第3話 バグだと思ったらチートだった
『ラウンド2、ファイッ!』
校内アナウンスの声が第2ラウンドの開始を告げる。
今更だけど多分これ音声サンプリングした合成音声だよね。異世界トリップした生徒にしては運営(神様?)に都合良すぎるし。
さて、僕も本気を出そうかな。
とは言え勝敗が満足ゲージじゃあなぁ。それに自分の能力も試したいし。
「なぁ、きぃ。その水着対戦始まる前から着てた訳じゃないよな? それって僕にも着せられる?」
「‥‥かっくん、初女装がスク水とか、マジないわ‥‥」
「お前の発想がないわ」
変な妄想で勝手にドン引きするきぃを説き伏せて、海パンに着替えさせてもらう。
きぃが空中に何やらコンソールパネルっぽいものを表示させて操作すると僕の制服が眩く輝き、次の瞬間僕はレオタードのようなスクール水着に変態していた。
「くぁpstBら;./kpstふj!!?」
やべぇ、動転し過ぎてどうやって声出したかわかんねぇ‥‥。
とにかく僕は完全にパニクって湯船に飛び込みながら自分の変態的なスクール水着姿を隠そうと必死だった。
だが残念ながら湯気が仕事をしない!
僕は10の精神的ダメージを負った!
「あははははは!!かっくん似合う似合う!!」
きぃが僕の痴態を指差して笑う。
僕は100の精神的ダメージを負った!!
もう、もう止めてくれ‥‥何だよこれ。どんなに引っ張っても脱げないし‥‥。生地を伸ばすと変なブザー音と一緒に「ハラスメント警告」と書かれたウィンドウみたいなのが生地と素肌の間に表示されて脱げなくなる。
「えっちぃのは、禁止した」
お前の仕業か‥‥。
パシャリと音が鳴り、顔を上げるときぃが端末らしきもので僕のうなだれたスク水姿を撮影している所だった。
「記念に、いちまい?」
首を傾げながら真顔で言う事か。
僕はブチ切れた。
「ぬあぁらぁぁぁぁ!!」
風呂場の隅に立てかけてあったデッキブラシを掴む。
僕の怒りに応えて、デッキブラシの穂先(?)が赤々とした炎を吹き上げた。
「これでも食らえぇぇ!!」
燃え盛るデッキブラシが唸りを挙げる!!
ブブーッ
しかしデッキブラシは見えない壁に遮られた。
「バイオレンス警告」
またあのウィンドウだ。
「このステージは、きぃのステージ。暴力、禁止」
そんなバカな。そんな格闘ゲームあるはずがない。と言うか、あっていいはずがない。
「勝敗条件は“先に満足する事”。暴力とかえっちぃの禁止。いかにきぃのイヤガラセに我慢しつつ満足するか、ゲーム‥‥」
鬼か。
また、きぃの端末がパシャリとフラッシュを焚く。
後で見た所、そこには湯煙の中燃え盛るデッキブラシを構えて苦悶する紛う事なき変態の姿があった。
当然ながら、満足ゲージは0からピクリとも動かず僕はきぃに完敗した。
二度とこいつとは戦わないと、僕は堅く心に誓った。