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第90話 旅路の後先
あの時を馳せる。
想えば、もっと無邪気な頃もあった。
もっと幸せで、落ち着いた安寧もあった。
だけど、冒険と探求に満ち溢れたすべての記憶を辿った時。
――あの、攫われた少年を追った砂漠の旅路。あの時、あの場所で見た景色が。嗅いだ香りが、指先に残る手触りが。
交わした言葉が。寄り添った体温が。耳にした歌声と弦の音色が。
“最も輝かしき日々“。
思い起こす度に、過ぎ去ってしまった時の長さに胸を衝かれながら。あれこそが少年期のそれであったと。そう思い知らされるのだ。
これから語られるのは、紫藤イズナと錠前彩弥が、柊克也を取り戻すまでの旅路の物語である。




