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箱庭世界のきぃと僕  作者: 越波
第4章 天馬白月国・“病の王“胎動編
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第77話 捕らわれの鍵音3

大変長らくお待たせしました‥‥。

◆瀬埜宮鍵音◆


「ろ、ローズマリー卿。何故ここに‥‥‥」


 仮面の男がうろたえてひっくり返った声を必死に抑えながらローズマリーに話しかける。


「あら、ここは私の借家ですもの。それより人と話す時にはその似合わない仮面は外して頂けますかしら。無礼ですわよ」


 最後の一言は低くドスの効いた脅しだった。


 慌てて男は仮面を外し、ハンカチで満面を濡らす冷や汗を拭いだした。意外に普通の気の弱そうなおじさんって感じの顔だ。


「結構ですわ、ヨナスさん。契約では貴方がこの家の借り主になるのは来月からでは? 我が家のように振る舞うのは少し気が早すぎるのではなくて?」


 ‥‥‥ここ、ローズマリーの借家だったんだ。


 知らなかったとは言え、気付くと蛇の巣で過ごしてた気がして寒気がしてくる。


 ローズマリーは視線を部屋の中に巡らせると、実に愉しげに目を細めた。


「‥‥‥で、ヨナスさん。その方々とはどのようなご関係ですの?」


「いや‥‥‥これは、その。そう、私の錬金研究の協力を依頼していたのですよ」


「違う」


 何言ってんだこのおじさん。焦ってるんだろうけどきぃが同意するとでも思ったのだろうか。


 きぃが仮面の男――ヨナスの言葉を否定すると、彼は忌々しげな目で睨みつけてきた。


 ローズマリーの事は正直かなり苦手だし、ヨナスよりも危ない気もするけど。でも、毒には毒を、だ。この際ヨナスの動揺につけこむのに利用しよう。


「無理矢理、連れて来られた。リディも一緒に」


「あら。やっぱり誘拐ですのね」


 きぃが意を決して事情を説明すると、ローズマリーは嬉しげに微笑む。何でこんなに楽しそうなのかわからないのが気持ち悪い。


「違います! これは、その‥‥子供の悪ふざけという奴で‥‥」


「残念ですけれど、彼女と私は同郷の顔馴染みでしてよ? その彼女の言い分と貴方の言い分、どちらに信が置けるかなど説明するまでもありませんわね」


 それとも、とローズマリーは言葉を切る。


「総督府か‥‥浄化再興庁、でしたか? そちらに問い合わせでもしましょうか。保護者とドミニクが血相を変えて飛んできてくれるでしょうし」


 この一言で、ヨナスは完全に撃沈した。真っ青な顔でくず折れ、ローズマリーに抗弁する気力すら失ったようだった。


 ふう、と一息つく。ずっと続いていたストレスが一つ片付いたのは思ったより体を軽くしてくれた。


 でも、まだ終わりじゃない。


 いや――むしろ、より面倒くさくなった。


 ちらと視線を向けると、ローズマリーが待ちかねたような満面の笑みを向けてくる。


「さて、では“誘拐の窮地を救った“ご褒美が頂きたい所ですわね?」


 うわぁ、すごく言いたくない。


 でも、人として言わないのは良くないよね。個人的にはすごく言いたくないけど。


「‥‥あり、がと。助かった」


 きぃが呟くと、ローズマリーは意外に優しく微笑みながら「どう致しまして」と返してくる。


「ただ、まあそれはそれとして。褒賞と犯罪者の身柄や手柄は交渉しませんとね」


「きぃ、難しいお話わかんない、よ‥‥?」


 大体難しい話はかっくんやイズナがやってくれてるから、きぃは自信がない。


 予想していたのとは異なるストレスがかかって、思わずたじろいでしまうが、ローズマリーはそれにも優しく微笑むだけだった。


「心配には及びませんわよ‥‥先輩には頼りになる王子様がいるんですから」


 端から見ていると本当にただの優しげな微笑なのに、コイツ(ローズマリー)がやっているだけでどうも落ち着かないのは何故だろう。


 その視線がこちらから、天井の一点に移る。


「ほら、行ってる傍からご到着ですわ」


 危ないから、と自然な手つきで抱き寄せられる。


 ‥‥何か柔らかくていい匂いがする。そこはかとなく敗北感。


 と、その次の瞬間だった。


「「『突入ーーーー!!!』」」


 そんな掛け声と共に、きぃを閉じ込めていたログハウスっぽい小屋の天井がいきなり爆散する。


 天井材や梁の破片と共に落ちてきたのは、完全武装の全身甲冑2体と小柄な人影だった。


 黒と白の騎鎧(キャバルリィ)。かっくんとハクだ。


 舞い上がった土煙を巻いて、赤紫色のスパークが走る。


「‥‥誰がきぃを攫ったかと思えば、()()()


 ‥‥あれ? 何かかっくんが凄い威圧感でこっち見てる気がする。


 それにいつの間にか、ローズマリーがガッチリきぃの両肩を掴んで離さない。さっき抱き寄せられた時に掴まったみたいだ。


 しかも振り向いた時に実に愉しそうに笑っていた。きぃに微笑んでいた時とは全然違う、いかにも蛇女らしい粘着質な笑い方だった。


「あらあら、人の借家を壊しておいてとんだ言い草ですわね?」


「惚けるのもいい加減にしろ! きぃは返してもらうぞ!!」


 ああ、ダメだ。かっくん、完全に頭に血が上ってる。


 かっくんの後ろで誰か小さい子が必死に止めようとしてるけど聞こえてないみたいだ。


 もう! どうしてこうなったの!?

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