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異蟲界、倒錯の知的パラシートゥス  作者: Ann Noraaile
第6章 濱舞久市の闘い
45/67

45: ビンゴの時


 海と慎也はその後、クラブで展開した暮神との決闘レベルには及ばないものの、三日三晩、深夜の街で暴れ続けた。

 煌紫が役に立つと言ったとおり、あのクラブでの決闘は海達の名前を一躍有名なものにしていた。

 更に羽目を外した海が、クラブ巡りで時折披露するブレイクダンスは超人過ぎて、これも又、衆目を集めた。

 今では海たちの暴れぶりを追いかける見物客さえついている。


 そして事を起こす際に、海たちは必ずゲームの名を口にした。

 「誰か、仮面ライダーゲームってのを知らないか?俺達はそれをやるために、この街に来たんだ」と。 

 もちろん、それは仮面ライダーゲームの主催者の気を引くためだ。

 ゲームの存在を隠しておきたいのなら、海達を静かにさせようとするだろうし、ゲーム自体の目的が金銭目的か快楽殺人なら、今回だけはセレブ限定というルールに特例を設けるかも知れない。

 いずれにせよ、これでゲームの主催者から、何らかの接触がある可能性が出てくる。

 ただ海達にしてみれば街で暴れる以外は、今の所これといった出来事もなく、半分は旅行のような情況は相変わらずだったが。


 暮神の件もまったく警察沙汰には、なっていないようだ。

 クラブ側は器物破損の被害届を出せる筈だっが、あの瞬間までは、誰が見ても海は被害者の立場にいたのだ。

 警察は海たちの身元くらいは割り出せる筈だから、事情聴取くらいはあってもよさそうだったがそれもなかった。

 警察に裏から手を回すのは、マンイーターの専売特許ではなかったのかもしれない。

 あれほど慎重な煌紫が、人目の多いクラブでの決着を仕組んだのだ。

 そこに何の策も施されていない筈はないと、海は考えていた。


 面白いもので海たちが有名になるにつれ、「騒動」が向こうから現れるようになっていた。

 海達を倒して名声を得ようとする愚か者たちが、次から次へと沸いて出るのだ。

 その夜も海は、合計四人を叩きのめし、最後に「あー、こんなちんけな喧嘩より俺たちは仮面ライダーゲームがしたいんだよな」と自分でも恥ずかしくなるような小芝居をした。


 そしてホテルに帰り、その日の汗を流す。

 ホテルのバスルームは二人が同時に入れる程の広さがあり、別々に入るといちいち後始末が面倒なので、一緒に入ろうと海は慎也に誘うのだが、慎也は今日も何を恥ずかしがってか、先に入ってくれという。

 だが、こういったやり取りにまったく拘りがないのが海でもあり、海は一人で湯に浸かって、バスタオルを腰に巻いた姿で、リビングルームに戻ってきた。

 今夜の暴れかたが激しすぎたのか、身体の火照りがまだ収まらなかったからだ。

 その姿を見た慎也が、うわずった声で言った。


「兄貴、すげぇ身体してますね。体脂肪いくつなんすか?」

「体脂肪?そんなの計った事がないから判らんな。たぶん0なんじゃないかな?」

 海は本気で言ったが、慎也は冗談だと思ったようだ。

「でも思ったより、筋肉ムキムキって感じじゃないですね。綺麗な身体だ。ダンスなんかにむいてそう。でもその背中の傷凄いですね。女がひっかいたにしては酷すぎる。」

「だろうね。」


 海は慎也の向かい側のソファに座り込む。

 海もバスルームから出かけに、姿見に映った自分の全身を確認していたが、煌紫に寄生され自ら身体改造を施した身体は、以前とはまったく別のものになっていた。

 大雑把に言えば、痩せていて筋肉も薄い身体だ、だが海の筋肉は並の人間のものではなかった。


「この背中の傷はさ、前に言ったろう。神領流さ。神領流では、こう熊手みたいな暗器をつけて組み手をやるんだよ。それで失敗した。故郷に帰った時にはそれをやらされる。実戦のカンを衰えさえない為なんだってさ。」

 又、嘘だった。

 この傷は、極夜路塔子を襲った比留間を引きはがそうとして負ったものだ。

 暮神との闘いで追った傷は、直ぐに癒えたのに、不思議な現象だった。

 大抵の傷は煌紫が与えてくれる快復力のお陰で直ぐに直るのだが、比留間は寄生虫同士で効き目のある何かの細菌を爪に持っていたのか、そこだけ回復が異様に遅い。

 この嘘で海の心は、又、いつものように痛んだが、それでもまだ寄生虫の存在について慎也に話すことが出来なかった。


 この時、ホテルに備え付けの電話が鳴った。

 まだ服を着たままの慎也が気を利かせて電話にでた。

 程なくして受話器を抑えながら慎也が言った。


「、、外線だよ。仮面ライダーゲームの事について話したいって、」

「あのアンティークショップの爺さんか?」

「、、いいや、違うやつ見たい。」

「代わるよ、俺が出る。」

「神領海です。仮面ライダーゲームについて、何かお話がおありだとか?」

 受話器の向こうから落ち着いた男の声が聞こえた。

「ええ、街の噂では貴方は、随分ご熱心に我々、政治結社神国の運動に興味をお持ち戴いているとか。」


 ついにビンゴの瞬間が来た。

 海の動機が早まった。

 これ程、早く相手が反応するとは思ってもみなかったからだ。

 海は自分を見ている慎也に、ウィンクを送ってやる。


 しかし、今まで表面に浮かんでこなかった仮面ライダーゲームが、いやその関係者と名乗る人物が、こんなに堂々と連絡をしてくるのも、奇妙と言えば奇妙だった。

 ホテルへの外線からの通話は、足跡や色々なものが残る。

 第一、ある程度、自分の身元を明かさねば、ここには繋がらない筈だ。

「私は皇琢磨と申します。帝都大学で教えています。」

 大学教授!

 もしかして俺達の追っている仮面ライダーゲームと、この男が言っているゲームとは違うものなのか?と海は一瞬いぶかしんだ。






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