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漆黒平和団  作者: 霜降雨
1章 私たちは漆黒平和団
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こびとの行進

「したっぱを倒す・・・?」

まつりがサヤカの話に声を漏らす。

練習から次の日、わりと早くそれっぽいものがでてきた。

まだ私は一発かすったかかすってないかの境界線の力なのに・・・けれどそういう思いも次の一言でかき消される。

「もう敵が侵略しにきているのよ」

敵が侵略している・・・それだけでも危機感を感じた、私だけじゃなく皆も。

「したっぱってなんすか?」

義和が聞くと、うーんと考えてるような様子をしたサザンカが話し始めた。

「したっぱか~なんていうか、主にこびとみたいなもの?」

こびとと聞いて、あの童話にでてくるたくさんのこびとみたいなものを思い出した、ああいう感じのこびとは空想の中の話だけだと思っていた。

「こびとって、あの・・・」

「いや、そうとは限らないわ」

私はその事を話した、しかし最後まで言う前にかき消されてしまう。

時間は一刻一刻と私たちを削ってくる、それを私たちは薄々感知していた。

「もう・・・ぐだぐだ長話・・・する・・・時間・・・じゃない・・・」

シオンが影でこそこそと喋る。

「・・・そうかもしれないね、よし!出撃!」

サザンカがいきなり声を荒げて拳を振り上げた。

いきなりの反応に皆周りを見渡すぐらいしか出来なかった、31人の生徒がこの状況に混乱しないわけがない。

「ちょサザンカさーん!?いきなりすぎてワケが!!」

大きく声をあげた大河に皆が便乗し始める、いや、だってまだ戦闘がどうこうとか知らないのに実戦なんて・・・。

「習うより慣れよ精神だよ!」

サザンカはそう言い放つと他のところへ行ってしまった、私たちの引きとめも聞かずに。

「とりあえず実戦で何とかするわ・・・早く出陣よ!」

「まってまだ心の準備が!・・・」

「団長の命令は絶対よ」

私が叫ぶと大声にも怯まず、淡々とサヤカさんは返した・・・確実に私たちに向かって。

団長の威圧は凄まじく、野次が止まるほどだった。

そしてシオンのいる方向、外へ出るために扉に近い勇人から不器用にしまってある班ごとの武器をとり、順にここから姿を消していった。

気付かぬうちにさっきまで私たちがいた場所はサヤカさんとシオンさんだけになった。

「少々無理やりだったかもしれないけど・・・」

「いや、べつにサヤカが気にすることじゃないよ、それより早くしないと」

二人分の足音が聞こえた後、広いこの部屋が更に広さを増した。


「ひゃーーーー気持ちいーーーー!!!!!」

叶が私に話しかけてきた、風の抵抗をまったく受けずに自由に飛び回る皆の姿が私の目に映っている。

とかいう私も飛んでいる!!!空を飛ぶなんて絵本の世界だけかと思ってたけど、空を飛ぶのがこんなに気持ちいいなんて!!!でも空がこんなに黒ずんでなかったら・・・もっとよかったかも。

「ちょっとみんな!のんきに飛んでる場合じゃないよ!!!」

サザンカがその様子を見て慌てた様な様子を見せた、脳内に直接声が入る・・・。

「まあ、シオン特製の羽のように軽くて飛べちゃう外套と超クリアな音声を届ける通信機つきの帽子の魅力には取り付かれるよねー」

あの最初に配られた一枚の布は空を飛べる羽に、帽子は安心を少しだけだが与えるものとなった。

「なんだよーその名前ー」

秦田が少々笑いながら返した。

しかし、その陽気とした雰囲気はすぐに終わってしまった、それは香の発言からだった。

「んー、気のせいかと思うけど、なんかあそこ明るいような・・・」

皆が一応確認できるぐらいの暗さの中ぼやーっと見える白いたくさん行列、私も見えた。

「ほんとだね、なんなんだろ」

清子も光に向かって顔を近づけた、光はどんどん明るさを増して・・・。

「ちょっと危ない!!!!」

サザンカが二人に向かって強い声を出した、光は明るさを増しすぎて・・・輝いた!それだけじゃなく、綺麗に並んだ光の弾が、私たちをすっぽりと囲ってしまった。

さらに、のぞいていた二人の顔に向かって光が襲い掛かった!

「ひゃっ!!!!あぶないよ!!」

幸い二人に怪我は無かったがいきなりの攻撃に腰を抜かしている様子だった。

「っまさかこれが・・・したっぱ?」

香がサザンカに問う。

「そうに決まってるじゃん!明らかにこれはしたっぱだよ!」

いきなりのしたっぱの登場、これには皆が驚き慌てた、見た感じ・・・1人2人・・・単純に数えたら日が暮れそうなくらいの数だった。

「よし!指揮長である私も本気を出すよ!みんな、一斉攻撃ーーー!!!!!!!」

サザンカが声を張り上げて私たちに指揮をした・・・え?一斉攻撃?

どういうことが分からずに私たちが思う「一斉攻撃」を始めた。

だからぶっつけ本番は無理なんだって!!!と心の中で思いながら弓を乱射した。

いろんな班がバラバラになり攻撃を仕掛ける。

「ったた!!!義和!方向ぐらい確認しろ!!!」

「クソ方正!!!!まだ一回も弾かすって無いくせによく言うよなぁ?」

一部では喧嘩起きてるし・・・大波乱だなぁ。

まあ皆危険を無視した攻撃が酷いし一人ぐらい怪我を負いそう、雫班の棒みたいなものが辺りに散りばめられている、したっぱのたいまつが熱い。

でも、悪いことだけじゃない。

「ありゃ、練習のときのようにやってるけど・・・」

広架は大河のほうを見ながら呟いた、なんせ大河はたぶん練習のときの周りに影響が出るような鞭の振り方をしているが逆に実戦のときはこっちの方がいいらしい、それによりしたっぱの首が弾け飛び闇に消えていく、少々気持ち悪い。

なんだかんだいって私たちの傷からわかるように残りのしたっぱが数匹になっていた。

私は息を整え少々軽い弓を手にしたっぱへと向かっていった。

「ってあぶない!!!!!!!」

サザンカさんの声で私は足を掴まれた、その次に見た景色は闇の中でまぶしく輝く閃光。

それと同時に爆音と波動っぽい風が私たちを押しのけていった。

したっぱの断末魔が小さいながらも聞こえた。

その景色を一瞬目に焼き付けた後、徐々に闇が広がっていった、明らかにこれは爆弾の爆発だ・・・。

「あ・・・まじごめん、安全確認忘れた」

竜生が呆然としたまま謝罪した。

もう・・・死に掛けたよ・・・。


「お疲れ様!もうこの辺のしたっぱはいなくなったと思うよ!突然で焦ったと思うけどご苦労さん!今日の任務はこれにて!!!!」

サザンカさんの声が私たちの脳内に大きく聞こえる。

結局矢は一本も当たらなかったけれど、まあこれでいいだろうと息を落ち着かせた。

ただ私は無意識に声を大きくして喋った。


「あー!!! 疲れたよー!!!!」

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