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プロローグ





プロローグ

誰かについての考察



ーーー



千年前、大陸にその名を轟かせた大英雄、タスク・オルフェウス・アレグス。


最後まで砂漠の怪物エンドラルドの側を離れなかったものの、シェトラル、エンドラルド両国間を取り持ち、大戦を終わらせたという伝説の大英雄である。

エンドラルドの親友にして側近だったという彼の記述は多くは残されていない。エンドラルド本人も固く口を閉ざし、彼を語ろうとしなかった。


生まれは現在の魔都エンドラルド、ワシハン地区。当時はラシェンナという巨大都市国家で、アレグス村という名称だった。

孤児であった彼は幼少期をエンドラルドと共に過ごし、2人は幼なじみのような関係だったと、当時の唯一の生き証人ワシハン地区長老のハイエルフ・アリア氏(1037)は語る。


「エンドラルドもシェトラルもタスクも、尊敬していましたよ。自身の食べ物すら確保が怪しかったあの村で、他人に分け与え、率先して動けた者は他にはいません。他の村に食べ物を盗みに行って、ボロボロになって帰ってきたこともありました。エンドラルドは身体の小さかった私に優先して食べ物をくれました。シェトラルは村の設備を良くしてくれました。タスクは医術にも長けていて村のみんなのの治療もしてくれました。」


そう語るアリア氏は、その後も嬉しそうに幼少期の事を語ってくれた。

ここで私は核心に迫る事、つまり「何故救国を成し遂げたタスクの記述が残されていないのか」と問うた。

この質問をするとアリア氏の顔が明らかに曇ったのだ。これはなにかあるに違いない。


「タスクは亡くなるひと月前、自身の息子に乞うて、自身の記述を全て消し去ったのです。」


ーーーばかな。


シグラ教典によれば、

大陸歴2670年、エンドラルドは退位し、その一人息子のランドリヨンが帝位を継いだ。

そこにはこうも記されている。

『タスクには妻がいたが、子は望めなかった。』

シグラ教典は宗教国アルヴァナで保護された最重要歴史文献だ。それを、この女性は真っ向から否定した。


「シグラ教典が間違っていると、そう言いたいのでは無いのです。

確かにエンドラルドは世界のバランスを歪め、壊し、たくさんの命を奪った。それは否定しません。あの人はたった一人を守るために、世界を壊したのですから。」


ーーーたった一人を守るため?


「私は千年、エンドラルドに頼まれてこの記録水晶を保管していました。」


赤く輝く水晶は、まさか


「これは、タスクの記憶です。消えゆくタスクの身体から全て抜き取りました。タスクも同意の上です。」


歴史的大発見だ。長年謎とされてきた三人の関係、そしてタスクの謎が解けるかもしれないのだ。


「これは世界にとって、都合の悪いこと。長年肯定し続けた歴史を覆すことになるのですから。」


それはつまり、今まで我々が信じてきた歴史が覆されると、そういいたいのか。

女神アララドが残した偉大なるシグラ教典。それがーーー



「もうすぐ新たなシェトラルが現れてしまう、その前に。

エンドラルドほど、悲しいものはいないのだと。」


待ってくださいアリア氏、現れてしまう、とはーーー




ーーー

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