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  作者: 欅いらくさ
6/10

はは


トラックの事故から、まだ一日たっただけ。

さすがに私は、恐怖とあのグロテスクな光景で、ショックを受けているようだ。


ピロロロロ、ピロロロロロロ・・・


と電話が鳴り響いた。

あぁ、お母さんの電話番号だ。

事件はテレビでも報道されてたからそのせいかな。

なんて思いながら受話器を耳に当てた。

「もしもし・・・」

『もしもしぃ?奏美かなみ?』

「えぇ。母さん。どうしたの」

母の声を聴きながら、電話越しに聞こえる車の行きかう音。

『いやねぇ、あんたの近所で事故起きたっていうじゃない』

「起きたね」

『まぁたそうやって、あんたは他人事のように』

「だって、死んだの、私じゃないし」

我ながら最低な言葉。

まぁこんなもんだ。私なんぞ。

『そうだけどぅ・・・。まったく。ケガとかないならそれでいいんだけどね』

「うん。ありがと。平気」

正直母は苦手だ。

得意も苦手もあるかって話になるだろうけれど、

親戚とか友達とかにある苦手意識のようなものが、私にはある。

自分の自己満足ばっかりでうんざり。

かく言う私も、自己満足ばっかりなのだろうけれど。

『あんた、いい加減に結婚しなさいね。もう二十歳はたちすぎてるんだから』

「わかってる。うん」

そういえばつい最近、24になったばかりだなぁ。

このご時世、18や20で結婚してる友達もいる。

私は彼氏はできたことのあるものの、あまり長くは続かなかった。

『私は28で結婚したんだから、あんたも早くね。恥かかせるんじゃない』

ほらでた。

「うん・・・自分のペースで行くよ。じゃないとなかなかね」

『それはそうだけど、そんなこと言ってたら困るんだから!』


何を話しに来たんだ。結局。


『あぁ、そうだ。事故の件とか平気ならまあいいわ。本題はここから』

「ん?」

『私、お父さんと離婚するわ。もう次の相手はいるから安心してね』

「はぁ?!」

・・・何言ってんだこの母親!

また勝手に進んでいく。

『まぁ、そういうことだから、挨拶あいさつのハガキとか送ってきなさいね。ちゃんとそういう常識は持ちなさい。恥かきたくないからね』

「……恥、か」

『じゃあ、母さん、これから忙しいからごめんね』

切れる。

いつもいつも身勝手だった。

話もせず、ことを終えてから言ってくる。

私が高校へ行っている時も、私がバイトをしているから、という理由でいつの間にか仕事を辞めていた。

そのお金もすべて巻き上げられる始末。

溜めた貯金も母の高い日用品へ消える。

あぁ、もううんざり!消えてしまいたい!

恥をかきたくない?こっちのセリフだ!

「・・・」

ため息すら出ない。

ベッドの上に腰を下ろして、天井を見上げた。

みんなの母親って、みんなこんなもんじゃないんだろうなぁ。

仕事をして、もしくは家事をして。

深く考えなければ存在すら当たり前になるが、

居なくてはいけないような、そんな大切な暖かいものなんだろうか。

お父さんを考えると、ぽっかりと隙間が空いた気がして、切なくなった。

眠れば夢。

夢は現実に。

そんな最近の精神事情で、張り詰めていた息はさらに詰められた。

鎖骨さこつの間から裏返ってしまいそうな気分だ。


ピロロロロ、ピロロロロロロ・・・


はっと目が覚めた。

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