じゅうなな。
「このドレスのことを気にかけて下さったのですから、そのお礼は述べますわ。こちら、皆さまもお気づきになられました通り、王妃殿下の直筆のメッセージ付きで贈られたドレスですの。メッセージにはぜひ、このドレスを着て行って頂戴。このドレスの価値が分かる者とお付き合いしなさいな、と書かれておりました。なんでも古き良き時代の落ち着いた色合いのドレスは、現在の王妃殿下のお気に入りらしくて、御用達のデザイナーにクラシカルなドレスをデザインするように伝えて作って下さった品ですのよ」
私がおっとりとした様子を見せながら種明かしをすれば、さすがにケロイ侯爵令嬢やアルデ公爵令嬢も顔色を変えた。当然他の三人も。
……まぁ王妃殿下の御用達であるデザイナーの手によるもの、と気づいた皆さまはこの矛盾にも気づかれているのかな。とは思うけれど。
さておき。
性格の悪い私はニコニコと笑いながら。
「このことは王妃殿下にご報告致しますわ」
もちろん、トドメを忘れずに刺しておいた。
「なっ……お、お待ちになって? まぁまぁよく見ましたら新進気鋭の王妃殿下がお気に入りのデザイナーのものではありませんの! さ、さすが王妃殿下ですわ! このようなドレスを作らせるとは私達には無い斬新な発想ですわ!」
アルデ公爵家……。このミサーラ嬢を家から出したのは間違いだったね……。多分本心というか、裏の意味はまるでないのだろうけど。
このようなドレスを作らせるとは私達には無い斬新な発想……つまり、金をかけてわざわざ古臭いドレスを作ろうと思った発想力は私には無いです、と貶しているようにも聞こえるよね。
もうちょっと言葉選びが出来るようになるまで表舞台には立たせなかった方がいいと思う。これは近いうちに再び“病気療養”として表舞台に立たせることを諦めるだろうな。
……何しろ王妃殿下を敵に回すような発言だし。
アルデ公爵令嬢・ミサーラ様が仮に侍女に対してこの一件を父親に報告しないよう、口止めしようとしても、侍女は報告するはず。
仮に口止めの願いを聞き入れて黙っておいたとしても、このお茶会の会場でのやらかし具合は、このお茶会に参加した令嬢達全員が親に報告するだろうことは見当がつく。
そうなると他家からアルデ公爵の耳に入る可能性があるから、賢い侍女ならば口止めを頼まれたとしても報告するだろうね。
それに。
……レイラに対するやらかしから、リカーデ公爵家から抗議されてついでに、このことについても抗議しそうだしなぁ。
レイラ、挨拶もまともに出来ないこと、結構怒っていたから嬉々として抗議しそうだわ……。
そしてケロイ侯爵令嬢は怒りなのか怯えなのか知らないけれど全身を震わせているだけ。これでよく王子妃を狙っていたよね。まぁアルデ公爵令嬢みたいな、あからさまな発言をして失敗……間違うどころか失態……取り返しのつかない事態にまで陥ってないだけ賢いのかな。
そう、思ったのも束の間。
「……んで、なんで、なんで治療魔法士とかいう怪しげなことをやってる令嬢らしさの欠片もない小娘如きに王妃殿下がドレスを作ると言うのよっ! あなた、そんな嘘をこんな場で吐いて、王妃殿下を貶めている自覚はあるの! 抑々あなたはセスター様との仲が不仲でしょう! そんな婚約者に王妃殿下がわざわざドレスなんか作るものですか!」
あらまぁ。怒りで身体が震えていたのかぁ。
うんまぁ私も大概令嬢らしさは無いけれど、あなたのこの取り乱し様程ではないと思うな。
「信じたくないのなら信じなくても構いませんし、王妃殿下の名を騙ったと言い触らしたいのならご自由にどうぞ? 本当に私が王妃殿下の名を騙った悪人ならば不敬で罪を問われるでしょうし。それと第一王子殿下との仲がどうこうという点に付きましては、ケロイ侯爵令嬢には関わり無きこと。それと、王妃殿下と私の仲はそれなりに良好とだけ伝えておきますね。また、この婚約につきましては、私自身も第一王子殿下自身もどうすることも出来ない、王命によるものですの。王命に逆らえるというのは、即ち私が陛下に叛逆の意思がある、と表明しているようなものですわ。若しくは陛下より私の方が身分が上と豪語しているようなもの。私、どちらでも有りませんので王命を粛々と受け入れておりますの。ケロイ侯爵令嬢は、そのことに意を唱えられるくらいの身分をお持ちですの? それとも叛逆の意思がおありですか」
ケロイ侯爵令嬢の怒りによる取り乱しに対して静かに冷静に取り乱すことなく相手をする私。
……さて、どちらが優位でしょう、と問われなくても答えは出ていますよね。さておき。
ケロイ侯爵令嬢は流石に王命に逆らえない、と思ったのかこれ以上の発言は控えることにしたみたいですね。黙りましたからね。
でもまぁ、ケロイ侯爵令嬢の最後の言葉には、さすがに焦りましたね。
ええ、そんな婚約者にわざわざ王妃殿下がドレスなんか作るものですか! という一言、です。コレ当たらずと言えども遠からずということで。
……実は私用のドレスではないんですよねぇ、コレ。
お読みいただきまして、ありがとうございました。




