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箱庭世界のきぃと僕  作者: 越波
第4章 天馬白月国・“病の王“胎動編
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第71話 浄化再興庁3

お久しぶりです。

ちょっと家族に不幸があり全く筆が進んでませんでした(・ω・`)


プロットの書き直しは終わったのでしばらくは定期的に更新を再開します。

「あらあら、お久しぶりねお二人さん」


 ヨゼフの一件は、僕らの浄化再興庁のイメージを非常に緊迫感があって油断ならない場所として印象づけた。ただ、勿論マイナスの出来事ばかりだった訳ではない。


「あ、魔女さん! お久しぶりです」


 柔らかな声で話し掛けて来たのは、僕らが以前治癒の治験第一号として協力してもらった魔女さんだった。


 相変わらずレースや刺繍で可愛らしい意匠をローブに散りばめ、見ているだけで和やかにさせられる人だ。今日は魔女の名に相応しくつばの広いとんがり帽子とローブという出で立ちだった。


「魔女さん‥‥会いたかった。元気?」


 珍しくきぃが僕の影から歩み出て手を取り合っているのは、この浄化再興庁で知り合う事になった連中に疲れ果てたせいだろう。


「随分今日は甘えんぼさんなのね?」


 微笑みながらきぃの頭を撫でる様子は、体格や雰囲気もあってお婆ちゃんと孫娘みたいだ。とは言え、安心出来る知人に出会って緊張が緩んだのは僕も同じだった。


「でも、魔女さんはどうしてここに? もう森を離れても大丈夫なんですか?」


「魔女さんだなんていつまでも他人行儀ね。ルイーゼって名前があるんだから、そっちで呼んでね?」


 おっとりした口調で頬に指先を当てて微笑む魔女さんことルイーゼさん。


 実に惜しい。後3‥‥40年若ければすっごい眼福だったろうに。


「‥‥あらあら、失礼ねー。幾つに見えてるのかしらー」


 あれ、また声に出てたのか!


「かっくん、ホントに、見境ない‥‥!」


 両側から頬を抓られながらスネにローキックの連打を受けつつ、僕は2人に平謝りする羽目になった。






「今回の新設部署の件は、私にも渡りに船だったのよねー」


 ルイーゼさんはそう言うと、同室の魔女を紹介してくれた。一人はルイーゼさんと同年代で、もう一人は僕らよりも年下だった。


「あれから、きぃちゃんに作ってもらったミストやお風呂を研究してたんだけど、一人じゃ限界があったのよね」


 ルイーゼさんとしては、きぃ風呂とまでは行かなくてもミストぐらいの浄化術を確立出来ないかと色々研究してたものの、他の魔女達はそれより数歩遅れた知識しかなく逆に頼られてしまったらしい。


 しかし彼女としても教えるばかりでなく同格以上の研究者と切磋琢磨が必要だった。そんな風に思い悩んでいた所に総督府と教会肝煎りの新設省庁の話が飛び込んで来た訳だ。


「まさか、また貴方達と再会出来るとは思わなかったわ。決心して正解だったわねー」


 そう言ってティーカップを傾ける。朗らかな声色からは想像もつかないが、この世界でも魔女は教会から良く思われていない生業だ。それが教会そのものではないとは言え、息のかかった組織に身を寄せると言うのだから並大抵の決意ではなかったろう。


「僕らとしてもルイーゼさんがいてくださるのは非常に助かります‥‥ちょっと個性的な方が多いみたいで」


 僕が言葉を濁すと、ルイーゼさんはニコニコと笑顔を保ったまま「狂人(マッド)さんと業突く張りの巣だもの、仕方ないわ」と合いの手を打った。予想だにしない毒舌さにこちらが舌を巻いてしまう。


「大丈夫よ、防諜用の術はかけてあるし、聞かれたって今以上に印象が悪くなる事はないもの」


 どうも、競争相手といがみ合ってでも最前線の知識や施術をその目で見たいという知的欲求だけが、ここに集まった研究者達を繋ぐ唯一の共通点らしい。


 何とも殺伐として寒々しい集団だとは思う物の、この国の苦境を挽回しようと考えるならこのぐらいの熱意は歓迎すべき――なんだろうか。釈然とはしないが。


 その後はお互いの住居や庁での仕事の話をして、丁度お弟子さんが顔を見せた所で魔女さんも忙しくなったので暇を告げる事にした。


 そう言えばお弟子さんはリディさんと言うそうで。年も近いきぃと今度遊ぶ約束をして別れたのだった。


 しかし人を招くとなると、あの倉庫もちょっと掃除しないとな‥‥‥。


家妖精(シルキー)達が掃除しているとは言え、チンチラみたいな獣もおりますから‥‥‥』


 確かに。と言うか毛だらけの権化と言えばむしろ金狼が筆頭だろうが。


 そんな事を考えていると、『いえ』とベルゼから否定が入った。


『金狼殿でしたら、ここ暫く不在ですよ』


「あれ? そうだったけ」


 思わず声に出てしまった。きょとんとしたきぃの目と目があったので、金狼の事を尋ねてみる。


「‥‥‥うん。わんこ、出掛けるって」


 マジか。あのデカいのがいないのに気付いてなかったとは‥‥‥。


 ちなみにいつ帰って来るかは本()もわからないらしい。それでいいのか召喚護衛。






 翌日、リディさんは約束通り倉庫を訪れた。


「そう言えば、いいお店があるんですよ」


 何でもオープンしたばかりの遠方の香辛料を扱う店らしい。香辛料の中には魔女の調薬に関わる物もあってルイーゼさん達魔女の間で噂になっているんだとか。


 リディさんはまだ正規の魔女としての印可は持っていないが、やはり魔女の端くれとして師匠や先輩達のそうした会話には敏感に反応しているようだ。


「‥‥‥香辛料増えたら、ご飯も、美味しいね」


 きぃとしては花より団子と言うか調薬より食材って感じだが。


「ま、気を付けてな。チンチラと小竜達はボディガード頼むぞ」


「む‥‥‥きぃはかっくん一緒でも、いいのに‥‥」


 きぃは唇を尖らせて若干拗ねモード。でも止めなさいね、リディさんが困ってるから。


 僕はきぃの頭に手のひらを置くと、宥めるように軽くつむじを撫でた。


 何せ、今日は珍しく女子会っぽい事やウィンドウショッピングもやるらしいので。たまにはむさ苦しい連中から解放されてもいいだろう。


 やや後ろ髪を引かれながら、きぃは町の目抜き通りに連れ立って歩いていく。






 しかし、そのままいつになっても帰って来る事はなかった。


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