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ご。

「こんな小さな女の子が? 嘘だろ?」


 試験官は、とある子爵家の嫡男が作った愛人との間に生まれたと自己紹介をして来た元平民の魔法士さん。物凄い詳しく話して来たのだが我が家ではないので覚えていない。

 ちなみにとある子爵家の嫡男とやらの話は、公爵家でお母様が噂話を聞いて来たことをお父様に話しているのが聞こえていたので、まぁそれで覚えていてこの人がその嫡男の息子かぁ……と理解出来ただけ。

 尚、その嫡男は結婚前に愛人を作って子も作ったから……と廃嫡されて繰り上がりで次男が後継に。その後その次男の方が子爵となっている。そしてこれ、赤ちゃんの頃に聞いた話だった。喋れるようになって何を聞いたのか確認のため、ということで色々話をしている時にこの件を知ったお母様は赤ちゃんの前でこんな話をするなんて……と落ち込んだのは余談。


 そんな試験官さんが驚いているのは、私が治療魔法の使い手として魔法士の試験に現れたことに驚いているのだ。


「はじめまして、試験官様」


 ポリーナ・レバームと名乗った瞬間、目を剥くくらい驚いた。


「まさかとは思うけど、第一王子殿下の婚約者の公爵令嬢とか言わないよね?」


「言います。合ってます。でも公爵であるお父様も陛下も了承してます」


 試験官さんは師匠を見る。数少ない魔法士なので師匠と知り合いらしい。師匠が強く頷くと「マジで?」 とポカンと口を開けた後に、頭を抱えた。


「いや、いくらレバーム公爵様と国王陛下が了承していてもケガでもした日には俺のクビが飛ぶじゃん。無理無理無理。なんでこんな子を推薦したんだよ! ジラン」


 ジランは師匠の名前。呼ばれた師匠はシレッとした顔で優秀だから、と一言。


「いや、優秀だからって」


「あのさ、公爵様も陛下も了承してるってポリーナが話しただろ。ケガしてもファスのクビが飛ぶなんて無いよ。それにファスも知っての通り、魔法士特に治療魔法が使える魔法士は少ないだろ。今は魔獣討伐が無いけど、また魔獣が増えたら治療魔法の使い手は必要だ。ポリーナは僕が認めた治療魔法の使い手だ」


 師匠に文句を言っていた試験官さんは師匠の説明に、うっ……と黙った。

 なんだろう、言っていることがマトモなのは試験官さんなんだけど、有無を言わさず納得させちゃうようなことを師匠が言ってる。試験官さんが可哀想な気がしてきた。

 でも魔法士になりたいから何も言わないけど。


「ジランの推薦だからって手加減や公爵令嬢だからって手心は加えないが」


 これは私を見て試験官さんが言う。私の覚悟を問うているのだろう、と理解した私は「元より承知しております」 と答えた。というか、手心なんて加えられたら魔法士になるのは忖度なのか、と疑ってしまいそうだ。


「では、先ずは宣誓をしてもらう」


 これは師匠から聞いていた。

 怪我をしても文句は言わないこと。貴族の身分を笠にきて試験に口出ししないことなどなど。私は全ての宣誓を復唱して最後にこの宣誓を違えた場合のことも口にする。

 大体は魔法士を目指すことは諦めますって言うんだよ、と師匠は言っていたけれど。


「宣誓を違えた場合、貴族令嬢の命を賭けます」


「「……は?」」


 私の誓約に試験官さんと師匠の二人がポカンとした。

 自分の命を賭けるのではなく“貴族令嬢”の命。

 少しの空白後、二人が叫んだ。


「「まてまてまてっ! そんなものを賭けるな!」」


 残念。

 もう宣誓してしまいました。

 この宣誓は儀式なだけで誓約を違えたら罰が降るとか、そういうことは無い。だからこそ推薦者と試験官がきちんと誓約を守るように証人の役もする。だからどこの誰が宣誓を違えたのか、というのも他の魔法士達に伝達することになっている。


「宣誓、終わりました」


 シレッと告げた私に師匠と試験官さんが同時に頭を抱えた。


「ポリーナっ! 魔法士になることを諦めるって言えばいいんだよって教えたでしょう!」


 師匠が何を言い出したんだ、この子は! とばかりに詰め寄ってくる。


「宣誓を破る気はないですが、そんなことを口にしたくなかったです!」


 ドヤってみました。師匠は撃沈。


「だからって公爵令嬢、貴族令嬢の命は髪だぞ⁉︎」


 すかさず試験官さんが詰め寄ってくる。

 そう、貴族令嬢の命とは髪のこと。この国や近隣諸国では貴族の令嬢や夫人は髪が長いことが美人の条件とも言われている。その長い髪が綺麗に丁寧に艶やかに手入れされているということは、それだけその家から大切にされている事でもあるし、それだけその家の裕福さも示すから。


「切っても伸びます。それに自慢じゃなくて客観的に見ても私は両親が美男美女なので髪が短くても美人だと思います。そして家は公爵家です。髪以外のアクセサリーやドレスなどで裕福かどうか判断出来ます!」


 もう一度ドヤってみると、試験官さんは「ああ、うん、まぁ確かに……」 と反射的に答えてから、ブッと吹き出した。


「いやぁ、公爵令嬢って言うから小さくても気取っているか傲慢かそんな子かと思ってたのに、まさかのドヤ顔っ。しかも返しが賢過ぎてっ笑う! 手心加えないけど、ポリーナちゃんが試験受かって魔法士になってくれたら楽しそうだ!」


 試験官さんが笑いながらそんなことを言う。而も自分の髪を賭けて来る辺り、本当に魔法士になりたいって気持ちがありそうだ、と付け加えるのでもちろんです、と胸を張ってみた。更に笑われた。

 そんなこんなで試験を開始したわけだけど。


「……いや、ホント、ポリーナちゃん、優秀だわ……。手心加えないとか言ったけど、手心? そんなん不要ってくらい優秀で、えっ、寧ろなんで公爵令嬢なの? って思ったし、なんで王子の婚約者なの? って思う。あー……、第一王子殿下の婚約者じゃなければ、魔法士として生きて行こうよって誘ったのに……」


 試験官さんが半泣きになりながらそんなことをブツブツ呟きつつ、あっという間に合格をもらった。


「さすが、史上最年少で上級魔法士の資格を取ったジランの弟子だなぁ。ジランの史上最年少記録を弟子が破ったかぁ」


 そう。私の師匠は、とても凄い魔法士。

 その師匠から大丈夫、と太鼓判を押されたのだから、そりゃ確かに私は合格するよねって話だけど、でも、それと実力が発揮出来るかどうかは別の話だったから。

 でも、合格したし、晴れて私は治療魔法士になった。後日、国王陛下の直筆の任命書がもらえるはず。任命式も極秘であるんだよね、確か。任命式は要らないけど任命書は是非欲しい。それが無いと正式に魔法士として見てもらえないからね。

 ……つまり私は実力で一代限りの爵位を八歳で貰ったということになる。

 この合格こそ、本当の誕生日プレゼントだよね。自分で自分に誕生日プレゼントだけど。


「ポリーナ。合格おめでとう。後で誕生日プレゼントを兼ねて合格祝いのプレゼントをあげるからね」


 師匠が喜ぶ私の頭を嬉しそうに撫でてくれた。

 目を細くして笑う師匠の頭撫で撫では、結構なご褒美だ。合格して良かった。

お読み頂きまして、ありがとうございました。

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