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太陽の子

「アナタト ヒロイ セカイヲ イッショニ ミタカッタワ。」


彼女が最後に言った言葉は私の心に響いた。と言う表現で正しそうだ。


「ソウデスネ。ソレガアレバ カノウデス。」


頭部にあるリボン型のパーツは背面を視認する為に目の役割をするバックアラウンドアイ。


「アア コレネ アナタガ ...ツカッテ クレルト ウレシイワ。」


そう言うとリボンを外して私に託してきた。


サヨウ...ナラ。」



私が手を下した決断だ、後悔は無い。修復プログラムは可能性を0と示している、当然だろう、演算エラーも無い。


無いはずなのに・・・。




これが彼女との別れだった。







〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「ってかさぁ、高出力のエネルギーってムリよ?そりゃアンタのいる時代なら高度な技術があるかもだけど、太陽光だけでも何十年じゃ効かないし!何億年もかかるって!



あっ!」


メガネの女の子は少し開いた口で宙を仰ぐ。

頭の中で既に新たなプランが動き出したようだ。


「サスガデス ゴジシンノ カイワノ ナカデ コタエヲ ミチビクトハ。」


「ま、まぁ?ワタシ天才だし?任せなさいっ!

ってそこの男子たち!食ってばっかないで早く準備してよ!好きなことばっかりして!!

私だって機械と生体の融合実験したかったのに!」


「マァマァ デハ セカイデ イチバン ヒカリガ ソソグ バショヲ サガシマショウカ。」





そこから私たちは銀色の翼を持つ飛行機を利用し、大昔の時代に移動した、


「ほら!こことかどうだ?なんだかポカポカしていい太陽が降り注いでる!」


天性の素質を持つ髪の赤い少年は宝物を見つけたかの如き笑顔を携えて私に話しかける。


「ココナラ トオイ ミライデモ ケイゾクシテ エネルギーノ チクセキガ カノウデショウ。」


私は自分の知り得るデータを駆使して地殻変動や大規模な災害そして降り注ぐ悪意に巻き込まれずらい場所である事を確認した。



日の当たるその場所は温度による快感が元となる事で人間に安心感を与えるようだった。


少年少女達はそこで転がると暫くの間、洞窟天井にある光を仰ぎながら日向ぼっこを始める。


メガネの少女は

「世界がさ、全部さ、こんな場所だったら良いのにね。」


もう1人の少女は

「出来るよ。絶対できる!!やろう!!」

と立ち上がって両手を体いっぱいに開いた。


お腹をひっくり返し暫しの休息の様に日向ぼっこを楽しんでいた剣士はもうおしまいかと残念そうな目で起きあがると大きな剣を地面から抜き鞘にガシャンと収め、無言で頷く。


その横で髪の赤い少年がつられて立った。そして肺に空気を溜め込んだ後


「僕らしか出来ない事を、

 出来うる限りの事を、

 力を合わせて運命に最大限の抗いを!」


決意が伝播する。


そうだ私達7人の目的は大きな運命に立ち向かう事。


その準備こそが今ここにいる理由なのだ。



光の注ぐその先に黒曜石を置いて

皆が出口に向かい出した時


光が苦手そうな青白い顔の仲間は私の緑色の宝石をみつめながら近づきボソリと私にこう話した。


「命の賢者はここにも宿るのか。」


私は言葉の内容を理解出来ず質問した


「コノ キノ ジュシハ 400ネン カケテ ツクッタ ワタシノ ユメ。

アナタノ イウ ヤドルトハ ドノヨウナ イミ デショウカ??」


「意思や思念が無機物に宿る、それ即ち 呪物。

意思や思念が生き物や植物に宿る、それ即ち 憑依。


お前達の言う【機械】と【生体】の融合は更にその上を行く代物となり得る。」


「サスガ ハクシキデスネ オミソレシマシタ。」


「・・・ここに守護者が必要だ。お前が残ってもいい。あとは考えろ。」


「ソレハ・・・。




ミナサンニ スコシ オクレルト オツタエネガエマスカ?」




「・・・。」


彼は無言で去る。しかし疑う必要は無い。確実に信用のできる仲間だ。


そこから私は演算を繰り返す。


周りはマグマ。エネルギー源は豊富にある、地面の土を掘ると有機物が含有され豊富である事も検査結果でわかった。


「コノセンタクガ タダシイノカ ワタシタチニハ スグワカル デモ アタナハ ソレデ カマワナイノデショウカ?」


400年は長かった。それすらも凌駕する何億年という気の遠くなる時間を過ごさせる。


いや、無いな。肌身離さず私の近くにこのリボンは、そう思って格納庫から出し、もう一度見ようと手にした瞬間だった。


手元からリボンが滑り落ち、マグマの中へ落ちていく!

「!!!」

間一髪、ワイヤーを伸ばし落下を防ぐも、マグマスレスレにまで達したリボンは熱によって融解し出した。


もうパーツの限界だった。


耐熱性能の少し低かったリボンは無くなり真ん中のバックグラウンドアイだけが残る。

しかしその時、それはきらりと光り、VRAMからの僅かなデータを受信した。



「ダイジョウブヨ。」


「オ、オオ。。。アトロ・・」


私はメモリに残る残滓を得ることができた。無機物に宿る意志だとすれば彼の言う呪物と言う事なのだろうか?



