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  作者: 欅いらくさ
3/10


玄関先に出る。

ここのマンションは結構高くて、

へいがあっても隣のビルが見えるだけだ。

もちろん下を覗けば見えるのは地面。

大きな道路で、車通りも多い。

コップにホットココアを入れて外に出たが、

この分だとすぐに冷えてしまいそうだ。

扉前の冷たく硬い塀に寄りかかり、一口。

「あぁ…。甘い」

チョコはちゃんと牛乳と混ざってくれたようで、とてもまろやかだ。

湯気が眼鏡を曇らせて、吹いた冷たい風でぼやけた視界は元に戻る。

肘をついていた塀の下をちらりとのぞいた。

赤いかたまり

夢で見た何かを思い出した気がした。

溶け残った固形のチョコレートが、噛みしめたときにパリッといった。

確かに見たものだ。

夢で見てしまったものだ。

起きてしばらくは忘れたものだ。

屋上から落ちていく人、屋上で見ていた人。

「ま、正夢まさゆめっ」

目を丸くして、私はあやうくココアのカップを投げ出しそうになった。

部屋に一回戻ろう。

あれは確かに夢だったはずだ。

絶対、夢だった……。

「もしもし、えと、その、○丁目○○マンションの桜井です」

気づけば電話を手にしていて、耳から聞こえる応答にこたえていた。

もう、赤くててかてかした何か。

すごく生々しかったそれは、現実だって物語っていたようだ。


しばらくしてチャイムが鳴った。

「はい。。。桜井です。はい、あ、はい…」

まず救急車も呼んだが、さすが車通りが多いだけあってなかなかこない。

あぁ、警察はなかなか納得してくれない。

しっかり寝起きだってことも説明したし

そこで見つけたってことも伝えたのに。

ちゃんと理解してくれなかった。

屋上で手紙も何も見つからず、靴だけが見つかった。

屋上の重い扉だけが開かれていたようで、誰かが来た痕跡こんせきはあるそうだ。

話を聞かれ疲れてか、帰ってから再び眠ってしまった。

ご飯は、食べる気はしない。

あぁ、すごく眠たいの。

ホットチョコレートを飲んだ後、青リンゴを切ったものを食べた。

変な食べ合わせをしたのに、眠気は飛ばず、うとうととやがて眠りについた。

最近、眠たいこと多いなぁ。

気づけば寝てしまっている。

疲れてるのかな?

そこまで疲れることはしていないのだけれど。

そういえば、朝カップを洗っているときに鏡を見たら、

私の瞳はどこかうつろだった気がする。

自分の目で見ても、とても。

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