で結っておらず、膝裏まで伸びきっており前髪によって顔も隠れていた。
身体には傷跡が大量についており種類も様々だ、至る所に切り傷や打ち傷そして刺し傷、さらに火傷や裂傷といった重症も少なくない。この分だと骨折、果ては切断までされたのかもしれない。
そんな状態のバカだがまだ生きている、しかも未だに脱獄出来る日が来ると信じて時を待っている。日に日に拷問も苛烈になっていく、だが目はまだ死んでいない怒りの業火は消えていない。レンの戦いはまだこれからの様だ。
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ある日
城の地下室には、湿気とカビそして腐った牛乳をぶちまけたかのような臭いが充満している。そんな不衛生極まりない場所に三人の男とレンがいた。男たちは全員薄汚い笑顔を浮かべながらレンに近づいていく。レンが身に着けていたぼろ布は破かれており既に無く、汚い布噛まされ叫べないようになっている。そして体や顔には既にありえない数の痣ができており、辺りには飛び散った血や歯が散乱している。レン自身はもう失神しており抵抗する気力も残されていない。
タバコを吸っている男がレンを起こすため首の鎖を掴み上げこぶしを振るう。狭い独房に肉が潰されるような鈍く重い音が鳴り響き、レンの体がボールのように弾き飛ばされ壁にぶつかる。
「ぐおぇ!!」
意識を戻されたレンは大量の吐しゃ物を撒き散らしながら、全身の痛みを思い出したかのようにのた打ち回る。その姿を見た男は嫌そうな顔をしてレンの首の鎖を掴む、男の万力はレンを容易く持ち上げ吊るし上げる。
「ぐぅっ!?」
「ゲロしてんじゃねぇよ汚ねぇだろうがゴミ屑、遊びは終わってねぇぞ。これからが本番だろ気合入れ直せ」
「そんじゃ魔法の準備を始めるか・・・少し時間かかるから好きに遊んでていいぞ」
「そうなん?じゃあ俺はこっちで楽しむか、下半身は貰ったからお前は上半身で楽しめや」
後ろにいる男は杖を取り出し魔法の準備を始めた、鎖を掴んでいた奴は短剣を取り出しレンに突き立てる。最後の奴はレンの後ろに回りズボンのベルトを外し始める。
「うぅぅうぅ!!??うぅううぅ!!??」
涙を流し鎖が手足をつないでいるとわかっていながら、レンは必死に逃げようとした。しかしその顔が男たちの加虐心に火をつける結果となってしまった。短剣を持った男はレンの両腕をその万力でへし折った。腕はあらぬ方向へと曲がってしまい顔を地面にぶつけてしまう。
「あぁああぁぁあ!!!!ゆぅひてくらさい!!ゆぅひてくらさい!ゆぅひて・・・くらさいぃ・・」
「うるせぇよ」
ひん曲がった腕を見て涙を落とし、声にならない声を上げた。もはやレンが許された抵抗は泣き叫ぶことしかなかった。無様に地べたを這いずって、許しを請うしかなかった。
そんな中、後ろの男は笑いながら悠然と行為をはじめた。足を掴まれうつ伏せとなっているレンにはもうどうすることもできない。ただじっと、泣きながら。嗚咽を漏らしながら。行為が終わるのを待つしかなかった。そして・・・。
「ふぅ・・・んで魔法の準備おわった?」
長い行為を終え、レンの中で果てた男はズボンをはき魔法の準備をしていた男に話しかけた。
「当たり前だ、人を待たせやがって・・さてレンく~ん!今からと~ても痛いことするよ~ごめんね~」
「キモッ!」
犯した男の言うとおり気持ち悪い声でレンに語りかけるも、レンはもう意識が朦朧としており自分が今どういう状態なのかも把握していない。
「あらら~おねむですか~いけない子ですね~俺が起こしてあげましょう!」
男が杖をレンに向け何かを唱えた次の瞬間、この独房が光と絶叫に包まれた。
レンの体に雷の魔法が駆け巡り肉を焼く、声にならない叫び声を上げのたうち回るも壁から伝う鎖が逃げることを阻む。鎖を引っ張った事で首を絞め苦しみを増やす結果となった。肉が焦げ失禁した小便が蒸発しこの部屋は地獄と化していた。
「ひひひ・・ひゃひゃひゃひゃひゃ!レンく~ん!どこまで耐えられるかな~?」