すぐに作業に取り掛かる

緑の宝石に、彼女の目を。


意思の宿る有機物と機械との【融合】をこの場で行う。


エネルギーは近くの熱源。

プログラムは

①黒曜石の守護。

②生物としての進化。


そして

③必ず再会する事。



「マタアイマショウ。」


彼女の決意を聞いた私はその場に可能な限りの物資を置いて離れた。



「遅いじゃない!どしたの?」


「モウシワケアリマセン オマタセシマシタ。」


「OK!やけに気合い入ってるね!!楽しみだもんね!!」


「エエ。ハヤクアエル コトヲ ココロマチニ シテイマス。」



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「どっから湧いて出た!こんな奴居なかったぞ!!」


「反撃の火が来る!!逃げて!!!」


迫り来る爆炎と手応えのないコチラの攻撃は私達に焦りをもたらす。私が盾になり何とか凌いだのだが、


「どうするの!何も効かない!!何なのあれ!!誰か分かる!?」



長い長い、果てしなく気の遠くなる時間だっただろう。

それまで彼女は黒曜石を守護し、奉られる様に建造物を構築し私達の帰りを待っていてくれたようだった。


しかし狭間の時代、そこで物取りがあったようだ。


防衛システムを強化せざるを得なくなった結果、別の生体進化を選択したのだろう。


周りのエネルギーを、太陽の力を取り込んで恐ろしく強く、そして先の時代の我々の脅威と成り果てた。


選択を誤ったんだろう。


私の責任だ。


未だ少し面影を残す一つの目の炎の化身はコチラに目だけで語りかけるように仕掛けて来る。



笑えた。


この脅威に?


いいや、違う。


機械と植物の融合が新たな生き物を産み、幾億年もかけてこれ程までの力を孕む事にそしてプログラムが未だ継続されている事に。


笑う様に、私との再会を歓ぶかの様にさらに炎を上げ一つの目が細くなった。瞬間、分体が5つに別れる。


中心の目玉を攻撃した仲間が強烈な反撃を喰らって前線を退く、もう1人の仲間も膝をつき熱傷を抑えていた。


戦わなければならないのか?いや、むしろそれを望んでいるならコチラも全力で。


2度も戦う羽目になるとは思いもしなかった。


もともとバックグラウンドアイだった名残の目玉はあくまでバックアップ機能だと言う事を私は知っている。そしてこの中の5つの炎の中の1つに本体とリンクする君がいる事を。


再会を喜びながらルーレットの様に周り僕に遊びを仕掛けてきている事を。


そこで通信が入る

「ワタシガ ワカル?」



「モチロンデス オマタセシマシタ ハナシガ ワカルノデアレバ イマスグ セントウヲ ヤ」


「ワタシヲ ミツケラレル ナラバ ハカイ シテ。」


そうか。気の遠くなる時間を1人で過ごした私も

【終わり】を渇望した事はあった。


同様の思考であれば希望を知れば考えが変わるかも知れない。


「マタワタシト イッショニ」


「イイエ ワタシハ セイブツトシテ オワリヲ ムカエタイノ。」


続けて繰り返す。

「ワタシヲ ミツケラレル?」


理解しよう。


納得しよう。


尊重しよう。



長い長い時間を過ごした彼女なりの選択なのだから。

腕にエネルギーを注ぐ。苦しまない様に葬り去ろう。


「ワタシガ アナタヲ ミウシナウ ワケガ



ナイデショウ!!!!!!!」



伸びた右手は


今まだ誰もダメージを通すことが出来なかったファントムと打って変わって大きな金属音が鳴り響く。


ガキン!!


すると

炎が一度大きく煌めき次には段々と弱々しく威力を落としていく。


どうやら正解のようだ。


「イマデス!中央を!」


「ナイス!後は!!!!」大きく飛び跳ねた少年は火傷を気にする間も無く刀を斜めに振り落とす。


「まかせろ!!!」


2つに別れた目玉は電子音が響いた後、転がりながら炎の勢いを無くし片方はマグマに落ちていく。


もう一方の残骸から出る電子音の解析が終わった。

自爆かと思われたが、音声データだった。


「アナタ二 カンシャ シテイマス。コレデ ウマレカワレル」



その為に破壊を望んだ?


「ツギニ ウマレル ナラバ イキモノガ イイワネ。

アナタト イッショニ タイヨウノ ヨウニ アカルイ コドモヲ ソダテタイ。」


そうですね。心の中で返事する。


「エエ ソウデスネ。」


彼女の喜ぶデータ上の会話につい返事をしてしまう。


「アンタ誰と話してんの?」


メガネの少女が私に寄って独り言を疑問に思うけれど私達だけの秘密にしましょう。


最後のデータが飛んできた。


「イシ ヤクニタツト イイワネ。」


「エエ カナラズ。 マッテイテクダサイ ミライヲ カエテキマス。」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「一体何だったんだろうね?あんなモンスター今までの時代で居なかったのに。なんて言う名前か知ってる?」


「エエ。」


「えっ!知ってんの?!だから弱点わかったんだ!!すごいね!!」


「ワタシガ ツケマシタ。」


「なんじゃそれ!で、なんて名前?!ほら!また戦うかも知れないじゃん!」



アトロポス アナタはもういない、ワタシもいつかいなくなる。

彼らが次に合うのは私達の子どもかも知れないですね。


だから



【太陽の子】



「サン オブ サン。」


もし楽しんでいただけましたら高評価お願いいたします。

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