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ナンジャモンジャ  作者: 藤堂慎人
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馴染みの店 2

 それ以来、この店には今まで以上の頻度で訪れることが多くなり、マスターともいろいろ話をするようになった。マスターは40歳を超えており、いろいろな客とも話をしているので、仕事のことでの愚痴なども聞いてくれる。康子の視点とは別の角度からの話も聞くことができ、いろいろな意味で私の心のオアシスになっていった。


 そういう中でのある日、私は1人でこの店を訪れた。だからこの日はカウンターに座った。


「あれ、今日は1人? まさか喧嘩したんじゃないよね」


「いえいえ、違います」


「会社で何かあった?」


「そう、じゃあ、彼女に言えない悩み? 良かったら話を聞くよ」


 常連になることで、この店のマスターはいろいろな人生相談を受けることがあるという。


「実は僕と彼女、付き合い始めてもう1年近くになるんです。最近はそばにいて当たり前という感じになっていて、いない時間が辛い、と感じるようになっているんです」


「本気なんだ。そういう気持ちになっているんだったら、結婚することだね」


 マスターはズバリ言った。そういう言葉を聞きたくて相談したようなところもあったが、こんなにはっきり言われると清々しい。


「こういうことは男から言うべきだ。あなたもその気持ちが本当なら、はっきり言った方が良い」


「でも、自分の気持ちと彼女の気持ちの温度差があったら、と考えてしまうんです。友達、恋人までならともかく、一生の伴侶となると別という意識でいたら、告白することで会えなくなるかもしれません。そうなると立ち直れないという精神状態なんです」


「うーん。・・・でも、このままでも悶々とした気持ちを引きずるだけでしょう。ものごとにはそれが心の重しになる、ということもある。もし、雨宮さんが本気でプロポーズしたいと考えているなら、私も何かできることをやらせてもらう。2人のことはとても素敵なカップルだと思っているし、共に幸せになるように祈っている。だから、自分の意思をはっきりさせてよ。そこから次のことが始まるから・・・」


 マスターの言葉で、これまではっきりしていなかったことが明確になった。


「ありがとうございます。これから家に帰ってしっかり考えてきます。でも、今の話で大方は決まりました。きちんと気持ちを整理してきますので、また相談に乗ってください」


「もちろん良いよ。後悔しないようにしてね。俺から見て、彼女のほうもきっと雨宮さんに気持ちが傾いている。後はあなたがはっきり話をし、彼女を引っ張るんだ。多分、雨宮さんの告白を待っていると思うよ」


 マスターの言葉を聞き、私は家路についた。



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