お引っ越し
さてさて、ここからは第4章のはじまりです!
ではでは! どうぞ!!
俺は最近、ちょいと住み家を移そうかと考えている。その為に住んでいる小屋の中を整理中である。
俺は、呪いの紋章師ウル・べリントン。ジャワ渓谷の奥にある掘っ立て小屋にすんでいる。
もちろん、独り身である。
あ、独り身ではあるが、最近はずっと呪具である黒うさぎのぬいぐるみのキャンディと暮らしている。
俺は小屋の一室である、書庫の掃除をしていた。
山積みになっていた古びた本の群れを一通り整理して綺麗に積み上げてみた。
ふう。本の山が部屋のはしに寄った。それだけで、たいして片付いてない事に気が付く。むなしくなる。
「あああああ、片付けるってなに? どうやるんだっけ! こんなに本があると、引っ越しの時に運ぶのがたいへんすぎる。そこまで考えてなかったわ」
床をちょこまかと走り回っているキャンディが動きを止めてこちらを見上げる。
コイツはさっきから走り回って何をしていやがるんだ。掃除でもしているつもりなのか。
自分のからだにホコリをこすりつけるという新しい掃除方法なのか。
ホコリまみれのキャンディが聞いてきた。
「ね、ほんとに住む場所を変えるの?」
「だってよ、俺はひっそりと呪具の蒐集と呪いの魔術の研究をしてーんだよ。だってのに最近やけに仕事の依頼が増えてやがる。だからここからいなくなってやる」
「ぷぷぷ、まるで夜逃げじゃないの。訪問者がきたらどうするのよ」
「しるか! 誰もいない空っぽの小屋にたずねて来て、誰もいない、とかいって帰りやがれ!」
「そんなことしてお客さんを逃したら、お金が稼げないじゃない」
「食いっぱぐれない程度の金がありゃい-の。俺は忙しいのは嫌なの、めんどくさいのは嫌なの。キョヌー(巨乳)が好きなの」
「きも、最後のひとことは余計なんだけど」
「あ、俺なんか変な事言った?」
キャンディはぷいっと顔を背けて、何も言わずに、またバタバタと床を走り回りだした。
はぁ。それにしても。
一体、どこの誰が俺のうわさを流してるんだ。
昔は呪いを解く仕事の依頼なんてたまにしかなかった。それも直接訪問くらいしかなかったのに、最近は手紙でもくる始末だ。
しかも、俺のことを解呪師、なんて呼ぶやつもいる。妙なあだ名もついちまっているんだ。
俺は呪いを解くなんて面倒なことはめったにしてねーんだ。絶対呪いの事をよくわかってない奴が勝手にうわさを流してやがる。
俺は山積みの本を見上げて、おもった。
ああ、掃除は一旦切り上げて、昼飯でも食いに行こうと。