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  作者: 欅いらくさ
5/10

まばたき


腰を下ろして、ココアのカップをじっと見た。

ここのところ、不思議なことばかりだ。

夢を見れば体や現実に、本当に影響する。

飛び降り自殺や手首にできたあと・・・。

それ以外に、ほんの少しの居眠りでの夢でさえも影響する。

「ふぅん・・・」

湯気ゆげを感じながら、一息。

深く腰をえていたせいで、少々痛くなってきた。

買い物がてら、外へ出てみよう。

最近外の空気を、しっかり吸えていなかったからかもしれない。

なんて考えて、財布と買う物のメモを取り、かばんを持って出る。

あ、鍵を忘れるところだった。

「鍵、鍵、か・・・」

家に違和感。

外に出て、すぐ戻ったのに何か変だ。

空気が変わったというのだろうか。

そういえば今日の夢は、なんだっけ。

猫が出てきた気が・・・。


にゃあん


「あら」

下を見ると、猫が足元に居た。

「あらら、はいっちゃだめだめ!」

ここは動物禁止だ。

まして私は猫アレルギー。

接触するにできない…。

気は進まないが、足で押しやるように外に出した。

背中で扉を閉めながら、遠ざける。

「ほらほら、あっち行きなさい。ここは禁止なんだから」

猫は可愛くて大好きだが、申し訳ない。

さっさと階段を目指す。

エスカレーターもなく、ただ建て替えと増設のマンション。

このマンションはなんて不便だ。

音楽プレーヤーを再生させると、ギャップがあるだろうがパンク。

軽快な出だしからいきなりのデスボイス。

最高!

テンションは難なく上がり、鼻歌でも歌いだしそうなくらい。

ついつい歩く脚もリズムを取りそうだ。

不意に、横断歩道で止まった時に後ろをちらと見た。

数分歩いた道の先には、マンション。

そして、猫。

ついてきている。

どことなくこの猫からは遠ざかりたくて、

胸の内がかき乱される不安がわいてきた。

三毛猫のような、虎猫のような、不思議な模様だが、

見たところ、まばたきすらしないその仕草に、不安が隠せない。

じっと私を見て、近づいてくる。

横断歩道の信号はまだ赤。

車もない。

人もいない。

余計に不安だ。

「んん」

ただの猫だ。気にする必要もない。

耳に入っていなかった曲が、一気にもぐりこんで不安は消えていく。

やがて、短髪で活発的な雰囲気をかもし出した、

見覚えある女性が向こう側に立ち止まった。

なんだ、気にしすぎじゃないか。

やっぱり不安を持つ必要なんて―――――。


夢を思い出した。


女性には見覚えがあると思っていたが、そうだ。夢の。

頭の中で考えるに考えるが、さすがにこんなに人気ひとけがないのだ。

『あんなこと』起きるはずはない。

見た夢では、

今の状況があったが、多少車が止まっていた。

車のいない現実とはわけが違う。

そして、問題はトラック。

トラックがこの後来るはずなのだ。

だけれどきっと来ない。ただの夢なのだから。

猫が横断歩道へ出る。

「あ・・・」

奴はあざけるように、私を一瞥いちべつしてすたすたと行く。

だめだ。

夢の通りに猫が現れた。

先ほどの猫、そうだったんだ。

猫が出てきて、トラックが来て・・・。

「あぁ」

女性が横を見たとき声を出した。

トラック。

トラックだ。

だめだ、だめだだめだだめだ!

止まれ、止まれ、止まって・・・!

女性がこちらへ、いや、猫に向かって手を伸ばし走り出す。

「止まって!!」

女性がびくっとして立ち止まると、近くを歩いて来た女性が

なりふり構わず全速力で走り出す。

速い。

脚力には自信があるようだ。

行ける。


きっと。


だめだ!


ほんの一瞬の出来事で、女性は止まったものの、別の女性が。

しかも・・・。

服や背格好は先の女性と違えど、夢と全く同じ。

トラックは、猫を目前にした女性をつぶした。

ジジジジジジと、嫌な音を引きずって、逃げていく。

本当に一瞬ともいえる時間。

無造作にも、血と砂利じゃりまみれになったモノが残る。

なんだ。なんだなんだなんだ。

一体、もう、どうして。

どうして、こう、考えたのに!

変えられない!!

夢のはずなのだが、どうしてもその通りになる。

正夢にすぎるだろう!

正夢と違う何かを感じ、夢を変えようとムキになっていた私は茫然ぼうぜんとした。

耳に戻ってきたのは、パンクなんかじゃない。

生き残った猫の声と、女性の絶叫。

「あぁ。あぁああ・・・」

腰を抜かして、膝をついてしまった。

そのまま座り込む。

考えたのに。

変えれるはずだったのに。

「あの!救急車!ここ、ここは、ここ、あの、ここの住所わかりますか?!」

正気に戻った女性が病院に電話している。

だめだ、声が出ない。

「………あ。ぁれ」

唯一、人差し指で電柱の住所を指すことができた。

「あ、はい!えっとですね………」

女性の声すら遠のく。

座り込んだ私に、撫でにもらいに来たのか、猫がすり寄る。

瞬きすらしない、猫だった。


ハッと気づいた時には、猫と女性。

パトカー。偶然来て、警官に道を指示される車。

そしてそして、トラックがいた。夢のまんま。


「あぁ・・・」

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