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いち。

「こんなブサイクと婚約するなんて嫌です!」


 婚約者として初めての顔合わせ。

 尚、私は初めて王城を訪れた。

 迷わないようにまだ五歳だから、と父に抱き上げられて到着した一室には、クッキーに宝石みたいなフルーツの乗った一口サイズのケーキやタルトが置いてあって、甘いもの大好きな私は「食べていいの?」 と父に尋ねた。


「今はまだダメ。殿下との顔合わせが済んでお父様が食べていいよって言ったらね」


「はーい」


 お城に行くよ、と言われて国王陛下と王子殿下に会う、と言われた。赤ちゃんの頃から難しい言葉も理解出来ていた私に、父がはっきりと目的を教えてくれた。

 父の祖父は当時の国王陛下の弟で、兄が王位に継いた時に臣下として公爵位を賜り、家を興した。それが我が家の始まり。私の祖父が嫡男で後を継ぎ二代目。その息子である父が三代目の公爵。弟が四代目の予定だ。

 で。

 「はっきり言って婚約するから」 の一言。

 何故か。

 一つは血が薄まっただろうということ。

 一つはいくつかある王領のうち、国境に接した二つの領地で魔獣被害が出たこと。

 魔獣と言うのは、魔力を持つ獣のことを言う。

 昔は貴族も平民も関係なく魔力持ちが居た。今は平民にあまり魔力持ちは居ないけれど、貴族にはまだ魔力持ちがそれなりに居て、魔法を使える。魔法を使って仕事をする者達を魔法使い、と言う。

 その魔法を使うための魔力は、人間は魔法使い同士が結婚することで魔力が親から子に受け継がれる。親の魔力が全て受け継がれるのではないことは確か。子に譲っても親が魔法を使える……魔力持ち。

 つまり魔法使いであることは変わらないから。

 で。

 自然の中にも魔力があって、その魔力が大量に溜まっている所で生まれる獣を魔獣と言う。

 この魔力が溜まっている所……魔力溜まりで生まれた魔獣も魔法を使える。だから魔力を持たない者が魔獣を討伐することは出来ない。

 魔法使いは魔獣を討伐することが主な仕事だけど、戦闘に向かない魔法使いも居るのでそういう人は支援組と呼ばれて討伐のサポートをしている。

 さて、ここで問題。

 私が生まれる前から魔獣が出る確率が多くなって来たけれど、貴族が全員魔法使いになれるわけでもないので、魔法使いは少ない。平民の魔法使いは一人か二人くらい。

 そこで魔力持ちの貴族同士を結婚させて魔法使いを増やすことを王家は考えた。私と王子殿下の婚約はその政略結婚の第一陣ということ。

 この婚約はそういう意味で締結は確定。

 一応本人同士の顔合わせだけをしておいて、相性が良くも悪くも婚約する前提。

 王子殿下がどれほどの魔力をお持ちか知らないけれど、私の魔力は鑑定の結果、父と母よりも多いそう。

 これは父も自分の母より多いと言われていたようなので、魔力持ち同士の子が魔力を持って生まれて来ることの証明になる、と私の魔力鑑定をした魔法使いが言ったらしいが、私には甚だ疑問である。

 必ず魔力持ちが生まれるのなら平民に魔力持ちが居ないことの理由はなんだ? ということになるから。

 昔は平民も魔力持ちが居るのが当たり前だったし、今でも居ないわけではないという。では少なくなった理由……つまり魔力持ちが生まれない理由は? と私の鑑定をした魔法使いに尋ねたら明確な答えが出なかった。

 という事は、貴族にも魔力を持たない者は生まれる可能性はあるし、王族も魔力を持たずに生まれる可能性がある。迂闊な思い込みでそんなことを言っていたら魔力を持たないで生まれた者は排除される可能性も出てくる。

 あなたがもし魔力持ちでは無かったら排除されていたかもしれない。そう考えれば思い込みで発言することが怖いことを知る方がいい、と先日説教をしてしまったことを思い出しながらこの場に居る。

 という事で人生初の登城は婚約者との顔合わせという目的のためだったのだけど。

 どうやら殿下の目には、私はブサイクに見えるようだ。

 ふむ。

 隣の父が瞬時に怒りを抑えた笑みを浮かべている。貴族は感情を出してはならないのだが、丸わかりだ。ダメだと思うのだけど。

 溺愛とは言わずとも可愛がってもらっている自覚はある。その可愛い娘がブサイクと言われて怒るのは嬉しいが、それで足を引っ張られる事態に陥っては困る。……この場に居るのは国王陛下と王子殿下と父と私と使用人のみと言えども。


「お父様」


 クイッと服の裾を引っ張って気を引く。父は、ハッと冷静になったようでいつもの優しい笑みに変わった。うんうん、それでいい。


「どうしたかな、ポリーナ」


 私の名前はポリーナ・レバーム。レバーム公爵の長女でポリーナと言うのは、父の祖母……つまり当時の王弟妃の名前をもらったらしい。

 それはさておき。

 先ずは私を紹介して挨拶をさせてもらわなくては。

お読み頂きまして、ありがとうございました。

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