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箱庭世界のきぃと僕  作者: 越波
第3章 天馬白月国・ベルゼ編
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第46話 岐路の町1

 古城でフリッツやハク達残留メンバーにpt稼ぎの実地調整と“病の王“の国家規模試練の事を説明し、各候補地と補給拠点の計画を打ち合わせて早数日。


 今度の旅にはきぃ率いる(実質には僕のだけど)直衛チームと、紫藤率いる斥候・遊撃チームで出る事になった。


 目的地はベルゼが候補に挙げてくれた交通の要所となる町だ。規模は余り大きくないが、この辺りを通る旧道と新道が交差していて、水場も近い。浄化と防疫が済めばいい拠点になるだろう。


「オレらはまず砦のオッサンに手形を発行してもらって、魔女の婆さんに土産を届けてからそっちに合流だったな」


 紫藤は証文の写しと、きぃから受け取った“浄化“の能力(skill)カードを確認するとストレージにしまった。


「悪いね。お使いさせちゃって」


 僕が詫びると、紫藤はシニカルな笑みを浮かべながら手を振ってみせる。


「なァに、オレらが先に町に着いても鍵音の嬢ちゃんじゃなきゃ浄化出来ねェからな。適材適所だ」


「そーそー、センパイ達はその分しっかり町をキレーにして待っててくださいネ!」


 あやのんは今回も紫藤と組んでいる。喧嘩が絶えないんで僕は少し心配したんだけど、きぃが推薦したので今の形に落ち着いた。2人からも異論はなかったので本当は馬が合うのかもしれない。


 まあ、その後ろで小鳥遊さんがやきもきしてるのがさっきから気になってしょうがないんだが。


 前回紫藤とあやのんだけで少し危険な目にあっていたので、今回は紫紺騎士団(パンキッシュ)からも数名随行している。ゴスパンクシスターの小鳥遊さんもその1人だ。


 だが、基本的にあちらの遊撃隊の戦力の要は、彼に任せてある。


 彼はまるでこちらの心の声が聞こえたかのようにタイミングよく振り返り、小さく頷いて見せた。


『任せておけ克也。私がいる限り、彼らに敵の刃が届く事はない』


 ハクはそう言って愛用のカイトシールドを掲げる。全く頼もしい限りだ。


 とは言うものの、きぃ直衛のこちらのチームは更に酷い。


「いい‥‥? 旅の間は、かっくんの言う事、聞かないとダメ‥‥だからね?」


 きぃを乗せて見るからに喜色満面と言うか喜色オーラ全開なのが、直衛チームの最大戦力・金狼わんこだった。


 既に余人が近寄れない程尻尾が振り回されている。この間荒野で襲われたスタンピードぐらいならあの尻尾で振り払えるんじゃないだろうか?


 本当はハクにはこちらに着いてもらって、遊撃隊は紫紺騎士団(パンキッシュ)の増員で乗り切る予定だったのだが、金狼がきぃから離れなかったのでやむなく編成を変えたのである。仕方ない。狼に言葉は通じない。


『今回の遠征では、拠点確保の他にも習得した能力(skill)と兵装の試運転を行いたいですね』


 ベルゼは古城の倉庫で吸収出来た資材にかなり満足している様子だが、僕としては金狼の行動が読めなさすぎて試運転の件は半分諦めていた。


 ただ、振り返ってみればこの時、何故金狼がきぃから離れなかったか僕はもう少し深く考えるべきだった。







 移動そのものは順調だった。


 古城に繋がる旧道を北上する事2日。前回は歩くのが遅いきぃのペースでの移動だったが、今回は放っておくと有頂天で駆け出す金狼に乗ってるので格段にペースが上がっていた。


「ああ、見えてきたね。あれがそうじゃないかい?」


 エルフの長が道の先を指差して明るい声を挙げる。どよめきが上がりみんな視線を向けたが、そこには何も見えない。段々訝しげな「‥‥?」という空気になる。


『エルフは森での狩猟の為に非常に優れた目と耳を持っています。地図情報と照合‥‥彼にはこう見えているはずです』


「え? ‥‥うわっ!」


 ベルゼの声と共に視界が切り替わり、遠くに滲んでいた景色が鮮明に見分けられるようになる。


 が、それは近場の見え方も劇的に変化する事を意味しており、僕は急に度の合わない眼鏡をかけたような目眩に堪えかねて両目を閉じた。


(やり過ぎだベルゼ‥‥僕の脳が処理しきれないぞ‥‥!)


 流石にやり過ぎたと反省したのか、ベルゼが謝りながらすぐに視界を戻す。恐々片目を開くと、いつも通りの見え方に戻っていた。


『申し訳ありません、操縦者(マスター)。これでいかがでしょうか?』


 言って、通常の視界の上に一部だけを拡大した補助ウィンドウを表示する。確かにそこには朧気に背の高い石造りの塔のようなものが見え始めていた。


「どうかしたのかい?」


 さっき僕が変な悲鳴を挙げたせいだろう。エルフの長がこちらの顔を覗き込んでくる。僕は若干まだ少し残る目眩に目蓋を抑えつつ苦笑で応えた。


「いえ、僕の強化装甲(パワードスーツ)の制御頭脳が視界を強化してくれたんですが、いきなり見え過ぎてビックリしちゃって。あの塔みたいな奴の事ですよね?」


「そうだよ。しかしそうか、我々には当たり前のように見えるが、君達には見えていなかったんだな。すまないね」


 エルフの長はドワーフさえ関わらなければ紳士でいい人なんだよな。彼は爽やかに微笑むと、道の先を指差しながら少しだけ町の建物らしき物が見えた事を一行に説明した。エルフの目の良さで先に見つけたという事も。今度は気兼ねなくみんな活気のある喜びの声を挙げた。


 さて、しかし塔か。今まで立ち寄った村や町には塔なんてなかったからな。何だろう? 町長の館とかかな。


『推察‥‥石造りで背の高い建物と言えば防衛の為の物見櫓や城壁、それに権威を示す為の建築物‥‥教会や領主の建物が一般的です』


 なるほど、そう言われると教会の鐘を吊した塔に見える。


『この地では大聖連国家という連盟国の繋がりを星辰教会という宗教組織が結び付けており、連盟国内全ての国で国教として定められています。高確率で星辰教会の建物でしょう』


 そう言えば、学校に来訪した獅子太陽国(ヒマタンポポ)の騎士団も、任務の正当性を示すのに星辰教会の勅許状を出してたな。


 宗教が世間的で微妙に忌避されるようになってしまった現代日本からの異世界渡航者としてはピンと来ないけれども、複数の国も含んだ超巨大コミュニティーなのは間違いないだろう。


 まあ、まずは町長さんに面会して治験の相談をしなきゃね。


 僕は森の魔女さんの笑顔を思い出しながら、この町の人々が元気を取り戻して喝采を挙げる姿を想像していた。


 きっと喜ぶだろうな。大勢いる町の人みんな。


 なんて、愚かしくも。


 僕は目の前の事しか見えていなかったのだ。

しばらく岐路の町での物語が続きます。

ちなみに古城の留守番は老執事カイとフリッツ君、ドワーフ老がやってます。戦力的にも十分、という布陣。

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