「流石に死んじまうぞ、契約違反になる前にやめとけ」
「確かにそろそろ本当に死んじゃうか・・もったい無いが仕方ない、やめてあげよう」
男は雷魔法を解いた。一時的に地獄から免れたレンだが全身が痙攣し、もう動くことも泣くことも出来なくなっていた。
「ぁ・・あ・ああ・・・あ・・」
「少し休んだらまたやるよ~」
レンの眼前にいる気持ち悪い顔をした男はそう言い放った。地獄はまだ終わっていない。
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やっと意識が戻ってきたな・・どうもレン・アルフレッドです。どうやら奴ら電撃が終わった後も色々やったようで四肢が原形を留めていない。外から足音が聞こえてくるな、どうせあいつだろうが。
「今日もいっぱいいっぱい苦痛を貰った様ですね、はぁ…レンさんのそのお姿…最高に美しいですね」
この俺をこんなところにぶち込んだ元凶、俺が心底憎んでいる聖女だ。しかし俺が毎日毎日こんなことをされても生きている理由の1つもこの聖女だ。
「レンさんの傷を癒してあげますね、ハイヒール」
聖女はいつも拷問が終わるとやって来て回復魔法を使って俺の傷を癒している。それだけ聞けばいい人なんだが、もちろん聖女には目的が・・・ぐぅっ!?
「ごめんなさいね、回復魔法は痛みを伴うから。でも仕方ないの、早く貴方が私の物にならないから。私の物になれば拷問もやめるし、貴方をお慕いしているのに何故貴方は私の物にならないのかしら?」
「ぐぅっ…当たり前・・だ。精神ぶっ壊して・・自分のお人形にしようと思っているやつの言いなりになるかよ!」
「まあ悲しい、私泣いてしまうわレンさんがそんなことを思っていたなんて。でも私って諦め悪いの、一生かけてでも貴方を私の物にするわ。傷も癒えましたし今日はもう帰ります、明日からも楽しみにしていて下さいね」
くそっ絶対に諦めねぇぞ、必ず此処を脱出して。絶対に復讐してやる・・地の果てまで追いかけて・・俺がくらった痛みと絶望を骨の髄に至るまで味合わせてやる。
数日後
今日もまた、辛く苦しい1日が始まった。珍しくこの独房に雨音が聞こえてくる、どうやらかなり強い雨のようだ。さてと今回はどんな奴かな?
独房に人が入ってきた、此処は明かりが外の通路にしか無いからかなり暗い。なので近くまで入ってくる奴の顔が分からない。
「君が国家内乱罪で投獄されているレン・アルフレッド君だね」
その男はイケメンだった。暗くてよく見えないがプラチナブロンドの髪に、整った顔が物語から飛び出してきた王子の様だった。
「確かにそうだが、あんた何もんだ?普通そんなの気にする奴いねぇぞ」
「レン・アルフレッド君なんだね、ようやく見つけたよ。僕はこの国の騎士団長だ、君を助けにきた」
な!?こいつは今なんて言った・・俺を助けにきた?そんな馬鹿なことが起こり得るのか。
「詳しく説明している暇は無い。君は早く此処から出てこの国から逃げなくちゃいけない。服や装備は独房の外にある早く着替えてくれ」
王子様は剣を抜き、俺の鎖を全部壊してくれた。自由…約半年振りの自由がそこにはあった。こんなの泣いちまうに決まってるだろ・・
「助けてぐれで・・えぐっありがとうございまず」
「お礼なんか要らないよ。むしろ遅くなってしまってごめん、この国の腐った内情を調べるのに半年も掛かってしまった。取り敢えず話はこれくらいにして早く行こうか」
騎士団長に連れられ独房の外に出た。そして用意されていた服と装備を急いで身につけ城内に上がった。
どうやら今日の警備は皆騎士団長一派の人らしく快く通してくれた。脱出用の道を秘密裏に作っていたようで狭い道を抜けて行くと城の外に抜け、真っ直ぐ進めば王都からも出られるらしい。
「僕はまだこの国でやる事がある。それが終わったら、会いに行くよ。事の真相を伝える為に」
「本当にありがとうございました、あなた方は命の恩人です。この御恩は心に刻みました、一生忘れません」
俺は深々とブレイヴさんに頭を下げ、狭い道を進んで行く。話していた通り直ぐに出口に着く事が出来た。しかし雨脚がどんどん強くなっている。
