表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ナンジャモンジャ  作者: 藤堂慎人
3/26

思い出の深大寺 3

 お参りの後、本堂の右に植えてあるナンジャモンジャの木のほうに行った。私と康子が初めて出会ったところだ。


「何も変わっていないな。変わったのは俺だけか・・・」


 6年前、私がその木の前に立ち、説明が記された文章を読んでいる時、思わずつぶやいた言葉がある。


「ナンジャモンジャってなんじゃ?」


 私にはダジャレなんか言うつもりはなかった。だが、その名前が面白くして、つい呟いたのだ。


 その時、大きな声ではなかったが、後ろから笑い声が聞こえた。振り向くと康子が口を押えて笑っていた。


 私は恥ずかしくなり、顔が真っ赤になったことを覚えている。


「ごめんなさい。馬鹿にしたわけじゃないの。おやじギャグのような感じだったけど、まじめに言うあなたの様子がおかしくて・・・。本当にごめんなさい」


 そういう康子に私は何も言えず、そのまま黙ってしまった。康子も一礼してその場を後にした。


 私はしばらくその場に立っていたが、時間にしてはわずかだ。不思議と私の心の中では爽やかな風が吹いていた。康子の白いワンピースのイメージが余計にそのように感じさせていたのかもしれない。私はそのわずかな時間に先ほどのシーンを何度も反芻していた。


 同じ場所に立ち、その頃のことを思い出していたが、すぐに現実に引き戻された。どこを見ても康子はいなかったのだ。


 ふと腕時計を見た。時計の針は昼時を指していた。昼食をと思い、2度目に康子と出会った蕎麦屋に行こうと思った。もしかすると、また康子との思い出と会えるかもしれない、という気持ちからだ。


 山門を降りてすぐ右にある蕎麦屋があるが、私は久しぶりにその店に入った。


 店の窓からは池が見える。その様子から水面に立っているのではと錯覚するくらいだ。店内にも小さな池があり、鯉が泳いでいる。このことも昔と変わらない光景だ。


 この店には1階と2階があるが、迷わず1階のほうに行った。そして、窓際のテーブルに座った。そこが思い出の席だったからだ。


 4人席だが、私1人で座った。でも、頭の中には目の前に座っている康子がいだ。2人で食事した時を思い出した。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