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ナンジャモンジャ  作者: 藤堂慎人
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康子、感染 5

 康子の感染が分かってから5日経った。これまで私に症状は出ていない。その点では気持ちは楽だ。でも、一方では私も感染していれば康子と同じ病院に入院できるのではないかとか、気持ちが共有できるのでは、という思いもある。


 そういうこともあり、検査を受けるなら康子が入院している病院でと考えた。もちろん、外出時にはできる限りの感染防止を考え、新宿行の電車に乗った。いつもの出勤時間とは異なることはあるが、乗っている人は少ない。そして、全員がマスクをしている。中には咳をしている人もおり、そういう様子がこれまで以上に気にかかる。


「この車内で感染したら嫌だな。もしそうなったら康子が帰ってきた時、余計な心配をかけることになる。家族の心配をするのは自分だけで十分だ」


 そう思いながら乗っている内に新宿に着いた。歩いている人を見てもマスクをしているばかりだ。どこも変わらない。唯一マスクを外せるのは自宅ぐらいだ。これまでは同じような状況であっても意識しなかったことがやけに気になる。やはり人間はその環境によって感じることも違ってくるのだ、ということを改めて実感した。


 そう思いながら歩いていると病院に着いた。


 受付に検査で訪れた旨を告げると、すぐに呼びだされた。なるべく院内に待機させないように素早く検査を行なおうという様子が伝わった。検査自体、鼻や喉から粘液を綿棒で採取するということだったこともあり、時間はかからなかった。


 再び受付を訪れ、検査結果についての連絡を尋ねることになったが、併せて康子のこと尋ねた。


 しかし、答えは先日電話で聞いたことと同じだった。対面で、しかも家族が訪れたなら少しは対応が違うのでないかとの期待もあったが、見事に打ち砕かれた。


 私は気持ちが折れたまま帰宅することになった。


 どこかに立ち寄ることも無く、自宅に着いたが夕方、病院から電話があった。


「雨宮です。もう結果が出たんですか?」


「いいえ、結果は明日になります。残念なお知らせなのですが、奥様が先ほどお亡くなりになりました。ご遺体はこちらで荼毘に付し、お骨をお引き取りいただくことになります」


 私はその言葉に節句した。


「・・・えっ?」


 目の前が真っ白になる、真っ暗になるなどの表現すらもできないほどのショックだったのだ。私が何か言う前に電話が切られたが、耳に受話器を当てたまま動きが止まった。



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