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プロローグ 「無関心少年」

【パラレルワールド】

皆さんは知っているだろうか。

私たちの生活している現実とは違う未来をたどっているもう一つの現実

そんな世界なんて無いと思っている人が多いと思う。

果たしてそれは本当に架空の存在なのだろうか……


 今日も代わり映えのないつまらない一日が過ぎていく。

 なんにも役に立たない勉強をし、形だけの友だちと話をし、味のしないコンビニで買ったパンを食べ、今日も色のない学校から一人帰ってきた。

 帰ると言っても一人だけの時間を過ごせる場所ではなく、がやがやと幼い子供が騒いでいる孤児院へ帰るのだ。

 俺は幼い頃、「友楽園」の前に「天羽久遠」と書かれた紙が添えられて捨てられていたそうだ。 

 友楽園は俺が住んでいる霧丘町で唯一の児童養護施設なので、多分俺の両親がここなら俺を面倒みてくれるだろうと考えたのだろう。

 どんな理由があったとしても俺は両親が自分を捨てたことに腹を立てることはない。

 なぜなら、俺はもう生きることが楽しいと感じなくなっていたからだ。

 この世の中で幸せを見出すことなどできないと俺はもう諦めている。

 俺は、周りの流れに身を任せ影から見ている傍観者でいることを自ら望んだ。

 学校から10分くらい歩いていつも見慣れた友楽園についた。

 古くてちょっとガタがきているところもあるが、別に食べて寝ることさえできればいいのだから別に気にしない。

 少し開きの悪いドアを開いて中に入った瞬間

 「こらー久遠!また掃除してないでしょー!さっさとしておきなさいよ。」

 威勢のいい声が響いてきた。

 この人は、理沙おばさんっていって友楽園にいる子供たちの母親代わりみたいな存在でみんな理沙おばさんを慕っている。

 俺が心を許す数少ない人の一人でもある。

 「分かってるよ。玄関の掃除くらいぱっぱと後でやっとくよ。」

 とふてくされながら言い放ちすぐに自分の部屋に行こうとすると

 「あ、そうだ。瑠璃ちゃんがあなたの部屋で待ってるわよ。」

 「は?なんで瑠璃がいるんだよ。」

 「なんか、あなたに会いたがって10分前くらいに訪ねてきたから私がまってていいわよっていって入れてあげたのよ。」

 「分かった分かった。」

 理沙おばさんなに余計ことしてるんだよと俺は心の中で思った。

 なぜなら、瑠璃中学の時の同級生で元はいい奴なんだが少し変わりものだからだ。

 昔からUFOだの地底空洞説だのミステリーな事件や儀式みたいなのが好きで良く俺に話してきていた。

 俺はそんなに興味がなかったからいつも話半分に聞いていたけど。

 瑠璃はなぜか俺のことを気遣って1週間に一回は俺に会いにきてオカルトじみた話を俺に聞かせて帰っていく。

 気がついたら俺の習慣の1つになっていた。

 今日はまた、何を聞かせてくるのだろうかと考えながら部屋に入るとショートカットの髪型をした瑠璃がクッションに座ってぼーっとしていた。

 「もう、遅いよー」

 「ってまだきて10分待ってないだろ」

 「バレちゃった?

 と、いつものおちゃらけな瑠璃の正確に翻弄されながら俺はいつものように瑠璃に言った。

 「今日は俺はなんの話を聞かされるんだ。エイリアンか?ツチノコか?」

 「それは前に言ったじゃない。」

 「今日は、不思議な世界の話をするわ。」

 「不思議な世界?」

 「そう、パラレルワールドって知ってる?」

 「知らないけどそれってなんなんだ?」

 「パラレルワールドって言うのは今私たちが存在しているこの現実世界の他に並行して存在しているもう一つの現実世界のことなの。」

 「ふーん」

 俺はいつものように軽く聞き流して聞いていた。

 「でね、そのパラレルワールドの一つに鏡面世界っていうのがあるんだって。」

 「鏡面世界?」

 俺は聞いたことのないオカルト話だったので少し気になってきた。

 「で、その鏡面世界っていうのはどんな世界なんだ?」

 「噂によると、その名のとおり鏡みたいに全てこの世界と逆の世界ってことらしいんだよね。」

 「すべて逆って言うと?」

 「例えば、頭の悪い人間が鏡面世界なら頭が良い人間、運動神経がいい人間なら運動神経の悪い人間みたいらしいよ。」

 「ふーん。で、その鏡面世界とやらに行く手段とかあるの?」

 「それは、良くわかってないんだけど噂によると多くの人を映し出してきた鏡に六芒星を今までの人生を振り返りながら朝の4時44分に指で描くと鏡面世界に行けるらしいよ。」

 「それだけでいいのかよ。」

 思ったよりも簡単にいけると聞いて俺は鼻で笑ってしまった。

 「まあ、噂だからね。そんなに信憑性はないかもね。」

 「じゃあ、そろそろ私塾だから帰るね。また来週来るからねー。」

 そう言うと瑠璃は手を振りながら俺の部屋から出ていった。

 「結局またくだらない話だった。眠いしもう寝ちまうかな。」

 俺は、ベッドに横になり目を閉じた。

 

 「……ん?」

 俺は気がついたら寝ていたようだ。

 口の中が無性に乾いている。

 「水でも飲んでくるか。」

 まだ眠かったけど目をこすりながら共用の洗面台に向かった。

 「そういえば、瑠璃が言ってた鏡面世界の行く方法試してみるかな。」

 俺は本気にはしていなかったが時計は4時40分を指していたし暇つぶしにもなるだろうと思ったからでもある。

 それと、この薄汚れて見える世界から抜け出せるならこれもいいなとおれは思っていた。

 「えーっと4時44分に人を映してきた鏡の前で人生を振り返りながら六芒星を指で描くだったっけかな。」

 この鏡はここの子供たちをたくさん移してきたと思うから多分鏡はいいだろう。

 「あとは人生を振り返りながら六芒星を描くだけか。」

 俺は今までの人生を振り返ってみた。

 ゆっくりと六芒星を描きながら…

 「俺はこの汚れた世界から抜け出したい!」

 最後の1画を書き終わったとき時計の針は4時44分を指していた。

 

 「あれ…」

 目を開けてみるとなんにも変わったところはなさそうだった。

 「やっぱり今回もはずれだったのか。」

 俺は何事もなかったかのように部屋に戻った。


 これが俺の人生の転機だったとも知らずに……

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