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にじゅうご。

 この質問に、二人は答えられませんでした。


「王妃殿下へお答えなさるといいわ。王妃殿下二人への課題に致しましてもよろしゅうございますか」


 王妃殿下が鷹揚に頷かれ、二人は青褪めた顔のまま、茶会が出来ないことだけは分かっているようにそのまま帰った。王妃殿下が満足そうに頷いて戻られるのを見送り、侍女たちに片付けを命じる。侍女たちと護衛たちが頭を下げてきたので、なんだったかしら……と考えて、茶番に対する謝罪だと気づいた。


「ああ、別に怒ってないわ。というか、王妃殿下に命じられたことなのに仕方ないでしょうに」


「ですが、妃殿下。あの妃殿下を謀ったわけでございますし」


 侍女の一人が代表して言うので、王妃殿下に命じられたからには命令系統としても仕方ないのでは、と思って不問にする、と伝えておく。


「そういえば捕らえた者は女騎士かなにか?」


 護衛に尋ねると頷かれたので、では牢に入れてないわね? と確認すればそれも頷かれる。あと入れ替わりをして怖がっているはずの侍女も実は何とも無いのよね? と尋ねれば、侍女の一人が頷いたので、それは良かったと安堵した。


「では二人にも労いの言葉を伝えておいてね。皆もお疲れ様でした。侍女の様子は見に行く必要が無さそうだから行かないわ。後のことはよろしくね」


 部屋に下がるわ、と続けエミルを従えて部屋へ戻る。途中からダンが合流して一部始終を見ていたことを報告された。


「お嬢様は、本当に冷静に対応されましたね」


「魔獣より怖くないもの」


 ダンの褒め言葉に肩を竦める。ダンは、ハッとした表情を浮かべて「左様にございましたね」と真顔で頷いた。三年前の魔獣の大討伐を思い出したのだろう。エミルも思い出したらしく、顔を青褪めさせた。……思い出させて悪いことをしちゃったわ。

 部屋に入って二人を下げて休もうか、と思っていたところへ、第一王子殿下からの手紙です、とエミルが持って来た。


「あれかしら。先程のお茶会についてかしらね」


 独り言を呟いてペーパーナイフで手紙の封を開けると、父上から先程聞いた。無事でなにより、と書かれていた。国王陛下はご存知だったけれど王子殿下たちはご存知なかったのかもしれないわね。


「それと今日のお渡りを止める……?」


 お渡り、つまり閨ごとを行わないということ。

 ちょっとそれは勘弁して欲しい。私は私で王命を果たさねばならないのだから。どれだけ第一王子殿下と触れ合う度に身体が自分のものではないように思わされても、私は私で果たすべき任がある。

 急ぎ、

 お気遣いは無用に願います。私は私で果たすべき任があるのですから。今宵お待ちしております。

 と走り書きしてエミルに託した。

 子が出来易い期間に行わなくては、私は果たすべき任を努力していないことになってしまう。

 それこそ貴族令嬢として育てられ、王子妃となるべく教育されてきた私を構成してきたものを失くすようなもの。そんなことは、私という人間の育ってきた環境や培われてきた価値観を否定するのとおなじこと。断じて受け入れられない。

 私の強い決意を受け入れたのか、走り書きに託したメッセージを見た第一王子殿下は、そういうことであるなら、予定通りに。と返信をもらいました。

お読みいただきまして、ありがとうございました。

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