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ナンジャモンジャ  作者: 藤堂慎人
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馴染みの店 1

 神代植物公園を案内してもらった後、私たちはよく会うようになった。自然に親しくなっていったが、三鷹には井の頭公園もある。ドラマなどでもよく舞台になるところなので、その雰囲気の良さは理解していた。近くには吉祥寺があり、お茶したり食事したりする時の店探しには事欠かなかった。


 いつも深大寺や井の頭公園、吉祥寺というわけではなかったが、デートの場所は同じようなところになった。馴染みの喫茶店もできた。そこマスターとも親しくなり、訪れる度に会話を交わすようになった。


「いつもありがとうございます。お似合いのお2人、良い感じですね」


 マスターが言った。これまで会釈やあいさつ程度だったが、褒められた感じの言葉で全身がムズムズ感じた。康子も嬉しいような恥ずかしいような顔をしている。あまり見たことがないようなその表情に、新しい面を垣間見た感じだったが、マスターはそこからさらに言葉を続けた。


「お2人は恋人同士? それとも若夫婦かな? とっても仲が良い2人に見えて、こちらまで微笑ましくなりますよ。これまでお越しになった後、スタッフともとても感じが良いお客様ということでお話ししているんですよ。女性の方がコーヒーを運んだ時やお冷を入れたような時、いつもニコッとされ、『ありがとうございます』とおっしゃる様子がとても優しく感じ、私たちの間ではちょっと話題になっているんですよ」


 私と康子はその話を聞いて顔を見合わせた。


「ありがとうございます。僕たちのことをそういう風に見られていたんですね。嬉しいです。そういえば僕たち、これまで喧嘩一つしたことがないんです。他愛の話をしながらの時間はとっても心が休まり、会社でのモヤモヤはすぐに解消しています。そんな人が彼女なんです」


「それはそれは・・・。大変良い話をお聞きしました」


 マスターはその後、私たちにケーキを持ってきた。


「これは私からお2人にプレゼントさせていただきます。良いお話を伺ったお礼です」


 私たちは再び顔を見合わせた。


「そんな・・・。いただけませんよ。ちゃんと伝票に記載して下さい」


「いやいや、それでは押し売りみたいじゃないですか。これは私の好意として召し上がってください」


 しばらく考えた私たちは、マスターの好意を素直に受けることにした。


「ありがとうございます」


「いえいえ、私もお2人の時間を割って入ったようで、申し訳ありませんでした。ゆっくりお過ごしください」


 マスターの心遣いに2人とも嬉しくなり、この日はいつも以上に話が盛り上がった。



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