第0話 空中楼閣の銀湯姫
投稿練習中‥‥。
ちょこちょこ改訂します。
水平線を赤く染めながら、遂に太陽は没しようとしていた。振り向けば東の空には早々と星の帳が降りてきている。
カポーン
「はふう~~~‥‥」
気の抜けるような、しかしながら心からの満充足を感じさせる声が、一面に立ち込める湯煙に響いた。
身じろぎに合わせて水音が立つ。
湯煙の中に微かに現れたのは白磁もかくやと思わせる程にたおやかな、華奢な娘の腕だった。
その指先が湯気に包まれた宙をついつい、となぞる。
と、触れられた湯気が淡い光を放った。
いや、違う。
それは虚空に表示されたコンソールパネルだった。
“天候モニター:快晴・微風“
「これで、よし‥‥」
声の主が呟いて僅かな間、緩やかな風が湯気を払う。
そこにあったのは一面の湯殿だった。落ち着いたアジア風の木造建築の三方が開放されて、外からの風を迎え入れている。
湯船の先に広がるのは端から端までスケール感が狂いそうな群青の大パノラマ。島の陰ひとつ映らない、空と海だけが描く神秘のキャンバスだった。
西に太陽の残照が今や消えゆかんと水面を濃い朱に染め、東からは煌びやかな星々と紫紺の銀河が空を染め。
「まさに‥‥極・楽‥‥♪」
ただ独り、この異境の空中楼閣の絶景湯を堪能しつつ、銀髪の少女は頬を染めて至福の吐息をついた。
時に元号改めて銀誓5年。
これは、幾多の世界と国々、人の相争う世を平らげた覇王にして勇者、魔王にしてアイドル、瀬之宮鍵音が世を席巻するまでの物語である。