怪
怪
感覚が狂ってきた。ぼんやりと頭の中がゆがむみたいだ。
読書をしながら、私は青りんごを齧っていた。
味もせず、すごくぱさぱさしておいしくない。
壁に凭れながら膝にかけた毛布を引き寄せる。
食べる気すら失せ、皿を奥へ押しやると次のページをめくる。
今読んでいる本は怪物のお話。まぁ、ファンタジーというべきか。
『ワタシは壊すために生まれたノダ。そう気付かせたのはお前ら……』
可愛そうな怪物を演出する文章は、標的を次々に倒していく文章になっていった。
こんなのリアルにいたら大変だなぁ。
さらにアンドロイドまで出てくる始末。すごい突っ込んでいくなぁこの話。
なんでもキャラクターを入れていけばいいってものじゃないのだけれど、
読み進めていくにつれ、どんどんキャラが増えたり死んだり…。
読むのに疲れる話かもしれない。
ヘリが仲間にモールス信号を送る。
『I、C、H、I、G、O、U、K、I、T、S、U、I、R、A、K、U、S、U』
「一号機、墜落す……」
口に出して読み上げてやっと文が分かった。
あぁ、眠たい。
目をハッとして開いた。
寝ていたのかな……。
変な体勢をとっていたからか、首や肩が痛い。
それにしても、いつの間に私はベッドにもぐっていたのだろう。
伸びをすると、地響き。
「………ん??」
なんだなんだ。外だ。
玄関を開けて覗くと、火の粉と煙。
黒々しい煙の中から炎がちらりちらりと跳ねている。
「どう………な、え?」
塀の下を見ると、金属の塊が変な具合に曲がって絡まるように落ちている。
隣の人も、マンションの住人もだいたいの人は窓や扉から顔を出している。
「ヘリ………?」
さっき読んでいた小説を思い出す。
「『ヘ、リ……墜落…………す。』……」
夢だったというの?小説を読んでいたことが。
マンションの下だけじゃない。
ほかの建物からも煙が上がって、崩壊した建物が遠くに見える。
エレベーターや階段の方から怒号が聞こえる。
あぁ、ここもダメなのか。
屋上の方を身を乗り出して見ると、煙。壁の破片や塵が降ってくる。
ヘリの落ちた方から粉塵が舞う。
あぁ、向こうの建物が倒れてくる!
今更逃げても間に合わない。
階段まで200m、向こうの落ちてくる速度は尋常じゃない。
証拠に土煙のごとく何かが目の前をふさいで見えなくなった。
「誰か!!」
聞こえるはずなどない。すでに逃げる姿をいくつも目の端でとらえていた。
私は手遅れだ!
と思ったが、ぎりぎりのところで向こうの建物はこちらに届かず、地響きと何かの破片や塊が飛んできただけだった。
心臓が破裂しそうなくらい、呼吸ができないくらい死ぬかと思った。
奇跡だ。
しかし目の前の光景は、夢じゃない。
もうやめてくれ………。夢だって言ってくれ。
嘘だと言って。こっちが嘘なはずなんだ。ウソじゃなきゃいけない。
誰か。
瞬きも呼吸も忘れ、そこからは一切覚えていない。
目覚めたとき、小説を読んでいた時のように壁に凭れていた。
……首や肩が痛い。