ボロアパートに潜む白い悪魔
最近不吉な音がする。夜中俺が寝ていると、天井裏からミシミシと音がす
るのだ。
ミシミシミシミシ
今日もまた、築数十年の木造アパートの一室で眠る――俺の睡眠を邪魔す
る音がしてきた。
ミシミシミシミシミシミシ
台所によく現れる触覚の長い黒い虫の事を「黒い悪魔」と呼ぶやつが、た
まにいるが――このアパートに潜んでいるのは「白い悪魔」だ。
ミシミシミシミシミシミシミシミシ
危ない、白い悪魔の侵略が始まってもう数ヶ月になる。夜中にここまで大
きな音がするのは三日前から――そろそろヤバイかもしれない。
ミシミシミシミシミシミシミシミシミシミシミシ……ミシッ……
俺は即座に起き上がると、部屋の窓を開け――外に向かってハリウッドダ
イブした。
俺が外に飛び出した瞬間。轟音とともにアパートが崩れ落ち、粉々になっ
た。
俺はアパートの木材の破片から、白い悪魔の大群が一斉に逃げ出して行く
のを見てから、俺はアパートの大家に電話をかけた。
「もしもし、楠田ですけど――ええ、とうとう崩れましたよ。だから言った
じゃないですか、シロアリ駆除を早く頼んでくれって」