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箱庭世界のきぃと僕  作者: 越波
第4章 天馬白月国・“病の王“胎動編
84/116

第83話 awakening

短めです。

◆???◆


 それは、酷く永い時間を深い暗闇の底で過ごしていた。


 四肢の自由を奪われ、言葉と光と音を奪われ、時間だけを無為に与えられ続けた。


 ありとあらゆる外界からの刺激を遠ざけられた中での永劫に近しい時の流れは、ただひたすらに孤独と停滞をそれに()いた。


 初めは神を呪った。災いあれと。己をこのような責め苦に縛る世を心の中で悪し様に罵った。


 次に己を呪った。幾ら待てども傷が癒える事はなく、己の力ではこの地獄から抜け出せない事がわかった。


 その内、余りに何も起こらない時間が永くなり過ぎ、流石のそれも徐々に意識を手放し始めた。




 どれだけ時間経ったのか。


 永すぎる孤独という毒と、絶望による意識の断絶によって、それの精神は風化しつつあった。


 最早言葉は脳裏に浮かべる事すらも困難になり、形にならない感情の色だけがそれの精神を()しているような状態だった。


 もう後幾ばくか、変わらぬ孤独と絶望に身を浸し続ければ。それは間もなく朽ちてただの土塊(つちくれ)へと姿を変えていただろう。


 だが、幸か不幸か。


 不意に閉ざされたそれに、強く問い掛ける声があった。


 気のせいでも幻でもない。


 どれだけ待ち望んだだろう、自分という個に働きかける外界からの刺激。


 浸った停滞が長きに(わた)り過ぎ、最初の呼び掛けに、それは答え損ねた。


 だが茫然自失しながらも急速に覚醒したそれに、再度呼び掛けはやって来た。


 ――歓喜。


 言葉もなく、声もなく。ただ枯れ果てたそれの意識の海を、目に沁みる程の喜色が埋め尽くしていく。


 会いたい。


 会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい。


 自分は此処だ/此処に居る/ずっとずっとずっと此処に居た。


 待ってくれ/行かないでくれ/語り掛けてくれ。


 お前が呼び掛ける事で(われ)(われ)を自覚した/(われ)(われ)である事を喪わずに済んだ/もうわれ(われ)を喪いたくない。


 (われ)(われ)である為に/ずっと呼び掛けてくれ。


 (われ)(われ)でありたい/喪いたくない/お前が――お前が欲しい。


 ――(われ)が/欲しい欲しい欲しい欲しい/(われ)/欲しい。




 余りに強い感情の爆発。


 それが起こした事なのか、或いはとっくにそれを縛り付けていた戒めすらも朽ちていたのか。


 それは心の底から湧き上がる渇きに衝き動かされ。


 遂に地の底から大地へ向かって這い上がり始めた。




 (それ)の名を――“病の王“と呼んだ。

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