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じゅういち。

 取り敢えず孤児院の中に入り私は子ども達の相手をしたい、と院長に願い出る。その間に殿下と侍従が色々と見て回るはず。私はサクッと殿下から手を離して修道女に案内されて子ども達の元へ足を運んだ。殿下の手から自分の手を離して気付く。

 ーー嫌悪は無い。が、手が離れたことで私の手が戻って来た感覚がある。

 喩えて言うならば。

 火傷を負って氷水の中に長時間手を突っ込んでいるとして。自分の手なのにその感覚が麻痺していたのが、温められたことによって徐々に自分の手の感覚が戻って来たかのような。

 そんな自分の手なのに自分の手じゃなかったような感覚から自分の手の感覚に戻ったような。

 ……まぁつまりは、嫌悪はしてないけどそれだけってこと、なんだろうな。


「こ、ここが子ども達が集まっている場所、です」


 修道女の声にハッと我に返る。

 案内されたのは食堂のよう。

 子どもは八人。

 ……修道女が三人に子どもが八人、ね。大人の目が行き届くと言えばそうだけど。果たして本当にそう、なのかしらね。


「こんにちは。はじめまして。私はポリーナ。お名前を教えてくれる?」


 近くに座っていた十歳くらいの男の子に声をかける。食堂のテーブルより低くなるように膝を折って男の子よりも目線を低くして。

 男の子はビクリ、と肩を跳ね上げて全身を震わせてからリラ、と答えてくれた。

 女の子に付ける名前であることに気づいて、先入観で判断したことを恥じる。ハーフパンツ姿だから男の子、と決めつけていた自分は愚かだ。


「リラさんね。よろしくね」


 ゆっくりと声をかければ戸惑ったような表情を浮かべてから、うん、と頷く。リラに話しかけていた私を見て残りの七人も近づいてきた。皆の名前を聞いて何をして遊ぼうか尋ねてみる。すると。


「遊んで、いいの……?」


 そう尋ねてきたのは最年少四歳のルウト。ワンピース姿の男の子。本人が気に入っているのなら構わないので服装について、とやかく言うつもりはないけれど。……ふと、本当に気に入っているのか疑問に思った。

 修道女三人が痩せていることだけじゃなく、八人の子ども達も痩せぎす。そしてよくよく見れば、ワンピースもハーフパンツも上着も色褪せていて、ほつれていた部分に当て布をしてツギハギの服装。それも八人全員がサイズがきちんと合っていない。多少は合っているみたいだけれどよく見ればルウトのワンピースはウエストはブカブカだけど袖は手首まで届いてない。

 それに四歳のルウトが遊んでいいのか確認していることから、普段は遊ぶ時間ではないのか、或いは遊ぶことが許されていないか。

 サイズの合わない色褪せたツギハギの服は、裏を返せば子ども達に見合った服を準備出来ていないことの現れ。

 そして修道女を含めて皆が痩せっぽち。

 例えば、院長による虐待で食事抜きがよくある。

 例えば、食事をさせてあげたくても修道院も孤児院も困窮していて碌な物も食べさせてあげられないのかも、しれない。

 サイズも合わずツギハギだらけの服が困窮していることになる、と思う。

 ーーとはいえ、隠蔽などしているものならば。

 この修道院と孤児院は取り潰しが決定するはず。さて、殿下の方は首尾は如何かしらね。

 そんなことを考えながら子ども達とお絵描きを始めた。

お読みいただきまして、ありがとうございました。

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