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箱庭世界のきぃと僕  作者: 越波
第3章 天馬白月国・ベルゼ編
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第47話 岐路の町2

「会えない?」


 目的地である町に到着してすぐの事。僕らは取る物も取りあえず、町長さんの館に出向く事にした。しかしそこで、思わぬ足止めを食ってしまっていたのだった。


 僕らに応対しているのは面長で金壺眼(かなつぼまなこ)の使用人頭と名乗る男だった。


「ご主人様はご病気です。どなたにもお会いになりません」


「その、僕らはプレイヤーなんですがチームに優れた治癒能力(skill)を持つ者がいるんです。是非、この町で治療の為の活動を行わせて頂きたいんですが‥‥」


「左様ですか」


 使用人頭はそう答えたが、


「申し訳ございませんが、私共では難しい事はわかりかねますので。また後日お越しください」


「その為に町長さんにお会いしたいんです。町長さんのご病気も治療出来ますから」


「ご主人様はご病気です。どなたにもお会いになりません」


 硬質な声でけんもほろろにシャットアウトされる。まるで機械を相手にしているみたいだ。


 どうすればいいか言葉に詰まっていると、エルフの長に小さく袖を引かれた。


「‥‥克也君、ここは引いた方がいい」


 引いてどうにかなるのか、と反論しようとして予想外に強い目の光りに言葉を飲み込んだ。


警告(caution)。周囲を囲まれています。即時の危険はありませんが、警戒すべき状況です』


 ベルゼが周辺マップを表示する。赤いマーカーが放射状に僕らを囲い込みかけていた。


 どうも思った以上にまずい状況のようだ。僕は使用人頭に辞去を告げて足早にその場を立ち去った。


 包囲しようと動いていた準敵性マーカーは、町長の館から十分離れた辺りで追ってこなくなった。


「‥‥警戒されてるね。館の中からも目の良さそうなのがこっちをずーっと覗いてたよ」


 エルフの長がやや固い表情で呟く。


 しかし、参った。初手からいきなり躓いてしまった。


「何をそんなに警戒してるんでしょう?」


「さてねぇ。元々人嫌いで臆病って人なのかもしれないけどね」


 エルフには多いんだよ、と長は笑って言う。僕を気づかってくれてるんだろう。


 まあともかく失敗した以上は仕方ない。待たせている他のメンバーの所に戻る事にしよう。






「あ、かっくん」


 しかし合流すべく町の出入り口に戻った僕らを待っていたのは更なる混迷だった。


 元々町に到着した時にもひと悶着あって、金狼が入れずに残っていたのだ。これは仕方がない。荒野でもこんなサイズのモンスターはそうそう出ないだろうし。


 と言う訳できぃと金狼が入り口に残っていたのだけれども、物見高い子供や大人がいつの間にか集まってしまったらしい。


「今度は、何処から出るかな~‥‥」


 きぃはどこからか調達した扇子で楽しげに地面を指す。するとそこから高々と細い水柱が立ち、観客がどよめいた。


 見る間に今度は開いた扇子の中央に水柱を移動し、ひらひらと揺り動かしながら水柱も動くのを披露。


 水芸じゃねーか。


 段々派手になるパフォーマンスに集まった人々が段々ノリ出し、拍手や笑い声が挙がるようになる。


 そして最後に噴水仕掛けのような華々しい水の演出と共にきぃが一礼すると、静かな町にそぐわない喝采と満場の拍手が鳴り響いた。


「何だ、アンタら大道芸の一座だったのか」


 門で金狼を見張っていた衛兵の男が随分と警戒を解いて笑っている。


 いや、大道芸なんて今日初めて言われたよ‥‥。僕はきぃのつむじを撫でる手に若干力を込めたが、彼女は眠そうな目のまま素知らぬ顔を決め込んでいる。


「まあ、そこのデッカい犬も大人しいし、芸を仕込んでるんだろ? 宿は無理だと思うが、使ってない倉庫があるからそこに泊まるといい」


 安くしとくよ、と衛兵は笑う。


『該当の建築物が1件。ただし、座標は町の囲いの外になります』


 なるほど、受け入れたように見せていて最後の一線は職務に忠実らしい。とは言え、便宜を図ってくれているだけマシなのかもしれない。


 そろそろ日も暮れる。僕らは衛兵の男の提案に乗り、倉庫に案内してもらう事にした。






「町長さん‥‥会えなかっ、た?」


 倉庫に着くと、早速作業要員で連れてきたノームと家妖精(シルキー)が寝床の構築を始める。そんな慌ただしい様子を後目に、きぃは金色の巨大毛皮クッションに悠々と寝そべっていた。


「ああ、門前払いだね。どうにかアポか紹介もらわないと厳しそうだなぁ」


 なまじ魔女さんの所がうまくいったから、話をするだけでこんなに足踏みするとは思わなかった。


 と言って伝手がある訳でもなく、僕は苦い吐息をついた。


 一方できぃは首を傾げたまま、唇に指を当てて考えている。


「ならもう、勝手に‥‥やっちゃう?」


「勝手に?」


 きぃの琥珀の瞳はどんな感情も映してはいなかった。料理の味付けに「塩がないなら醤油でもいいか」程度の思いつきのようだ。


「ん。今日の水芸も、治癒ミスト撒いてた、よ?」


 そう言えば、そうか。


 確かに、大道芸だと思われてるなら、それに便乗して町中を浄化して回ればいい。そうすれば実質的にこの町の攻略してるのと変わらない。


 後は、魔女さんの家と同じく疫病が入って来れないようにするのと、外で蓄積した病原菌を強力に浄化する風呂が作れれば攻略完了だ。


「‥‥やるか」


「うん、やろー」


 きぃが突き出した小さな握り拳に、自分の拳を軽く当てる。


 さて、そうなるときぃが芸で浄化して回る間、僕は防疫と施工出来る手段を調べて回るか。


「夕食の準備が出来ましたよー」


 家妖精(シルキー)の声に思考を中断する。まずは体を休めて、明日から動くとしよう。

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