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箱庭世界のきぃと僕  作者: 越波
第4章 天馬白月国・“病の王“胎動編
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第84話 病の王の進軍

「いつつ‥‥オイ、テメーら生きてンなァ? ッたく、ヒデー目に遭ったぜ‥‥」


 じわじわと焦点が合う。目の前に現れたのは、迫り来る壁だった。物凄い圧力で壁が僕を押し潰そうと迫っている――。


「柊、オメーもいつまで寝転がってんだ。いい加減に起きやがれ」


(いや、紫藤。そうは言うけどこんな大きな物に挟まれてちゃ起きるどころじゃ‥‥)


 僕は圧迫されて唸る事しか出来なかったが、不意に両脇から手を入れられたかと思うとするりと助け出された。


 と言うより、どうやら僕はただ単に床板に突っ伏していただけだったらしい。


 急に前後不覚に陥って、上下左右もわからなくなっていたようだ。


 改めて倉庫の中を見回すと、積み上げられていた木箱や樽が倒れて散乱し、建て付けの悪い棚は壊れてすらいるようだ。


「‥‥地震か」


 しかも相当な大きさだ。震度も3とか4なんてレベルじゃないだろう。震災クラスの災害だったんじゃないだろうか、と不安が広がっていく。


(――いや、それもそうなんだけど)


 気になる事はもう一つある。


「‥‥ベルゼ、結局通信はどうなったんだ‥‥?」


『はい。いいえ、操縦者(マスター)。あれは、失敗でした‥‥と言うよりも、あの“怠惰の欠片“に仕掛けられた罠だった可能性が高いかと』


 罠、か。


「って事は、さっきの地震みたいなのも、“病の王“への通信が原因だって事か」


 僕の問いに、ベルゼは『‥‥恐らく』と言葉少なに肯定する。


「‥‥ハァ」


 思う所がない訳じゃない。でも、意図的に災害を引き起こしたという事でもないんだ。今は考えすぎて身動き取れなくなる方がまずいだろう。


 意識して災害の事を頭から追いやり、考えられるシナリオを予測してみる。


「‥‥これもシステム側の用意した(てこ)入れって事なのかな。“病の王“クエストを終わらせる為に、イベントの進行を巻きにかかってる‥‥とか」


 僕の呟きに、倒れた椅子を起こして前後逆に腰掛けた紫藤が真顔で考え込む。


「‥‥あるかもなァ。ほったらかしのまンまだったろうし、オレ達もこの町に来てからクエストの消化って意味じゃあ進んでねェ扱いだろォしよ」


 やっぱり、そう見えるか。


 だとするとシステム側がクエストの進行を早める為に出来る事と言えば、何だろう。


「‥‥トリガーが“病の王“への通信だったんだ。やっぱり段階をスッ飛ばして“病の王“の活動が活発化するとか、ボスの拠点への道が開くとかじゃないかと思うんだけど‥‥」


「言いたくねェが、御大(おんたい)自らの出陣って可能性は?」


 “病の王“が通信元を捉えて逆に襲撃しようとする――?


 嫌な想像に違いはないが、可能性としては大ありだ。


「ベルゼ。今紫藤が言った話の裏付けは取れる?」


 僕が呼び掛けると、ベルゼはしばらく沈思した後に口を開いた。


『残念ながら、と申し上げるべきなのか‥‥サーバーから新たに開示されたクエストボスのステータスは“移動中“となっています』


「嫌な予感ほど当たるんだよなぁ‥‥」


 しかし、悔やんでばかりいても仕方ない。来るなら迎え撃つか、逃げるかを考えないと。


 僕は傾いた円卓を元に戻すと、床に落ちていた紙片を広げて置いた。町で売っていた地図だ。大雑把な事しか書かれていないが、位置関係を把握する程度の役には立つ。


「ベルゼ、ボスの位置は」


『はい。この岐路の町から見て南東250km。白き月の遺跡(デア・パレス)の最深部をゆっくりと地上に向けて上昇中』


 ベルゼの情報がARで地図上の森林深くに赤い光点として投影される。僕は紫藤にも見えるように光点の位置へ適当な木彫りを置いた。


 次いで、ボスの光点を中心に扇状の光帯が表示される。面積が広いので小さめの木彫をまとめて置く。


「ベルゼ、これは?」


『サーバーからのクエスト情報によると、ボスの能力(skill)によって生成されるモンスターの暴走群(スタンピード)との事です。規模は‥‥1000を超えます』


 1000‥‥? 前に荒野で紫藤達を追い回していた奴も相当な迫力だったけど、それでも10を少し超える程度だった。モンスターは大概が野生の獣よりも大型な為、それでも十分に止めようのない暴力になるのだ。


 それが、1000。人の為す兵団、騎士団であっても相当な数だ。それをモンスターが為せば、どれだけの脅威になると言うのか。


 多少迎撃に出て蹴散らせる物量じゃない。勿論この岐路の町の囲い程度で籠城出来る突破力でもない。


 そう考える間にも、光点は遺跡のある森の奥深くから徐々にこちらへ向かって移動していく。一方でボス本体は殆ど微動だにしていないように見えた。


『ボスのステータスを見るに相当の巨体であり、その全身が半ば朽ちかけているようです。眠っていた地下空間から岩盤を砕きながら登っている為、移動には相応の時間がかかるかと』


「そりゃァ朗報だな。で、こっちの連中は後どのぐらいで町に着くんだ?」


 紫藤が並べられたモンスター群を示す木彫を指でつつく。


『速度がこのままなら、2日もあれば。それから、これは悪い知らせになりますが‥‥』


 そこで、ベルゼは明らかに言い淀んだ。僕らが頷いて促す事で、ようやく続きが語られる。


『‥‥クエスト情報によれば、このモンスター暴走群(スタンピード)は複数回行われる内の、第一波に過ぎないと』


 1000体ものモンスター群による波状攻撃――。


 これは、ダメだ。岐路の町では支えきれない。


「紫藤、ベルゼ。全員に通達。今から1時間以内に町を退去する」


 奴らの狙いは、通信を行ったベルゼ。つまり僕らが移動すれば会敵地点はコントロール出来る。


「‥‥古城で、鍵屋全員で迎え撃つ」

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