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さん。

「もう、良いのか?」


 陛下に尋ねられて頷く。

 単に殿下の美醜感覚と目の良し悪しを確認したかっただけだから。


「何故、美しいか尋ねたのか聞いてもいいか」


 陛下の再びの質問に、そうか、私の質問の意図を説明していなかったな、と納得する。


「では、恐れながら。私は自分の欲目かもしれませんが、お母様似だと思っています」


「うむ、似ておるな」


 陛下が即答して下さったので母似は間違いないようで安心する。


「お父様もお母様も私はお母様に似ていると言ってくださいましたし、私もそう自負しています。そして私の欲目かもしれませんが、お母様は美しいと思っています」


「……なるほど。母に似た自分も美しい、と?」


「ご聡明な陛下にご理解頂きまして、ありがとうございます。身内贔屓でしょうがお母様に似た私は両親からも使用人達からも可愛い、将来は美しくなる、と言われております。私もそうなれたらいいな、と思いますし、このままお母様に似れば美しいのでしょう。お父様に似ても美しいと思いますので、どちらに似ても美しいのでは、と自負しております。ただどちらの特徴も受け継いだ顔ですと分かりませんが。どちらかに似るのなら将来が想像出来ますが、どちらにも似る顔はまた違うかもしれませんので」


 ふむ、と陛下は頷く。


「それで? 先程の質問の意図は?」


「もちろん、殿下の美醜感覚が私と違うのか知りたかったのでございます。私は陛下も殿下もお父様もお母様も美しいと思うのですが、殿下の感覚は違うかもしれない、と思いましたから。お母様に似ている、と言われて育った私がブサイクだと言うのであれば、殿下はお母様の顔を見たことがあるのなら、ブサイクだと思っていらっしゃるのかもしれない。ではお父様や陛下と王妃殿下のことも、もしや……? と考えたこと。人の美醜感覚はそれぞれでしょうからこのことについては特別何も。もう一つは、殿下の目がお悪く、患いでもあるのかと思いました。もしそうであるのなら、医者に診てもらう方が良いのか、と。でも殿下は質問をする私も陛下もお父様もきちんと目を合わせて見ていらっしゃいましたから、目の方も大丈夫だ、と安堵致しました。それを知りたかっただけにございます」


「なるほど。……そなた、ブサイクだと言われたことを怒っていないのか? 不敬だとは思わぬ故、思ったことを申してみよ」


 陛下の質問に即刻「怒っていません」 と答える。


「それは何故?」


「殿下は先程、私が殿下を初めてお顔を拝見した、と申し上げた時に初めて見た反応ではない、と仰せになられました」


「言っていたな」


「つまり、殿下は私が殿下を美しいと褒めなかったり顔を赤らめて見たりしなかったことに不機嫌なのか、と判断しました。ですが、私は陛下も殿下も美しいとは思うものの、綺麗な花を綺麗と思うのと同じくらいでしかなかったので、問われれば美しいとは答えたでしょうが、発言の許可も得ないで思ったことを口走る程に殿下を美しいとは思わなかったのです。でも殿下はそれを気に入らなかったのかもしれない。だから私を傷つける言葉を言ったのかもしれない、と思いましたら怒るまでいかなかったのでございます」


 お子ちゃま王子のプライドが傷つけられたことは申し訳なかったけど、その責任は取れない、さすがに。


「ふむ。だが、それはセスターのプライドの問題で、そなたを傷つける発言をしてもいいものではない。怒ってもいいはずだが?」


 うーん……。言っていいのかなぁ。

 チラリとお父様を見れば、言いたいことは言っていい、とこっそり耳打ち。

 じゃあ遠慮なく。


「陛下。感情とは自分の心を表すものです」


「うむ」


「怒る、笑う、泣く……と感情を出すことは、その相手に自分を理解して欲しい時や、本当にその心に身を任せた時に出るものでしょう。私は殿下に感情を見せたいと思う程の関係を築いておりません。つまり、殿下のことは、どうでもいいので感情的になる理由がどこにも無いのです」


 うん。

 まぁ私が普通の子なら、ブサイクと言われたことにショックを受けるなり、泣くか怒るかするかもしれないけど、赤ちゃんの頃から難しい言葉を理解して三歳で辞書を読むような、要するに変わった子なので、ブサイクと言われてもショックは受けなかったし、寧ろ殿下の目が悪いのか、美醜感覚が違うのか、と思ったくらいだし、怒りも悲しみも特には湧かなかった。

 とはいえ、喜ばしいとも全く思っていない。只管に無感情だったんだよねぇ……。

 強いて言うなら、ブサイクだから何? この婚約は政略結婚だから殿下の我儘で婚約は覆らないよ? という程度、としか。


「つまり、そなたはセスターに対して何も思っておらぬ、と」


「はい。何か思えるような関係性は全く築いていませんので。これがお父様とお母様なら、なんでそんなことを言うの? って怒ったし泣いたかもしれません。酷いよ、どうして? と尋ねましたが……」


「セスターには、そうする理由も無いし、そうする関係も無い、と。婚約者とはいえ初めて会った相手だからな。何かの感情が芽生えるような関係性を築いてないから感情も無い、と」


 陛下の納得した、という言葉に頭を下げた。

 そこにドアがノックされて待っていた文官の方が到着したことを知った。

お読み頂きまして、ありがとうございました。

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