「レン・アルフレッド様ですね、私の名はユリウス・オースレス。騎士団長の命令によって、貴方を警護します」
「ありがとうございます!」
外には俺を護衛してくれるらしい人が居た。流石に鎧は着ていなかったが、腰には見ただけで使い続けているとわかる剣が下げられていた。
「雨が強くなっているのは好都合でした。マントを身につけて、フードで顔を隠せば安全に行けるでしょう。手早く身につけて下さい」
ユリウスさんがくれたフード付きマントを身につけ、大雨の中を進んで行く。いつもなら店で賑わっているはずの人達が見当たらず、難なく進めている。しかし突然、ユリウスさんが足を止め剣を抜いた。
「アルフレッド様、私が道を開き、足止めをします。貴方は早くこの国を出てください」
「貴様、我々に気付いていたとは中々に手練れだな」
目の前に黒い装束に身を包んだ者が十数人も現れた。素人の俺でも一人一人戦闘用の武装をしていること、俺よりも明らかに強い事が分かった。間違いなく殺す気だ。
「大人しくレン・アルフレッドを引き渡せ、抵抗すれば処刑も止む無しと命令されている」
「私もレン・アルフレッド様を逃せと命令されている。はいそうですかと渡すわけがないだろう」
「だろうな…ならば死ね」
奴らの1人ががそう行った瞬間、全員武器を構え俺たちを円の中心にし囲んだ。奴らの武器は剣や槍、斧や弓と多種多様だ。どうやったって勝てそうにない。
「アルフレッド様、準備はよろしいですか。先程言った通り、私が道を作りますそれでどうにか逃げ果せて下さい」
「わ、わかりました」
ユリウスさんは多分死ぬ気だ、俺を逃す為に。この戦力差を覆す程の力がユリウスさんにあると願いたい。だからこう言おう。
「ユリウスさん。貴方のことは心に刻みました、絶対に忘れません。ですので生きてまた会いましょう、いつか必ず」
「そうですね、私もアルフレッド様とまたお会いできることを願っています。では…ユリウス・オースレス!推して参る!」
ユリウスさんはとんでもない速さで前方の敵に斬りかかった。俺も何とかそれに続き走り出す。
「アサルトバッシュ!今です!アルフレッド様!」
ユリウスさんのアサルトバッシュで敵を押し込んだ事で道は出来た。俺は一切振り向かず、前だけを向いて全力疾走した。
大雨のせいで極端に視界が悪く、自分が一体何処を走っているのかわからなくなってきた時。足を滑らせ転んでしまった。
「はぁ…はぁ…はぁ…多分王都からは出れたな、あの黒装束の連中も巻けたといいんだが…」
「残念ながらそうはならない」
「だよな…」
俺が独り言をしていると後ろから返事が返ってきた。振り返って見ればやはり先程の奴ら、ただ今回は人数が数名しかおらず少なくなっている。
「だとしても俺が勝てる見込みは1つも無いんだよな」
「そうだ、大人しく連行されろ。レン・アルフレッド」
「はぁ…残念ながらそうはならない」
俺は装備の中にあった直剣を抜いた。前の俺だったら大人しく連行されただろうが。今の俺には心に刻んだ人達との約束がある、たとえ勝てないと分かっても逃げる隙くらいは自分で作ってみせる。
「死にたいようだなレン・アルフレッド、愚かな男だ」
「どんなに無様でも、何もかも失っても、ここから逃げ果せてみせる!あの人達との約束は死んでも果たす!」
「ふっ…ならば言葉通り死ね」
俺は黒装束の連中に突貫した。戦力差は明白でも、ここで大人しく捕まるのは勇者として許せなかった。たとえ本当に死んだとしても。
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大雨の今日、王都を出てすぐの森にその男は居た。直剣は折られ、全身に傷を負い、左腕は切り落とされ、片目は潰されてもなお。奴らに捕まらぬ為必至に抵抗し続けた。
レン・アルフレッド 16歳 死亡
〜向上蓮の珍道中〜行け!踏み台のその先へ!!
第1章 レン・アルフレッド 終了
第2章 ガイ・アルザに続きます
これでプロローグが終わりました