八月の舟
何度目かの水面を、いつもどおり、ゆっくり渡っていく。今日は、最近再会した古い知己と一緒に。
私はケーキの方が好きなんだけど。和菓子を手に彼女が尋ねる。いつもおはぎなの?
これはおはぎじゃないよ。いつも私のために、用意してくれるの。その気持ちが、いまもありがたい。
私の迎えがきたみたい。乗っていく?
彼女のお誘いに、かぶりをふる。
渡ったばかりだから、彼女も周りも気が急いているのかも知れない。
水は続いて、でも流れていく。穏やかになってきた気持ちのそばに向かうときは、ゆっくりの道行きでいい。
緑の馬に跨って先を行く彼女を照らす月が、水面に揺れる。
つきしらず、月を映して、うつしよへ、よる辺たずねる、甘い夜の舟。