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第2話
「余も、歳をとった」
静かに、しかし確固たる語り口である。
老人が老王のすぐ前に、静かに立ったままで自説を拝聴していた。
「数多の戦に身を投じ、数多の戦で勝利を収めてきた余であったが、ついぞ訪れる歳という時の流れには勝てぬ。いや、言わずともわかっておる。そなたがその一番近くで見てきてくれていたことも知っておる」
何かを言おうとしている老人を手で制し、老王が続けた。
「ツファイ・カーヴァイルの谷の戦い、あの時はまさに死ぬかと思った。若かれし頃の最大の危機と言っても過言ではない。谷におる蛮族を谷底で切って捨て、切って捨てをしているうちに伴走せし騎兵はおらず、兵士も少なくなり、そして余とそなた、それにごく数人のみの兵のみが生き残った。だが、それでも余は蛮族を滅ぼした」
満足そうに、ふぅとため息をつく。
「あの時はとても痛快であった。山々の稜線からは数多くの矢が射かけられ、それゆえに余の愛馬も命を落とした。今もあの谷で眠っておる。ツファイ伯爵はそのためにあそこに砦を築き、それゆえにあそこを守り通してもらって居る」




