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DOG RUN  作者: 鮫島あーろん
七・一七争乱篇
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聖戦サンダーボルト

4.聖戦サンダーボルト




銃声が鳴り響いていた。



とある廃ビル。麻薬密売シンジケートの武装グループと駆逐部隊(シェパード)の攻防は激しさを増していた。




《こちら07‐A2。3階の制圧を完了した。こちらの損害0、敵は死者1名、投降及び拿捕が5名だ。人質の安否は不明。4階突入の許可を》




黒い隊服に身を包み、左肩には「07

」の腕章を着けた男。



シェパード虎の子部隊、セブンスブラックの隊員だ。



その目付きは鋭く、よく日焼けした肌は鋼鉄を思わせる光沢があった。



《安否不明!?ううーんそれは困りましたねー》



無線の向こうからは少し間の抜けた女性の声。



《我々としては人質の保護を最優先にすべきなのだけどー、この交戦状態じゃ人質が生かされてる保証は無いかもですねー》




《・・・クソ、突入をしくじらなければこのようなことには》



《過ぎたことを悔いても仕方ないのですよー。今は一刻も早くここを制圧するのが生き残ってるかも知れない人質救出の最善手です》



軍人にしてはあまりに穏やかな口ぶり、しかし男の上官であるらしい女性は男に命令を下す。




《戸惑う理由は無いのです。突入、ゴーなのです!》



その瞬間、耳をつんざく爆発音が上の階層から上がり、次いで何者かの悲鳴が聞こえてきた。




「突入だ」



男は同僚に呼び掛けると、意識を集中し駆け出した。




「全ては“征“義。<征服征伐征討征圧>!」




能力発動の「鍵」となる言葉を叫ぶと、男の脳内に秘められた心象風景がその力が、この世界に形をなしていく。




それは紫電。



迸る稲妻。



何万ボルトもの高圧電流が男の掌の中、世界で一番危険な産声を上げる。



階段を勢いよく駆け上がり、5階に突入すると、そこには地獄が広がっていた。




先ほどの爆発はここで起こったらしい。




爆風によって室内は大破、蹂躙されており、そこら中に武装グループと思しき死体と、小さな子供から老人まで、一般人の死体――肉塊としか呼べないほど無残に損壊した死体もある――が、転がっていた。




「どういう事だ」



立ちこめる血と硝煙の臭いに思わず顔をしかめながら、隊員の一人が呟く。



様々な死線を潜り抜けてきた隊員達の頭は、この地獄においても不自然なほど冷静に働いた。




「味方までも・・・事故か?それとも造反者が出たのか?」




その時、フロアの反対側から女性の悲鳴が。



物陰から飛び出した武装グループの生き残りの一人が、同じく爆風を免れた人質の女性を脇に抱えて、脱兎の如く隣の部屋に走り、逃げる。




「追うぞ」




号令一下、部隊は素早く駆けて追う。



慎重に。かつ迅速に。



感応系の想能力持ち隊員から、間断なく送られるサインを高速で処理しつつ突入態勢を整える。



その間、わずか4秒。




「動くな」




一斉に覆面と人質がいる部屋に突入した。




突入した。のだが――





ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!




悲劇は瞬きさえする間もなく、男たちの前に現れた。



「アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャァァ!」




轟く銃声。



部屋へと足を踏み入れた瞬間。覆面の悪魔はその銃口を床に投げ出された人質の女に向け、引き金を引いた。




「アヒャッフ、アヒャヒャ、ヒヤアアアッハアアアアァァ!!」



奇声を上げる覆面。女の悲鳴はマシンガンの駆動音でかき消され、体は降り注ぐ弾丸によって凌辱され尽くされる。




「・・・ハァ、終わりだ」




弾を出し尽くした覆面は銃を足元に落とし、両手を上げた。




「投降だ。降参。とっとと連れてけや番犬さんよぉ」



覆面は吐き捨てるように言った。




「いやお前ら強いわ。負けだ負け。さっき下爆破したの俺だから。これで俺らは壊滅。俺らがやったことも全部自白してやっからほら、早く連れてけ」




覆面の口元がニヤリと笑う。




「ったく連中もバカだ。戦っても殺されるのがオチなのによ。だったら死刑も無い訳だし、降参して捕まった方が良いに決まってら。3食食えるし、情報提供でもすりゃ減刑もあるんだ。・・・そもそもこいつらがいけねーんだこいつが」




覆面は床に転がる女の遺体を蹴った。



「こいつも俺らの顧客だったんだぜ。それをベラベラと。クズが。いい気味だざまあ見やがれってんだアハ、アヒャヒャヒャヒャ――」




その刹那。



覆面の体に青い稲妻が走った。



「ンガッ、んだ、動けね――」




覆面は床に膝立ちに崩れ落ちる。



稲妻の主。『セブンスブラック』のエースと呼ばれたその男が、前へと歩み出る。




「動くな」




右手の電流が輝きを増す。



雷光に浮かび上がったその顔は怒りに満ちていた。




「が、ガガッ、た、たす、たすけ」



覆面の歯がガチガチと鳴る。電流による痺れか、はたまた恐怖によるものか。




「外道、歯を食いしばれェェェ!!」



勢いよく繰り出された男の拳は、高圧電流を纏ったまま覆面の側頭部を撃ち抜いた。




糸が切れたように覆面は倒れた。脳漿ノウショウの焼ける臭いがした。




男の放った雷拳は覆面の頭を真っ黒に焦がしていた。




「・・・午後3時2分、武装グループの構成員1名と交戦、これを殺害す」




男が手を下ろすと、電流は止まった。




制圧された廃ビルを整理し、記録するのは探索隊(レトリバー)検知隊(シュナウザー)の仕事だ。



仕事を終えた駆逐隊(シェパード)隊員達は黙々と武器や機材を片付け撤収作業に移る。



その中を抜け出して、男は無線に耳をあてた。




《お疲れ様なのです。今回は犠牲も多かったですがとりあえず制圧成功、ビルの外に被害は一切出ず最小限の仕事は果たしてくれましたです。今日はゆっくり休んで――》




「最低限?」



男が呟く。




《千々(チヂワ)司令、俺の今月の給金は全部引いておいてくれ》



《え!?何でですかあなたはよくやってくれましたそれに先月だって――》




「・・・全てに正義を通さねば意味が無いんだ」




男は左の拳を固く握り締めた。掌には血が滲んでいた。



無線を切り男は荷物を担ぎ、最後に戦場を一瞥する。



その眼は濁りなく、強く鋭い決意の光で満ちていた。



駆逐隊第7中隊「セブンスブラック」






男の名は、世鬼征介(セイキ セイスケ)といった。




—次章に続く―




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