呪具置き場、ドクロ洞窟へと★
さて、あらかたの本はつめこんだ。
あとは今回の討伐で役に立ちそうな呪具をえらばないといけない。
俺はひとまず小屋を後にして、呪具の保管倉庫として使っている谷奥にある洞窟に向かった。
俺の住んでいる今にも崩れそうなおんぼろ小屋は”ジャワ渓谷”と呼ばれる大きな谷の手前、木々茂る山の中腹にある。
小屋の裏手から霞む山頂へと続く道。
苔むしたゆるい傾斜を山肌に沿ってすすんでいくと、急に風が冷たくなる瞬間がわかる。
陽は照っているのに身を包む空気はしんしんと冷たい。
足元の可憐な花たちは逃げるように姿を隠し、褪せた大地に岩肌が見え始める。
息を切らしながら刺々しい岩場をさらに進む。
すると、突如目の前に現れるのはまるで空から落ちてきたような巨岩。
ちょうどその足元に裂けめがある。
一見すると、なんとか人が一人通れるくらいの小さな穴が下に伸びている。
「ふぅ……着いた」
手の甲で、額をなぞるように汗を拭う。
俺はここを呪具の保管庫にしている。
この洞窟は入り口は身をかがめないと入れないが、細い岩の階段を少し降りていくと平たい地に降りる。そこには驚くほど広い空間が広がっている。中はひんやりと肌寒い。
「……ここは寒いくらいだな」
乾き切らない体中の汗が途端に冷えて体温を奪っていく。
見上げると岩に囲まれた天井のあちこちの隙間から微かな光が降りてくる。
その様はまるで星空。
大きな岩石がいくつか重なって奇跡的にできた自然が織りなす美しい空洞。
俺は目印としてこの洞窟の前に蝙蝠の髑髏を置いている。
通称『ドクロ洞窟』だ。ま、この綺麗な空洞をそんなふうに呼んでいるのは俺だけだろうけど。
中に入り込み灯をともす準備をしていると胸ポケットからキャンディの声がした。
「ひゃぁ……うす気味悪い。何なのよここは」
「起きてたのか。そういえばお前をここに連れてくるのは初めてだっけ。ここは俺の呪具コレクションを保管している洞窟だ。今回の仕事に使えそうな呪具を調達しに来たんだよ」
俺は背中の荷袋を地に降ろす。
中をまさぐり、ほぐした麻の塊と瓶に入った炭と火打石を取り出す。
まず、麻の塊を入口近くの腰高の燭台にしく。
そこに瓶を逆さに炭をまぶす。
そのうえで火打ち石を両手に持ち、まぶした炭の上でガチガチとぶつけると、パッと明るく火種が生まれた。
燭台の足元に常備している乾いた木の枝を素早く投げ込む。
焦げ臭いにおいとともに、生まれたばかりの炎が淡く周囲を照らしはじめた。
俺は周囲を見渡す。
薄赤い火に照らされた呪具たちが、おぼろげにゆらゆらと浮かびあがる。
俺の愛しの呪具ちゃん達。
いつ見ても禍々しくて、凛としたお姿。
「……さて、今回の相棒はどいつにするか」