閑話:呪詞とは②★
魔術の考案とはすなわち呪詞の考案そのものである。
新しい魔術を生み出すという事は、新しい呪詞を生み出すのとほぼ同義といえる。
ウルが『呪具耐性』のスキルを発動させる際に唱える呪詞は
彼が試行錯誤を繰り返した結果見つけ出したものであり
数百ある古代文字の中から様々な言葉を組み立てなおした末に導き出した呪詞である。
つまり現時点では唯一無二の呪詞であるため、それを使っているのはウル一人という事になる。
これを他者に教え、知識を開放していくことで呪いの魔術の体系化が進んでいくが、自己犠牲の精神が必要となる行為であり、今後呪いの魔術が発展していくかどうかは数少ない呪いの紋章師たちの行動次第である。
その反面、絶対数の多い紋章師が扱う魔術は、すでにかなり体系化が進んでいる。
エインズ王国では、なぜか火の紋章を授かるものが多く火詞の数が特に多い。
その為、火の紋章師は様々な火詞を習う事で、次々に新たな魔術を習得できるため、早い段階で高位の火の魔術を扱えるようになる。
紋章師が扱う魔術の中でも、特に難度が高い魔術というものがある。
それが”結界の紋章師”の扱う”結界術”である。
結界術は魔術陣(または魔法陣)を何かの媒体に描く必要があるが、高等な結界になればなるほど結界の図式が難解になる為、習う途中で挫折する者が多発するとも言われている。
”結界の紋章師”のなかでも高位の結界術を扱えるに至った者は、必然的に飛び抜けた記憶力と描写力を持っていることになる為、彼らは紋章師達の中でも真のエリート軍団と呼ばれている。
カリカリと地面に結界を描く姿から、嫉妬と嘲笑を込めて”落書きの悪魔”と呼ぶ者もいる。
『天資の儀式』を行う紋章聖議堂に奉仕する紋章師には”結界の紋章師”が多いと言われている。