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少年1
一年前、今の義母に拾われた。
自分のことは何も、覚えていなかった。
セカイのことなどについては、かなり知っていたが。
拾ってくれた人には、同じ年頃の少女…メリアがいた。
夫はいるのか、と聞いたことがあるが…その人は寂しそうに笑って何も言わなかった。
その人達は俺を家族にしてくれた。
自分のことを何一つ、覚えていない俺を…。
"家族"…何か、忘れているような気がする。
何か、いや…。
誰か、を待っている気がするんだ。
誰か、を信じている気がするんだ。
誰かを迎えに、行きたいとどこかで思っているんだ。
俺は…一体、誰なのだろう。