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箱庭世界のきぃと僕  作者: 越波
第3章 天馬白月国・ベルゼ編
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第59話 DeathBringer

■ベルゼ:現在■


 端的に言って本機(わたし)は今、途方に暮れていました。


 と言うのも、我が操縦者(マスター)である柊克也様に重度の異変が起きているからなのです。


「ああ‥‥貝に。貝になりたい‥‥いやもう、海に還りたい‥‥」


 ああ、お(いたわ)しや。


 最近血塗れに抵抗がなくなってきたとは言え、あの操縦者(マスター)がどうすればこんなに腐ったワカメのような有り様になると言うのか。


 そしてその責任の一端がこのベルゼにもある事を、少しだけ顧みなければなりません。


 事の発端は、数時間前に遡ります。






■ベルゼ:数時間前■


「あァ、ここにいやがった。探したぜ、柊」


 その日、我々が拠点にしている町外れの倉庫にやって来たのは紫藤イズナ氏率いる別働隊の面々でした。


「紫藤、あやのんも。遅かったね」


「予定通りだっつの。城出る時にこのぐれーになるって言ってあっただろォが」


 文句を言いながらも、イズナ氏はさも当然のようにテーブルの中央の席に腰を下ろします。その横で甲斐甲斐しくお茶を煎れ始めるのは同じ紫紺騎士団(パンキッシュ)小鳥遊(たかなし)そまり嬢。


 他の紫紺騎士団(パンキッシュ)メンバーはと言えば既に三々五々荷物を解いて倉庫内各所でくつろぎ始めていました。この方々の自由さはリーダーのイズナ氏の薫陶なんでしょうか。


「あー! わんこちゃんお久デス!!」


 錠前彩弥嬢は一目散に瀬之宮鍵音嬢と一緒に金狼の毛皮に全身を埋めて満喫していますが、概ねいつも通りの光景と言えるでしょう。


 操縦者(マスター)とイズナ氏は別行動中の情報を交換し、ここ数日が鍵音嬢の各方面の支援者へのお披露目で大わらわだった事や、教会の異端審問騎士団との戦闘があった事を説明しています。


「湖沼‥‥あの黒騎士野郎か。新カラーの専用機だぁ? 生意気な‥‥」


 イズナ氏が興味を持ったのは三枝八千枝改めローズマリー・ブラッドフィールドの生存と明確な敵対ではなく、湖沼ナツメの装着していた新しい強化装甲(パワードスーツ)に向いているようです。


「結局湖沼とはまともに戦ってないから、本当にベルゼと同じ系統の強化装甲(パワードスーツ)なのかはわからないけどね」


 操縦者(マスター)が自信なさそうに肩を竦めたのに対して、イズナ氏は無礼に鼻を鳴らして応えます。


「ンなのァ間違いなく同系機か、対柊用に特化して新造した専用機に間違いねェだろ。あの地底湖で手前ェ、あいつご自慢の巨人騎兵を完膚無きまでにブチのめしてるからな」


 イズナ氏はテーブルの上に盛られていたマフィンを一つ手に取ると豪快にかじり付きました。


「リベンジする気満々じゃねーか。くそッ、そんだけポンポン新型造れンならオレにも一機くれねーかなァ!」


 確かイズナ氏はハクが鹵獲した巨人騎兵を自分専用にカラーリングして占有しているはずなのですが、その事実は都合良く棚上げされているようです。


 一方、操縦者(マスター)の表情は優れません。


「‥‥ローズマリーと戦った時、本当にギリギリだったんだ。同じ学校組相手にあんなに追い込まれるなんて思わなかった」


「向こうは古代遺物(レリック)ってチートアイテム持ちなんだろ? そういう意味じゃ互角だったんじゃねェか?」


「そうかもね‥‥でも、湖沼も同格の強化装甲(パワードスーツ)を持ってきた‥‥次やって、勝てるのかな」


「なら、こっちもパワーアップすりゃいいだけだろ」


 イズナ氏はあっけらかん言い放ちます。操縦者(マスター)は目を瞬かせると、思わずと言った感じに苦笑しました。


「‥‥そうか、そうかもね。前だって、紫藤と初めて戦った後は特訓したり、武器揃えたりしたんだっけ」


「そォだぜ。紫紺騎士団(パンキッシュ)全員でかかってるっつーのに、変な狼やらオッサンやら騎士軍団やら増えてて焦ったっつーの」


 イズナ氏がそう言うと、2人は楽しげに笑い合います。


 まだ本機(わたし)操縦者(マスター)に出会う前の事ですね。その記憶に共感出来ないのは、少しだけ寂しく、羨ましい。


 本機(わたし)がそんな事を考えていると、イズナ氏は「あ、そうだそうだ」と言い出しました。


「ここ来る途中でお前の噂聞いたぜ。すっかり有名人だなァ」


 イズナ氏は人の悪そうな笑みをニヤニヤと浮かべています。


「‥‥そうなの? 何て?」


「デスブリンガーだってよ」


 随分大仰な字名(あざな)です。余程操縦者(マスター)に恐怖していると言う事でしょうか。


「何か大袈裟だねぇ。そんな大した事してないのに‥‥」


「いやぁ、オレはよく出来たネーミングだと思うぜェ?」


 照れ笑いする操縦者(マスター)とは対称的に、イズナ氏はまだニヤニヤ笑いを止めていません。


 その様子に操縦者(マスター)も怪訝そうに眉を顰めます。


死を招く者(デスブリンガー)‥‥ ()()()()‥‥」


「そォ、()()()()()。まーあの盾剣、セットで装備するとカニっぽいもんなァ!!」


 呆然と呟く操縦者(マスター)をよそにイズナ氏は高笑いしながら席を立ち、倉庫の外へと出て行きました。


「シオマネキ‥‥カニ‥‥はは、カニかぁ‥‥」


操縦者(マスター)、しっかりしてください。今のはイズナ氏の想像であって、実際の操縦者(マスター)の風評とは‥‥』


 しかし、これ以降本機(わたし)がどれだけ慰めの言葉を連ねても意気を取り戻す事はなかったのです。


 おのれ紫藤イズナ、許すまじ。強化装甲(パワードスーツ)が手に入れても奴にだけは回さずに“暴食“で消化してやりましょう。




 尚、操縦者(マスター)の精神的復帰までは数日を要しましたが、各地方の権力者と会合する内に「デスブリンガーだ‥‥」「死を招きか‥‥」という声を耳にして更に落ち込む事になりました。


 これは、“爪“以外の装備を新調しなければなりませんね‥‥。


「海に還りたい‥‥」

どうしてもこのネタは入れたかったのです‥‥。

ちなみにベルゼがやたら人間くさくなってるのはローズマリーの片足を喰ってる為です。

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