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幸せの在り処  作者: 松田
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小学生の頃の私はよく笑う子どもだった。

毎日毎日これでもかというくらいに私は笑っていて、学校では変人扱いされていた。

一度教室内で笑いが起きれば私は一人でいつまでも笑い続け、その姿を見てさらに笑われるような子どもであり、私はそれが嫌だった。恥ずかしかったのだ。

次は笑わないようにしようと何度も我慢して見ようとはしたが一度も成功はなく、耐えきれなくなって笑ってしまう。

ならば笑いを早く止めようと思い皆が静まったところでグッと押さえ込んでみたり、笑い始めで一気に笑いきってしまおうとしたりいろいろと試してみたが結局何一つ成功することはなく、かなり苛立っていた。

そんな私も家では全く笑わない子どもでいられた。

夏休みや冬休み、春休みが自分を変えるチャンスと思い何度も笑わない練習をしたがそれも無意味だった。結局家と学校では違うのだと納得することで、私は自分を許した。

なぜ学校ではひどく笑ってしまうのに家では笑わないのか、自分でもそうとう不思議だったが、家で笑わない分を学校で笑っているんじゃないかと真剣に考えたこともある。

家でも学校でも内容のレベルに大した差はない。

要するにくだらないのだ。

それに気づいてからは学校で笑ってしまうことが余計に嫌になり、ストレスとしてのしかかった。

目を釣り上げて、口角を下げ、なかなか笑いそうもない顔を作っても笑ってしまう。そんなことが嫌で嫌でたまらなかった。

しかし笑わないための術を持たない私は結局笑ってしまうのである。

私は悔しくて、最後は意地でも笑わないようにと構えるしかなかった。

思い出せ、よく考えてみろ。くだらないことじゃないか。

そう言い聞かせるしかなかった。

だから、言い聞かせた。

みんなが笑っている中で一人。そんなことを自分に言い聞かせていた。

すると不思議と笑わずにいられた。笑わずに、笑いの中をやりきれた。波にのまれずに切り抜けられたのだ。

私はそれから何度もそれを試し、より精度を上げていった。

さらにその中でもっと簡単に笑わずにいられる方法が見つかりもした。

それは自分にしか聞こえない音量でくだらないと呟くことで、やってることはあっさりしすぎているが案外効くもので、私はほんの一瞬で笑わない状態を作れた。

そうなると周りが笑っているのに自分だけ笑っていない光景が見え、それを見ると周りの人間より一歩進んだような気がして気分が良かった。

自分だけが優れている。唯一そう感じられる瞬間だった。そして、なんだか自分が嫌な人間になっていくのも微かに感じていた。

それを身に付けて初めてのバレンタインにチョコレートを貰ったことで私の中で万能性を高めるきっかけになったこともあった。

六年生になっても、続けた。やはりクラスの皆が笑っている中で一人笑わずにいられるというのは気分が良かった。

しかし、中には嫌なことを言う奴もいたのだ。

全校集会に行く時に突然なにをかっこつけてるんだ?と訪ねてきた男がいた。

私はとっさにかっこつけてないといいおどけて見せたが、そんなことを言われてなんだか途端に恥ずかしくなってしまった。

おどけたらいいのか、笑わずにいたらいいのか。

それから私はいつまでも、卒業しても悩むことになってしまった。

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