『隠れずきんと六色のプレスマン』
あるところに、俺は絶対に狐に化かされたりなどしないと自慢しているじいさまがあった。ある日山へ行くと、一匹の狐がいて、手ぬぐいをかぶって前を見詰めたり、自分の背中をなでたりしていた。じいさまは、狐が何かしているなと思って見ていると、美しい姉様になって、じいさまを見つけると、どこへお出でです、などと話しかけてきた。じいさまは、姉様が狐だとわかっているので、何やらおかしくて、お前はどこの姉様だい、と尋ねると、これから町へ行きますと答えた。じいさまは、意地悪して、町へ行くのはいいが、そのしっぽは何だい、と尋ねると、狐は降参して、ばれてしまっては仕方がない、といって、隠れずきんという宝物をくれた。使い方を尋ねると、ずきんをかぶるだけで、姿が見えなくなるのだと教えてくれた。かわりに握り飯をくれと言うので、くれてやると、喜んで走っていった。
次の日、じいさまは、町へ出てずきんをかぶり、姿が見えなくなったところで文房具屋に入り、六色のプレスマンを全部持って、試し書き用の紙に速記っぽい文字を書いていたところ、ほかの客が、気味悪がって騒いだので、店の主がプレスマンをめがけて棒を振り回したところ、じいさまの手に当たって、大いに痛い目に遭ったのだという。
教訓:六色のプレスマンを全部持って速記をするのは、きっと楽しい。




