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ナンジャモンジャ  作者: 藤堂慎人
14/26

康子、感染 2

 私も途中、少し横になったが、すぐ目が覚める。時計を見て、一定時間が経っていたら康子が寝ている部屋に行き、シートを換えていた。熱がシートに伝わっている様子が手で分かる。早く夜が明け、病院に行けるように時計ばかりを見ていた。


 朝日が部屋の中に入ってきた。私にとっては長い夜になった。康子の様子を見ていると昨晩とあまり変わりはない。その様子を見て、やはり昨日、相談窓口に電話して、救急車を手配してもらった方が良かったのでは、という後悔の念が湧いてきた。


 となると、判断は一択だ。仕事を休むことにした。私は9時になると、会社に電話した。


「もしもし、雨宮です。急で申し訳ありませんが、妻が高熱をだし、一人では動けそうにありませんので、今日、これから病院に連れて行こうと思っています。今日はお休みさせてください」


「うーん、分かりました。今、コロナのこともありますので、もしものことがあればご連絡ください。お大事に」


「ありがとうございます。ご迷惑をおかけいたしますが、よろしくお願いいたします」


 仕事のほうはこれで大丈夫になったので、後は康子の病院だ。私はすぐに都の相談センターに連絡をした。


 すぐに担当者が電話に出て、症状を聞かれた。検査したわけではないので、コロナ感染の疑いは拭えない。発熱外来を受診し、感染の有無を診断してもらうことが大切だ。近くで診てもらえる病院を紹介してもらった。


「立てる?」


 私は康子に尋ねた。気丈に「大丈夫」と言っていたが足元はふらつくし、呼吸も荒い。これでは歩くのもままならないし、こういう状態ならタクシーを呼ぶにも迷惑が掛かる。


「救急車を呼ぼう」


 その言葉に再び康子が反対したが、様子を見る限り、自分で病院に行くのは無理と判断した。


「今日は僕の言うことを聞きなさい」


 いつもになく強めの口調で言った。もちろん、心配した上でのことだ。怒っているわけではない。私の様子に康子は従った。


 救急車を要請するために電話したが、時期的に少し時間がかかると言われた。


「ごめん。到着まで少し時間がかかるそうだ。やっぱり、昨日の内に救急車を手配すれば良かった。ごめん」


「いいの。私が止めたんだから。大丈夫よ。私の名前には健康の『康』がついているんですから心配していないわ」


 咳をしながら無理して笑顔を作り、私に必要以上の心配をさせまいとしている。その心が分かるだけに余計に胸が苦しくなった。



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