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ナンジャモンジャ  作者: 藤堂慎人
10/26

みんなで祝ってくれた

 プロポーズからほどなく、私たちは式を挙げた。


 新居は荻窪にした。康子の実家の三鷹にも近いし、私の職場にも近い。2LDKの間取りは新婚家庭にはちょうど良い。家族が増えればまた考えるとし、しばらくは新婚生活を満喫しようと話し合っていた。


 結婚前、デートとの時には康子の手作り弁当をいただくことがあったので、料理の腕前は知っている。しかし、一緒に暮らし始めてからの康子の料理は手が込んでいて、美味しさも格別だ。


 手作りのスイーツも絶品で、デザートとして毎回供される。クッキーなど焼き菓子も作るが、あえて余計に作り、それをお世話になったマスターの店に持って行くこともある。もちろん、常連さんの分もある。私たちはいろいろな人のお世話になった上で一緒になれたと思っているので、恩返しをしているつもりだったのだ。


 結婚して2ヶ月くらい経った時、店でパーティーをやろうということになった。名目は私たちの新婚生活をお祝いしたいということだった。康子の手作りスイーツが店でも評判なようで、そのお礼を兼ねて常連さんのほうからの話だった。私たちのほうから改めてお礼を言いたかったので、もちろん出席させていただく旨を伝えた。


 パーティー当日、私たちは約束の時間に訪れた。しかし、そこには私たち以外全員集まっており、私たちは拍手を持って迎え入れられた。わざと時間をずらして伝え、今回の演出が考えられていたのだ。


「私たちは結婚式に参加していなかったので、今日は2回目の披露宴の気分で楽しんで」


 常連の一人でプロポーズの時以来、よく話すようになった高梨からの言葉だ。私より10歳くらい年上で、今日は奥さんとも一緒だ。


「初めまして。家内です。主人から伺っていた通り、とても初々しくて素敵なご夫婦ですね。私たちも昔を思い出しました。今日は楽しんでください」


 その言葉にすぐには何も返せなかった私たちだったが、雰囲気で察してくれた。


「ありがとうございます。私たちのために・・・。何と言っていいか分かりませんが今、幸せですし、これからも幸せになっていきます」


 康子が言った。私はその言葉を聞いた後、マスターのところに行った。


「いろいろ料理が並んでいますが、会費は?」


「嫌だなあ、雨宮さん。さっきも今日のことは披露宴のつもりで、ということで常連さんたちが企画したんです。主賓のお二人は招待されたことになっているのでいりません」


 私が会費を心配したのは用意された料理などが豪華で経費が掛かっていることがすぐに分かったからだ。しかし、マスターの話の通り、私が支払おうとしても断られた。私は康子に相談した。


「どうしよう。こんなことやってもらって・・・。申し訳ないよ」


「・・・うーん、私も考えている。でも、今日何かしようとしても多分受け取っていただけないと思うから、何か別のカタチでお返しし、今日は有難く皆さんのお気持ちをいただくことにしましょう」


 康子の言葉はみんな聞いており、拍手が起こった。


 私たちはいろいろな人から声を掛けられ、終始和やかに楽しい時間が過ぎた。


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